軟式ミステリ部log

 ヘ(ΘωΘヘ)(ノΘωΘ)ノ
軟式にミステリを愛する部活(笑)

君のホワイトバンドは今日も白いか

2005年09月19日 | 一般
地下鉄日比谷線に乗り、空いている席に腰掛けると、目の前に高校生(恐らく一年生だろう)の息子と母親の二人連れが座っていた。息子と母親に会話はなく、母親はただひたすら乗降扉上の電光掲示板を見上げ、息子はただひたすら自分の左手首の辺りを弄んでいる。

何事かと横目でちらりと見てみると、息子の左手首には明らかにサイズの大きい、今にもするりと抜けてしまいそうなサイズの白い太めの輪ゴムが嵌められているではないか。それを見た途端に、僕は暗澹とした気分になった。その高校生と思しき男の子の左手首に絡み付いているそれは、紛うことなき「ホワイトバンド(スリーアスタリスク)」だったからである。

ホワイトバンド運動、というものが世界的に行われていると言う。ロック好きならU2のボノが演説しているところを見たかも知れない。或いは、最近はぷっつりと見かけなくなったが、中田英寿やグレイのテルやその他大勢の善意の人たちがパチンと指をスナップさせながら、この音とともに一人の人間が貧困で死んでいると言った脅迫的なメッセージのCMを見たかも知れない。恐らく、この男の子はCMを見たのだろう。ナカタのファンなのかも知れないし、グレイのファンなのかも知れない。少しは世界の貧困問題に関心があり、一挙両得の善意でホワイトバンドを300円という世界水準のおよそ三倍程の金額で購入したのかも知れない。でもね、と僕は心の中で囁く。君が切った身銭は、ただの一円たりとも、世界の貧困に喘ぐ人たちには届かないんだよ。

アメリカのホワイトバンドであるところの「ONEキャンペーン」では、手首に巻くものは白い布なら何でも良く、またホワイトバンドも1ドル($ ONE)という制作の為の実費のみの値段の上、製造もアフリカで行い、運動のゴールもアメリカの国家予算の1%を世界の貧困とエイズの撲滅の為に回させようと言う明確なものである。

ところが日本のホワイトバンド運動であるところの「スリーアスタリスク」は、制作経費86円、流通費114円、広報活動費57円、そして29円がNPOの活動資金にあてがわれ(合計286円に消費税5%で300円)、製造は中国で行われ、運動のゴールも明確に提示しないまま、まるで募金であるかのような印象を与える、「商品」なのである。

「スリーアスタリスク」は広告代理業務などを手がける営利企業である「サニーサイドアップ」が全面に渡って関与しており、中国で製造し、幻冬舎が書店に流通させ、サニーサイドアップが広告し、それぞれに売り上げを得て、余剰金をピースボートのような市民団体に流しているものであり、根本的にアメリカの「ONEキャンペーン」とは別物なのである。

そもそも幻冬舎といえば「売れない本は出版しない」というポリシーの、まあ「金がかかるからライブはやらない」でお馴染みのかつてのビーイングの出版社版みたいなもので、そこが流通に絡んできているという事自体、このホワイトバンドという「商品」が「売れる」ことの証拠に他ならない。なにしろ全体の40%とという一番大きな割当が流通費であることからも、それが推察できる。つまり、「ホワイトバンド」は「売れる」「商品」であり、なんら「ボランティアではない」と言うことである。

ところが、その幻冬舎の「webマガジン幻冬舎」の「桜井亜美通信」で、何を思ったか「幻冬舎の稼ぎ頭」で「カリスマ作家」の「桜井亜美」が、こんなことを書いている。

--------以下引用--------
 それから、色んなNGOが連携して運動して、世界のまずしい人を一人でも減らそうっていう、「ホワイトバンド」を買ってみました。みんなも関心があったらぜひ……。ネットで簡単に買えるよ。
 シリコンの白いリストバンドを買って、その代金を貧困な世界の子供たちの支援にまわすと同時に、ホワイトバンドを身に付けることで、世界の貧困に関心があることを示そうという運動。ささやかなことだけど、それで飢えてる誰かの一食になればいいと思う。豊かさとまずしさの格差が憎しみを生むなら、憎しみを共感に変えるしか解決法はない。
-------引用終了--------

とか

--------以下引用--------
 最近、思う。
 お洋服大好き! 遊ぶの大好き! おいしいものも大好き! でも自分の回りに栄養失調の子供がいたら、自分のひと時の満足よりその子の満足した笑顔のほうがずっと幸せをたくさん作る。
 きっとそのほうがずっと、自分もうれしくなれる。目の前に傷ついて倒れたひとがいたら、手をさしのべて助けようとする。それがあたりまえ。
 偽善だとか、自己満足だとか、キレイごとだとか、いーたい奴にはいわせとけばいい。……っていうのが桜井亜美の個人としての意見。
-------引用終了--------

などとリリカルだか叙情的だか知らないが、訴えちゃっています。「ホワイトバンドを身に付けることで、世界の貧困に関心があることを示そうという運動」って、完全に「ONEキャンペーン」からズレてます。しかも、「関心があることを示す」って、どうなんでしょう。「世界の貧困問題に関心があります」と言えば、当然「で、どのような活動を?」と聞き返されるわけで、その返答が「ホワイトバンド」を買いましたでは、堂々巡りである。「その代金を貧困な世界の子供たちの支援にまわす」って言っても、大体「ホワイトバンド」の300円からは1円たりとも募金されないのだから、そもそも「偽善だとか、自己満足だとか、キレイごとだとか、」の前に「募金詐欺」なんですけど、と突っ込みたい。300円あれば15人の子供にポリオ(小児麻痺)のワクチンが打てるんだぞ。

そして、別の日には、こんなことを書いていました。

--------以下引用--------
この前書いたホワイトバンドはすごく売れてるみたいで、在庫が少ししかないらしい。まだ受け取ってないけど、いいことだよね。
-------引用終了--------

多分、製造国の「中国」と、流通を受け持つ(そして桜井亜美がお世話になっている)「幻冬舎」と、広告宣伝(或いは企画もそうか)の「サニーサイドアップ」と、労せずしてお金を頂ける「ピースボート」などの市民団体と、その市民団体が支援する「北朝鮮」あたりにとっては、とても「いいこと」なんでしょう。ああ、あと自分の精神衛生にも「いいこと」なのかも知れない。「豊かな国に生まれてごめんなさい」という訳の判らない罪悪感にかられ(これ自体日教組とかいろいろ言いたいのだが)、「でも、私は無関心じゃないんです。貧困問題に関心があるんです」ということを示すことで「贖罪意識」持つことが出来る。

なるほど。つまるところ、「スリーアスタリスク」とは現代日本での300円で買える「免罪符」なのである。「免罪符」とは、中世末期、カトリック教会が財源確保のため乱発した献金等の代償に信徒に与えた罪に対する罰の免除証書のことであり、つまりは「免罪符を買えばそれまでの罪が許される」と言うものである。では、「スリーアスタリスク」とは何かと言うと、『「ホワイトバンドを買えば日本に生まれた罪が許される」という触込みで、「中国・幻冬舎・サニーサイドアップ・ピースボート(等の市民団体)・及び市民団体に支援される北朝鮮(等)」が財源確保のため乱発した募金等の代償に大衆に与えた罰の免除証書』だというのが、その正体なのである。

アメリカ版ホワイトバンドには「ONE」と言う文字が彫り込んであるが、日本版ホワイトバンドには「***」と彫り込んである。アスタリスクが三つで「スリーアスタリスク」である。だが、アスタリスクとは伏せ字のことである。何かが伏せられているのだ。すでにホワイトバンドを買ってしまったなら、「***」の左隣に「F」と彫り込んでやれ。

「F***」

そんなフォーレターズ・ワードが、日本版ホワイトバンドには相応しい。

第三章 - 7

2005年09月14日 | 自作について
ただいま、「破壊者の幻想譜」に「Nirvana Engine」の第三章の7をポストしました。

いやあ、空木の過去が少しずつ明らかになってきましたねぇ。
それにしても、一年経ってまだ三章とは(^^;)
全体の1/3くらいまでしか進んでないよ(T_T)

まぁ、一応仕事の方は明日から第二の山に差し掛かるわけで、敬老の日も秋分の日も関係ないわけですよ。

追伸:
杉澤様には試験を頑張っていただきたいです。