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『君戀しやと、呟けど。。。』

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作品bより~『夏休み』Ⅱ 新番外篇2

2010-06-26 04:54:37 | 作品b 【掌編】
 芸能界に身を置くと、四季は先取りでやってくる。
 特に舞台稽古が始まると、そう思う。

 そうなると、あいつへの連絡は全くしない。電話はおろか、届いたメールへの返信すらしないことが多い。そんな俺を、あいつは黙って許してくれる。

 男と女では、恋愛に対する考え方が違うのだろう。目の前の仕事に追われると、愛だの恋だのという言葉は頭の中から消え失せる。
 あいつはこんな自分を何日も、否、何週間も音沙汰なしに、ただ黙って待っている。

 夏の公演。
 芝居が跳ねて、漸くあいつを思い出す日々。駐車場から車を出して、初めて覚える違和感。
 そっか。夏休みだ。
 東京から少しだけ人が減って、静かになる。自分には縁のない休み。
 明日は休演。あいつも夏休み――。

 このまま、あいつの処へ行ったら、きっと怒るだろうな。体調管理に煩いから。
 休演とはいえ、別の仕事は入ってる。

 でも、そろそろ逢いたいよ。
 世間は夏休みで賑わいを見せている。
 ひとつくらいの我が侭を、きいてくれてもいいじゃないか…。
                          【終わり】
                              著作:紫草
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