【岡潔の思想】300「1969年の質疑応答」
【無様なおでき】
(岡) まあ、太平洋岸をずっと見ると、まるで白蟻の巣だなと思う。どう見たって無様です。ああいう自然を、日本の自然は実に美しいと僕はいってるが、ああいうのどう見てるか。
それはきれいな顔に今「おでき」ができてるようなものだと思ってる。そのうち取れると思うんです。あれはどーう見たって無様です。だけどやがて取れる。
(岡) しばらく経って使えなくなったら、そんなもん1億が衣食住できりゃいいんでしょう。それ以上の物資なんか、あったら邪魔になるでしょう。幸福というのは心の幸福なんです。
物資が多かったら幸福ではあり得ないっちゅうのが普通です。そうすると使えなくなるでしょう。そうするとしばらく経つと廃虚のさびがついてくる。この辺から美といってます。「おでき」が治りかけてくる。ああいうの「おでき」という。大阪も「おでき」ですよね。
えーと、いわなかったかしら、いったかしら。四季のあるのは揚子江以東です。だから国生み、これは天上で成されたんだけど、それを基にしている地上の島々は大体日本列島です。まだ、この辺の自然だけがちゃんと日本民族なんです。
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横山賢二さんの解説が読めます。
🔶岡潔講演録(17):【21】 学校とは誠心誠意 (okakiyoshi-ken.jp)
※典比古
岡さんが、日本列島の太平洋岸を俯瞰して見ると、現代の都市は「白蟻の巣」「おでき」のように見えていたとは!このように見立てた人を知りません。そこでふと『人間の建設』の言動を思い浮かべてしまいました。
岡 「(前略)人類がこのまま滅びないですんだら、ずいぶん弊害が出ましたが、自然科学によって観察し推理するということは、少し知りましたね。
それを人の心に使って、そこから始めるべきで、自然に対してももっと建設のほうに目を向けるべきだと思います。幸い滅びずにすんだらのことですが、滅びたら、また二十億年繰り返してからそれをやればよいでしょう。現在の人類進化の状態では、ここで滅びずに、この線を越えよと注文するのは無理ではないかとおもいますが。(略)
ともかく人類時代というものが始まれば、そのときは腰をすえて、人間とはなにか、自分とはなにか、人の心の一番根柢はこれである、だからというところから考え直していくことです。そしてそれはおもしろいことだろうなと思います。」と。
注 典)自然科学のやってきたことは、一言でいうと「破壊」です。ただ日常生活においては電力や水、その他数多くの恩恵をうけながら成り立っている現実があります。
しかし、この生活を成り立たせているエネルギーは無尽蔵ではなく、もう地球の人口も飽和状態であるようにも思えます。次世代エネルギーである「常温核融合」の研究がいそがれていますが、はたして「脱原子力」という時代がくるのでしょうか・・・
横山さんは解説の最後で「因に、日本の自然であるが、これは日本民族がこの地球上に渡ってきて、ゆくゆくはこの日本列島に居を定めることを日本の神々が既に見越して、60万年前からこの日本の繊細優美な自然を準備しはじめたのだと晩年の岡はいっている。」と。
注 典)今日で「岡潔の思想」が通算300回になりました。こんなに続くとは想定外でしたが、これからも続けてゆく所存です。
オリンピック 10000m 決勝場面 5時30分