芸能界に身を置くと、四季は先取りでやってくる。
特に舞台稽古が始まると、そう思う。
そうなると、あいつへの連絡は全くしない。電話はおろか、届いたメールへの返信すらしないことが多い。そんな俺を、あいつは黙って許してくれる。
男と女では、恋愛に対する考え方が違うのだろう。目の前の仕事に追われると、愛だの恋だのという言葉は頭の中から消え失せる。
あいつはこんな自分を何日も、否、何週間も音沙汰なしに、ただ黙って待っている。
夏の公演。
芝居が跳ねて、漸くあいつを思い出す日々。駐車場から車を出して、初めて覚える違和感。
そっか。夏休みだ。
東京から少しだけ人が減って、静かになる。自分には縁のない休み。
明日は休演。あいつも夏休み――。
このまま、あいつの処へ行ったら、きっと怒るだろうな。体調管理に煩いから。
休演とはいえ、別の仕事は入ってる。
でも、そろそろ逢いたいよ。
世間は夏休みで賑わいを見せている。
ひとつくらいの我が侭を、きいてくれてもいいじゃないか…。
【終わり】
著作:紫草
特に舞台稽古が始まると、そう思う。
そうなると、あいつへの連絡は全くしない。電話はおろか、届いたメールへの返信すらしないことが多い。そんな俺を、あいつは黙って許してくれる。
男と女では、恋愛に対する考え方が違うのだろう。目の前の仕事に追われると、愛だの恋だのという言葉は頭の中から消え失せる。
あいつはこんな自分を何日も、否、何週間も音沙汰なしに、ただ黙って待っている。
夏の公演。
芝居が跳ねて、漸くあいつを思い出す日々。駐車場から車を出して、初めて覚える違和感。
そっか。夏休みだ。
東京から少しだけ人が減って、静かになる。自分には縁のない休み。
明日は休演。あいつも夏休み――。
このまま、あいつの処へ行ったら、きっと怒るだろうな。体調管理に煩いから。
休演とはいえ、別の仕事は入ってる。
でも、そろそろ逢いたいよ。
世間は夏休みで賑わいを見せている。
ひとつくらいの我が侭を、きいてくれてもいいじゃないか…。
【終わり】
著作:紫草