そもそも日本は男性優位社会ではありません。元々「男女共同参画社会」だったし、今もそうです。しかし、欧米というかユーラシア大陸の国々・民族はほぼ男性優位社会です。その違いはどこにあるのか、といえば「日本が異民族戦争を経験していない」ことに由来します。だから日本は大陸的(つまりほとんどの国がやっている)男性優位社会ではないのです。
ではそもそも「男性優位社会」とはなんでしょうか。
それは「男性がすべてを決める社会」であることと「女性の社会進出を制限すること」の二つがあることです。日本は少なくとも「女性の社会制限を法的に行った事はありません」ので、大陸的な「男性優位社会」とは異なるのです。
大陸の国では、古代から民族間戦争が非常に激しく行われていました。トロイの木馬で有名なトロイ戦争など今から何千年も前の大陸ではかなり大規模な民族紛争が起きていたのです。(トロイの木馬は神話ですが、シュリーマンの発掘により、当時大規模戦争があったことは確認されています)
このとき、負けた側の民族は皆殺しになることもあり、よくて奴隷商人が連れて行ってしまうので、民族社会は崩壊します。これを避けるために男たちは軍事訓練を受け、民族を維持することに注力することになったわけです。
ということは、この当時の意識でいえば「男が戦うからこそ(そして死ぬからこそ)この民族の社会は維持されている」ということになるわけで、それ以前の牧歌的な男女の役割分担社会は徐々に否定され「男が偉くそして死ぬ、だから女は男に守られて生活しているので、男の指示に従え」と言うように変化していったのです。
これがローマ・ギリシャ時代に一定の形が出来上がった「父権社会:patriarchy」の根本的な考え方であり、キリスト教やイスラム教はその後にできたために、それらの考え方を取り入れたにすぎないのです。(イエス・キリストはユダヤ教に比べたらフェミニストである、とされていますが、元々当時のユダヤ教自体がユダヤ人だけの宗教であり、普遍的ではありませんでした。当時の殆どの民族は多神教であり、女神もいて、牧歌的な時代男女の権利はそれほど離れていなかったのです)
19世紀に起きた女性解放運動はこの「父権制」からの脱出を目指したものです。父権制が女性を制限していたのは明らかで、それはナポレオン法典を見れば具体的にどのようなものだったかすぐに分かります。ナポレオン法典はヨーロッパで最初の近代的法体系で啓蒙思想的平等が基本になっていると言われていますが、それでもなお女性差別があったのです。
この中で女性解放運動が重視したのは
- (女性の)契約締結及び財産保持の禁止
- (女性の)参政権の不保持
- 夫の許可なく労働することの禁止
- 自分の賃金を(妻が)保持することは禁止