それによると、
鹿児島を訪れていた梯さんは最終日、空港行きのバスに乗るまで2時間くらい余裕があったのでタクシーで城山へ向かった。10年ほど前に、山の上の老舗ホテル(城山観光ホテル)の庭に面したカフェでお茶を飲み、桜島の眺めを楽しんだのを思い出したのだという。
暖かく穏やかな晴天。見事な眺めを満喫しながら地ビールを味わった後、帰りは鹿児島中央駅までホテルの送迎バスを利用した。広大な風景、山の緑、街の色づきかけたイチョウ並木に接して、改めて鹿児島の魅力を発見した気持ちになった次の瞬間、梯さんは、バスの窓ガラスが曇り一つなく磨かれていることに気づいた。「ホテルの送迎バスには珍しいことで、街があんなにも輝いて見えたのは、この窓のおかげもあったのだ。駅までのわずか数十分だが、手を抜かないホテルの姿勢が、旅の終わりの時間を幸福なものにしてくれた」と、梯さんは結んでいた。
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後日、このことを同ホテルの知人に伝えると、「その記事は既に社内ネットで従業員に配信されました。うれしいことです」と返信が来た。良かった、と思った。
そして先日、茨城に住む私の兄から一通の封書が届いた。「海外出張から帰り、たまった新聞を斜め読みしていたら目に留まった」と、1枚の新聞切り抜きが同封されていた。姪っ子が持ってきてくれたものと全く同じものだった。
鹿児島に縁のある者がそれぞれに、「鹿児島」に目が留まったのだな、と思うと、何だかうれしくなった。
ともあれ、たかが窓ガラス1枚、されど窓ガラス1枚。私たちは心しなくては、とも考えさせられた。