【岡潔の思想】122岡潔先生と語る (2)西洋文明の限界
【はじめに】(其の3)
心は時間も空間も無いから、勿論五感ではわからない。心というものの存在を西洋人は知らないんですね。認めようとしないんじゃない、知らないんです。
ところで、人が一個の人であるのは、知、情、意がバラバラになってしまわないで一個の統一を保ってるのは、心の働きです。また、本当にわかるというのも心の働きです。
総て、心理学や大脳生理学が対象にしている自我中心の心がいろいろな働きを持つのは、その奥にもっと深い心があって、それが働いているからいろんな知情意という働きが出てくるので、浅い心だけではそういう働きが無いんですね。
ところが、日本は終戦後、特にアメリカの真似をした為に、深い心というもののあることを全く忘れてしまってる。それで非常に、みる人がみれば、憂うべき日本の現状が出てきてる。特に教育の面においてそれがはなはだしい。
心がよく働いていない。大学生なんかに、心がよく働いていないということは、作文を書かせてみれば直ぐにわかる。総て人の中心は心ですが、教育もまたこの心がよく働くように育てなければいけない。が、アメリカ人はそれを知らんから、アメリカの真似をした教育はそれをやっていない。その為いま見るような大学生が出来てるんです。
浅い心を第一の心、深い心を第二の心と云うことにしますと、一切のものは –– この、近頃きれいな川は少ないですが、それでも山奥へ行けば小川はきれいにせせらいでるでしょう。このきれいな小川のせせらぎに石が漬かっていると、それに陽が当っていると、そうします。そうすると、水の中の石は非常にきれいに見える。
ところが取り出して乾かしてみると、極くつまらない石です。人生のこと一切は、この小川のせせらぎに漬かってる石のようなもの。その石が第一の心の内容、その小川のせせらぎが第二の心の働き。そんなふうなんです。そういうものだということを今の日本人は全く知らない。
大体そんなふうです。
(司会)それでは先生にお話しして頂きまして雰囲気の出来ましたところで、これから質問形式でいろいろお話しして頂きたいと思います。ただ今の先生のお話について、あるいは今日ここへおいでになるに当たって用意してこられたご質問等、どんなことでもお聞き頂きたいと思います。どなたからでも質問して頂きたいと思います。
※典比古
「深い心というもののあることを全く忘れてしまってる。」と。
岡さんは暗に、忘れているだけですから、あとは思い出すだけですとシンプルにおっしゃているようです。
また「人生のこと一切は、この小川のせせらぎに漬かってる石のようなもの。」という実に詩的な表現で喩ております。やはり岡さんの本質は「詩人」なのです。
今朝この言葉を読んで、ふと周囲を見回すと、いつも以上に、まるで風景が「小川のせせらぎに漬かってる石のように」、キラキラキラキラ輝いているかのように思えてきたのでした。
次回は一回小休止して【ローカル鉄道を応援する旅】のお知らせ記事です。
その次に【岡潔の思想】123岡潔先生と語る (2)西洋文明の限界「無差別智(其の1」を記事にいたします。
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