勝利条件は、先に、チェスでチェックメイトをするか相手の持ち時間を使い切らせるか、ボクシングでノックアウトまたはテクニカルノックアウトを取ることとなる。11ラウンドで勝敗が決まらない場合は、ボクシングの判定で勝敗を決める。」
チェスに秀でた者、ボクシングに秀でた者、バランスが取れた者…どういうタイプが有利なんでしょうね。やっぱりパンチ一発で試合を変える可能性があるボクシングの重要性の比重が高くなるのかな?
将棋界で言えば、中川八段が空手をやってたような気がします。
さて、今回は将棋と格闘技の類似点についてです。祖父は対局中「金持ちケンカせず」ということをよく言っていました。金持ちというのは、持ち駒をたくさん持っている状態のことのようにもとれますが、祖父は持ち駒の多寡にかかわらず、自分が優勢なときにこの言葉を使っていました。優勢なときはできるだけ穏やかに指して、優勢を維持しようということです。
こういう展開はボクシングでも見受けられます。ポイントで勝っているときは、KO勝ちを無理に狙わなくても判定で勝てるので、激しく打ち合うような展開は避けて、距離をとったりします。これは卑怯ではなく戦術です。
また別の例を挙げてみましょう。将棋では優勢を意識したとき、相手の反撃をおそれて手が縮こまってしまうことがあります。慎重に指そうとするあまり、いつものようにのびのびと指せないのです。
「ジョジョの奇妙な冒険」というマンガでは、第二部でジョセフとワムウというキャラクターが戦います。戦いをテーマにした少年マンガでは、はじめ主人公が負けていて、最後に逆転して勝つという展開が定番です。しかしこのワムウ戦では、序盤からジョセフが優勢に進めます。好調のように見えますが、読者はなかなか安心できないことでしょう。何しろ相手は戦闘の天才であるワムウ。きっとどこかで巻き返してくるという予想が立ってしまうからです。優勢なのに気が抜けないというこのあたりの緊張感は、作者・荒木飛呂彦先生の筆の冴えのなせる技でしょう。
連載時に読んでいたときも「ここから勝ち切るのが大変なんだよなぁ。将棋と似てるなぁ」と感じていました。優勢だからといって、なかなか温泉気分にはなれないのです。将棋とはつくづくメンタルに左右される競技だと感じますね。ソフトではなく、人間が指す意味もそのあたりにあるのではと思うのです。