映画 宇宙戦争
(2005年 アメリカ スティーブンスピルバーグ監督)
を見ました。
宇宙人が地球を欲してせめて来ました。
虐殺の限りを尽くしましたが細菌で死にました。
……という、それだけのお話です。
どういうお話に入るかと考えながら見ていたのですが、
どうやら『虐殺モノ』としか言いようがない気がします。
話の筋を大まかに見ていくと、
・宇宙人の謎機械が街に現れる
・街の人を大量虐殺
・居合わせた主役と、不仲のこどもたち逃げはじめる
・別邸に到着。目的地を妻の実家に定める。
・逃げる途中で人だまりに混じって人同士争う
・逃げる最中また虐殺祭り
・一軒の家に逃げ込む
・宇宙人本体が入ってくる
・居合わせた男と不仲で殺す
・娘が発狂して逃げ出す
・助けに行って宇宙船に捕まる
・密接戦闘になったので手榴弾で宇宙船破壊
・夜が明けると宇宙船が勝手にパワーダウン
・軍隊の生き残りが宇宙船を各個撃破。
・主役たち別れた妻の元に到着。
こんな感じです。
宇宙人と宇宙船の扱いを見ていくと、
一軒家に逃げ込むまでは、
シールド完備の巨大ロボットとして、
手が付けられない気の遠くなる存在として描かれています。
一軒家に逃げ込むと、巨大ロボットの触手が中に入ってきて、
それを息を潜めてかわすという身近な存在になります。
いわば、映画『アナコンダ』の巨大蛇です。
それをかわすと、今度は人型宇宙人が
のこのこやってきます。
しかも丸裸で水を飲んだり自転車をいたずらしたり、
まるで映画『グレムリン』の不良化グレムリンです。
それをかわしたあとは、
また来ていた宇宙船のアナコンダ触手に娘が飛び出し、
探しに行く主役の前に宇宙船が現れます。
娘がさらわれたのでどうにかしようと
拾った手榴弾を投げて気を引く様は、
もはや宇宙船相手ではありません。
たとえば映画『キングコング(新)』で出てくる、
ただの巨大生物相手のようです。
そして自分も宇宙船にさらわれたあとは
一緒にさわられていた人たちと混ざり、
食べられそうになったので手にした手榴弾を
口らしいところにつっこむと、
宇宙船が破壊できました。
ここらへんは、映画『インデペンデンス・デイ』で
酔っ払いが底面の弱点で爆発し、
反撃のチャンスを与えたのと似た感じです。
もはや宇宙船は手の届くもの、
個人の手で破壊できるものという位置まで下がりました。
その後は、まさか、
わざと手榴弾を持たせた兵士をおとりに
世界で各個撃破が行われはしないだろうとは
思っていたのですが、それよりひどかったです。
なぜか宇宙船が勝手にしんなりして
シールドも解除されます。
その間にふつうに軍隊が攻撃して倒してしまいます。
最初は大げさに登場した舞台装置が
どんどんと安っぽくなっていくのは興ざめでした。
たとえば宗教映画で、人民を導く巨大な光だった神が、
人の目の前に降りてきたあとは人と交わり、
最後は観客に語りかけてくるというようなばかばかしさです。
人間関係で話を見ると、
主役と妻が離婚していて、こどもは妻側に行く予定です。
今は妻側の行事かなにかで、しかたなく主役の家に来ました。
妻が出かけてこどもはぐだぐだとくだらない文句をいい続けます。
そのとき宇宙人襲来。
逃げるにもいちいちこどものぐずりを聞かされ続けます。
そのあと車を集団に奪われたあとは、
息子が宇宙人と戦うと言い、主役と問答を繰り返します。
息子をあきらめて娘と一軒家に逃げ込むと、
今度はそこに居合わせた男との問答と、娘のだだや発狂。
そして主役も宇宙船につかまるという始末。
こんなふうに、話はまったくないのに
全体を通してくだらないやりとりを聞かされ続けます。
気分としては、座席指定の新幹線の座席についているとき、
後ろの席で三歳くらいのこどもがぐずりだして、
自分の座っているシートの背中をけりつけながら
ずっと泣き叫んでばかなことを言っている状況を
延々と味あわされている感じです。
それだけならまだしも、
同時進行で虐殺シーンがてんこ盛りです。
最初は人が灰になる光線だけだったのが、
最後は串刺しにし、巨大ミキサーにかけて
空中から地上に血と肉、内臓をまぜたものを
まきちらすのです。
あたりの建物などには肉片や骨の欠片がべっとり。
そのくせ最後では宇宙船がなぜかバリアーをときます。
このとき思ったのは、もしかしてこれは、
映画『インデペンデンス・デイ』の
サイドストーリーなのではないかということです。
その前提で作られていたとすれば、
たぶんこの時間、敵の母船にウイルスプログラムを
発動させて、無防備状態にできていたときでしょう。
そしてその時間でちょうど主役の周りでも
敵の宇宙船を倒しました。
ここらへんの意味がまったくわからず、
最初に『インデペンデンス・デイ』のサイドストーリーだとは
特に言ってなかったはず、と思い返していたのですが、
話が終結してのナレーションが、しれっと言いました。
「宇宙人たちは、人間が抵抗力を持っていた細菌に抵抗力がなく、
そのため細菌にやられていたのです」
のような。
……これ、どうなんでしょうか?
たとえば恋愛映画で、とても付き合いそうにない二人が
ひたすらけんかしています。
でも最後の五分で告白して、なぜか付き合うことになります。
そして最後のナレーションで、
「実は二人は憎みあっているように見えながら好きあっていました。
彼女は彼が、雨の中で子犬を拾い上げるところを見て彼を見直し、
彼は最後まで自分をまっすぐ見ていてくれた人が
彼女だけだったことに気づき、知らずに好意をめばえさせていたのです」
と言われて終わるようなものです。
……それ、ナレーションで流すんじゃなくて、
映画で映像として流すものでしょう?
でもそんなナレーションが流れてみれば、
たしかに生の宇宙人が、ご都合よく主役の隠れた家に乗り込んで、
地面から水をすくって飲んだりしていました。
わたしもそのとき宇宙服を着なくていいのかと思っていましたが……。
今の地球でさえ、自分たちの住みよい星に、
その星を変えるという『テラフォーミング』という考え方があります。
あんな宇宙船を作るような知識も科学力もある存在が、
細菌に考えが及ばないなんて、そのオチはないでしょう。
そもそも最初に『人だけ消去光線』で人を消しているのに、
あとの方になると物理的虐殺に走る意味がわかりません。
さらにはまだ人間の生き残りがいるはずなのに、
占領も終わっていない土地に
生身で乗り込んでくる行動も理解すらできません。
この映画、主役周りのセリフは耳障りだし、
映像は血まみれ肉まみれでグロテスクだし、
筋は投げっぱなしだし、
そもそも宇宙でもなければ戦争もしていないし、と
タイトルから何からいいところはなに一つなく、
おっそろしくつまらなかったです。
……つまらないもの好きのかたにはおすすめします。
オチがふきましたよ
宇宙人が宇宙船から出て、外の空気を吸って細菌にやられて~みたいな
確かに宇宙ですら戦争ですらないですね
まぁアレですトムクルーズブランドです
一本作っちゃった、的なものですか。
わたしは基本的に人物の区別がつかないので
そういう考えはありませんでした。
こればっかりはかの人も、
映画って本当にいいものですね
なんていえないでしょう。