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魂の詩人 奈津光平の詩

奈津光平(なつ・こうへい)の詩の世界にお誘いします。
こころの琴線に触れる詩に巡り会えればうれしく思います。

楽しいひととき

2013-09-08 11:08:14 | 詩集「魂の揺籃」より
  
   楽しいひととき

喪失の予感 崩落の兆候
不安の窮(きわ)み 死滅の悲嘆

聞こえる 救済の絶叫が
感じる 魂の希求が

無から始まり無で終わる
そのことに 何の意味があろうか

生き続ける記憶は幻の仮定
生まれ変わりは心の安堵

意識の覚醒 誘導する死の恐怖
意識の消滅 誘発する平安の境地

大切なものは何か
何のために生まれてきたのか
これから何処に行くのか

真実を語る 涙で溢れる愛
心を抉(えぐ)る あの人の言葉
癒し続ける 愛の琴線

わたしを忘れないでね

風化する言葉の欠片(かけら)
決壊する愛の慟哭
ただひたすら茫然自失

真理はひとつ
流れる時間
枯渇する生命


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摩滅する克己

2013-09-01 11:04:46 | 詩集「魂の揺籃」より

     摩滅する克己

気が変わっても自責の念に駆られない
わずかに苦笑するだけ
移ろう心の過去形は
思い出のなかの無関心

心に染みる童歌(わらべうた)
滲(にじ)みだす幼少の記憶
齢(よわい)を重ねてどうなった
ただ 死滅するのみ

胸を締め付けるか細いすすり泣き
嫌でも到来する無限の時間
不可避の転生
今は ただ無言

肥大する幻想は 情緒の欠片(かけら)
怠慢の責任転嫁は ガラス細工の自尊心
ただの
始末の悪い思い込み

冷たく反応する空虚な心
募る飢餓感に膨張する焦燥
希求する自我世界の形成

だけども
残余財産は 克己(こっき)

ただ ひたすら
摩滅する克己


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最後の御褒美

2013-08-18 10:54:41 | 詩集「魂の揺籃」より

   最後の御褒美

最後の御褒美はエンドルフィン
死ぬときは快楽と死んでしまえば分からない

脳消滅後の覚知器官は不存在
焼却後の白灰は有機物の宴
だけど それは思い過ごし

想像を絶する想像は
この世を超えた次元で
澄まし顔で跋扈(ばっこ)する

恍惚の極致は死の深淵(しんえん)
だけど それは気休めで

絶望から希望への転生は
幻覚と錯覚の海に棲息する
悟りという名の鵺(ぬえ)の夢

人の心裡に巣くう狂信という信念は
肉体消滅の恐怖を閉鎖する
だけど それは失敗で

恐怖なくとも肉体は滅び
唯一無二の楽しみは
苦痛受信の脳の崩壊が
意識消滅の死の援助

その時は手遅れで
それだから嬉しい
それだから生きてゆける

最後の御褒美は生きた証
生きることは 心底 楽しい




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暗黙の了解

2013-08-11 11:51:43 | 詩集「魂の揺籃」より

      暗黙の了解

銀色の魂 朱色に染まり 燃え尽きる
茜色の涙 夕陽に映え 滴(したた)り消える

紫煙は揺(たゆた)い乱舞する白灰
執着する芳香の浮世

流れ去る無常の時間
薄れゆく意識
絶音の静寂
平らけく空虚

眠れ! 穏やかに眠れ!

優しい眼でほほ笑もう
何もかも知っている

生命は暗黙の了解
魂の救済は夢現(ゆめうつつ)

無垢の涙が煌(きらめ)き
妖光の輝く瞬間
甦える不滅の魂

嗚呼 すべては夢幻(ゆめまぼろし)のなか


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好きな人の気配

2009-12-06 20:24:21 | 詩集「魂の揺籃」より
    好きな人の気配

生まれてきた意味は 千差万別
生まれた意味は 無自覚
生まれてきた理由は 回答不能
したい事と出来る事は 不完全不一致

子供ができて良かった
子供を成人に育て
使命を終え消滅する
何だかんだ難解なご託を並べても
人間の役割なんてそんなもんだ

人のために生きる必要なし
与えられた人生を楽しめ
それでいいではないか
だけど
家族のためには少しくらい役に立て

家族の気配に救われる
孤独を愛していても孤独にはなれない
好きな人の気配を感じながら
好きなことに没頭するのが 大好きだ


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象徴としての中途半端

2008-06-29 14:29:32 | 詩集「魂の揺籃」より

   象徴としての中途半端


何をもって 完璧な出来だと 満足しますか?

いつも出来上がるのは 不出来な未完成品
絶えず良いものを求めるので
納得のいく結果は 皆無
その繰り返しと 途中で生まれる挫折感が重なり
人生そのものが中途半端

こんなに未練を残して死ねようか!

ところで
魂の叫びは あなたの元に届きましたか?

不知でしたら 連絡票をポストにいれてありますので
都合のよい日を電話して下さい
なお 時間が経ちますと
魂の叫び声が次第に消えていきますので
場合によったら「叫び」は聴こえず
「魂」だけが残ることもあります

念のために尋ねますが 人生のなかで
中途半端の占有率はどれくらいですか?

100%は自己矛盾と思った瞬間 奈落の底
人生は中途半端そのもの

だから
人が生まれて死ぬまでの間は
目的意識をもった人間の営みだとしても

一生という名称で括(くく)られる人生は
完結途中の終止符がはためく
中途半端そのもの

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吐息の拡散

2008-06-29 14:25:27 | 詩集「魂の揺籃」より

  吐息の拡散


やつれ果てた自尊心でも
自己存在のよりどころとして
虚勢はる憶病者の性(さが)よ
そっと 吐息をはく

心は息も絶え絶えで
やみくもに見栄をはっても
心の動悸は鎮まらない

卑怯者と罵られても
逃げ出すことは恥でない

無理をして
自己の意思決定の埒外で
生命消滅の悲惨を
感受する 不条理よ

しゃにむに 逃げ出し
ひたすら  逃げ続け
ついに   逃げおおせたなら

満面に笑みを浮かべ
そっと 吐息をはこう


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