
2006-04-16

大山一周のツーリングに出かける。
昨夕の天気予報でいったんは雨のため中止としていたツーリングを急きょ決行することに。
大山方面の予報を見ると、風が強そうである。西の風が10m近い表示。しかしこれは追い風の風向き、南に回り込めば山にさえぎられ風も弱まる。強い風に雲が払われ展望はよくなる。雪崩の心配をするほどにはなく雪も融けていよう。明け方まで降り続く雨で観光客の車も少ない。
私の頭に大山を走っているイメージがくるくると回転する。雨音を聞きながらたむちゃんのホームと携帯へ決行のメールを打ち込む。都合によっては私一人出かけるつもり。
そして結果的に私の予想は見事に的中するのである。
6時45分家を出る。7時40分東城へ。たむちゃんと落ち合う。しばらく待つうちに女の子も単車でやって来る。
トラックに彼女の単車を積み込み出発。9時45分大山御机に到着。結構寒い。準備を済ませ10時スタート。
いきなりの上りで体が温まるまでは足がつらい、息が上がる。奥大山スキー場の駐車場で一回目の休憩。トイレを済ませ鍵掛峠を目指す。
まわりにはまだ雪がしっかりと残っている。
ブナや白樺が芽吹く寸前の、木々や大地が放つ自然の大きなエネルギーを感じる。春を迎え爆発的に山々がよみがえるのである。この時季が私は大好きなのだ。
10時40分鍵掛峠。大山南壁は雲に覆われ残念ながら尾根までは見えない。今朝方まで雨が降っていたのだから仕方がない。今日は見えないだろう。雨に遭わないだけでも良しとしなければ。
下りかけをしてすぐに上る。少し下りをなめると上りがいかにも辛い。文殊堂はまだ雪に埋もれたまま。三の沢を過ぎ二の沢へ、三回目の休憩。
二の沢は昔と景色がだいぶ変わった。砂止めの堤防が幾重にも並びスキーへよく来ていたころの面影はない。たっぷりと残った雪の感触を少しもらい、枡水へ向けて下る。
今日最初の長い下りである。車が少ないのを幸いにダウンヒルを楽しむ。
自転車のスピード感は同じ二輪車である単車とは大違い。タイヤの細さがスピード感に繋がる。
ブレーキングとイン側の膝、アウトペダルのコントロールでコーナーに突っ込んでいく。コーナーの出口でペダルを踏み込み加速する。
体重移動も切れ込んでいくスキーでの高速ターンにイメージが似て、連続するヘアピンカーブが最高に楽しい。
枡水高原の桜はまだ蕾を閉じたまま。此処の桜も楽しみにしていたのだがもう少し、来週には開くであろう。
大山寺まで行くことにする。11時30分、少し早いが昼ごはんに。大山そばの定食を注文する。しっかりと腹に詰め込んでカロリー・ガソリンを満タンにしておく。
食事を済ましたころ大山が見えているとたむちゃん。
外に出てみると、雪をしっかりと残した元谷をすり鉢状に包み込み、大山北壁がそそり立つ。弥山から三鈷峰までの大パノラマをしばし堪能する。
大山は初めてきたという彼女には最高のプレゼントとなったろう。

大山寺参道の石畳を少し下りると弓ヶ浜が正面に望める。
大山スキー場はシーズン中に来たのがいつだったか忘れてしまった。それほどスキーとも縁遠くなってしまっている。中の原は私のホームゲレンデであったのだが。
国際コースの残雪で春スキーをしている人もいた。私もよくやっていたスキースタイルである。
此処から二度目のダウンヒル。風が強く、帽子を飛ばされそうになりながら長い下りを楽しむ。
下りを楽しんだ後は再び上りである。一息坂峠で少し休憩。
展望台からは日本海が霞んで見える。強風で海は時化ているのだろう、沖のほうまで白波が見える。
船上山へと上りは続く。その昔、後醍醐天皇が都を追われて此処に立てこもった古戦場。崖の上に帽子をかぶせたような形の船上山。古の武士たちと同じ場所に立っているのが不思議である。
雪解け水が大量に流れ、千丈の滝も雄滝も激しく水を落とす。
このあたりまで下りてくると桜が咲いている。上のほうはまだ咲き始めで、標高差によっての開花ラインがよく見える。
大体標高300m辺りまでが満開で、500mが咲き始め700m以上は蕾というところか。桜の花も登山を楽しんでいるかのようである。
この辺りからは道をうろ覚えであまり自信はないのだが、引き返すわけにもいかないので行くしかない。
救いは上りきったと思う辺りで待つたび、上ってくる彼女の笑顔が素敵に健気でかわいいこと。そしてたむちゃんの余裕のパワーである。
道はまだあまり車も通っていないためか、雪解けしたそのままの状態である。路上には木の枝や落ち葉、小石が散らばる。通行止めの看板が気になるが、自転車を担ぐ気でいれば何とかなるだろう。
道端にはスミレに似た小さな花や、ふきのとうが上り坂の苦しさを癒してくれる。ヤマガラやモズ、名も知らぬ野鳥が飛び交いかわいい声で囀る。風の音と木の葉が転がる音、鳥の声以外は何も聞こえない。
峠をいくつも越えアップダウンを繰り返し、最後の長い長い上りが始まる。
標高は今日のコースで一番低いところまで下りている。見上げれば烏ヶ山が遥か遠くに見える。
自販機で水分補給をしてさあ出発。後で思うが、この辺りでの私の持っていた上り坂のきつさの認識はだいぶ甘かったのである。
車で走れば快適なコース、しかし自転車ではかなりきつい勾配。地蔵峠まではさほどでもなかったが、そこからの延々と続く上りのきついこと。いけども行けども坂道は続く。
九十九折れのほうがよほどいい。直線状に上る道は路面勾配がきついのである。もくもくとペダルを漕ぐ。
後ろとは相当離れたが止まるわけにいかない。止まったら再スタートが出来ない勾配のきつさである。



たむちゃんは前になり後につき彼女をフォローする。余裕の無い私はマイペースを崩すと先へ進めない。
気温のほうもかなり下がり足や手はかじかんで、足先は痛いほどになる。寒いはずである、霰がフロントバッグにポツリと落ちる。
めまいがし、足は吊る一歩前ぎりぎりである。だいぶ上がってきたと思って前を見るとまだかなり上の方に道が見える。
とにかくひたすらペダルを回し続けなければ。
やっとの思いで新小屋峠を越え下りに入る。手がかじかんでブレーキに力が入らない。ついに鏡ヶ成にたどり着く。
後ろの二人が気になり、私だけ先に下りて車で拾わなくてはなるまいか、携帯をかけてみようか、しかし上り坂で電話には出れないだろうし。気がもめるが待たなくては仕方がない。
寒さに震えながら待っていると二人の姿が見える。やれやれよくもまああの坂を上って来たと感激を持って迎える。
峠まで止まらずに上がってきたという彼女は休憩もしたかろう。しかし時間も遅くなり、車に積み込むのが暗くなりそうなのでいそいそと帰路に。
もう上り坂はないだろう。あったらごめん。最後の下りは寒さに震えながら、それでも思いっきりハイスピードのヘアピンカーブを楽しんで、一気に車まで走り下りる。やった!!
お天気の加減で当初の予定より2時間ばかり遅いスタートとなった。そのためゆっくりと周る時間が取れず少しきつかった。しかしそのことが返ってメリハリとなりいいツーリングとなったような気がする。
私にとって長年親しんできた大山。その大きさを今日ほど感じたのはうれしい驚きであった。雪解けの水はとうとうと湧き溢れ、滝となって落ち早瀬となり海へと流れ込む。
自転車の旅は精神的にも肉体的にも達成感があり感動も大きい。
そして自然や人との境もなく。風を感じ野鳥の囀りに耳を澄ませ、足元の小さな花を愛で景色を楽しむ。通りすがりの人との何気ない会話を楽しみ、土地の暮らしを間近で感じる。
素晴らしい旅なのである。



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