誰でも自由なこころで 時代小説「かもうな」掲載中

江戸時代の仙臺藩髙橋家に養子に入った治郎の生涯を愛馬のすず風を通して描いた作品です。時代考は本当に大変でした。

かもうな すず風 第二之巻(五)

2023年03月23日 10時47分51秒 | 日記

かもうな

すず風 第二之巻(五)

     一方、追廻馬場では若い藩士たちの騎乗訓練が行なわれていた。

     本日は馬術指南の佐久間久兵衛は心の臓の病にて休み、代わって御用馬方の戸津

     新之丞が代役での務めである。

     初めに御用馬方の指示に従い馬の手入れをする。本来は中間の役目だが訓練中は

     各々がする。藁の束子で優しく馬の毛並みを整る。それが終わりに近づくと馬に

     ついての講義が始まる。

     運動前には餌を与えないこと、馬の胃は消化不要を起こしやすいので餌は数回に

     分けて与えること、水分補給は欠かさず、塩は餌に混ぜて食させること、後方か

     ら馬には近づかないこと等など仔細にわたっての講義が延々と続く。

     当時は天下泰平の世であり、武士たる者の本分「尚武の気風」も薄れ馬を飼う等

     は余計な手間暇が掛かる上に出費もかさむので、藩の御用馬で訓練したという。

     そのような中にあって治郎はすず風という持馬を持つことになる。

     和馬は西洋の馬と比べると小柄ではあるが強健だと云われている。

     80キロもある鎧武者を乗せて全力で疾駆するのだから強健だったことは間違いない。

     最初に居鞍乗りから始まり、それを習得したらやっと馬上の人となる。

     廐頭の号令を受けて騎乗し一人づつスタートする。

     一番手の日野助五郎は乗るのにやっとで馬に縋り付いてのスタート。二番手の佐伯

     右衛門は日頃の鍛錬の結果がでてどうにか走っている。

     「三番」と御用馬方の声が響くと、すず風の足が地面を掻いて空を描く、治郎は手綱

     を開きすず風の行きたい方に誘導する。

     手綱は麻製の段だら染で優雅な一品で治郎の意志を的確にすず風に伝える。

     治郎は背筋を張り坐骨を伸ばしすず風の疾駆を助けた。

                  ・・・続く・・・

 

 



最新の画像もっと見る

コメントを投稿