人間賛歌・もっちゃん4649

首を突っ込んで飲めや (追憶の日々)


校区内の丘陵が開拓され 大阪のベッドタウンとしてどんどん団地が出来

生徒数が増えていきました


 今まで聞いたことのなかったシンナー遊びに 教え子たちが染まっていったのです


下校後の夜にうごめく集団ですから 結束は固く 学年を超えての上下関係も出来るし

市内での抗争にと発展していきました


素手での喧嘩ではなく 木刀やチェーンを用意し 力の加減を知らない

喧嘩慣れしていないもの同士の争いですから 命の危険性をも孕んでいました


生徒の生活指導で 夜遅くまで市内の巡視をしていた時代でした


受け持ちの子が家から出ないように 夜遊びを止めてもらうように 親の帰りを

確かめるまで 家に上げてもらって待機していました


そんな消極的なやり方しか 守ってやる方法がなかったのです


Y君は ほとんどシンナー中毒状態でした

禁断症状も見られ 幻聴もあると言っていました


「粗末にする命があるのなら、先生にくれ~!

先生の家のお父さんは 一万人に一人しか助からないと言う難病にかかったので

毎日命を確かめながら生活しているんだよ~・・・」

と 連れ合いの苦悩の毎日を話して聞かせます


夕食の後 右手を固くこぶしに握り 一、二、三を合図に

私と連れ合いは手を開きます


真っ白な手のひらに赤みの差すのが 10数え終わるまでなら 再発ではないと

言うことで 手のひらに広がる赤みを見守っていました


これが二人の日課でした


健康がどれだけありがたいことなのか 失いそうになったものにしか

本当のことはわからないのかもしれません


家庭で見るY君は あどけない笑顔の素直な15歳です


小柄だからよけいにそう感じるのですが 夜中に抜け出して 

仲間と朝方まで過ごす 親不孝者でした


いよいよ進路を決定する時期に入り 志望校を絞っていくことになります

3者面談を繰り返すのですが 一向に希望校が決まりません


最終の3者懇の時にいよいよ本音を聞けました

「先生、僕の力で今入れる高校にたとえ合格しても 3年間続かんと思う。

おとんの知り合いのおっちゃんに仕込んでもらうつもりです」と真顔でいうのです


おっちゃんは 板金屋の親方をしているそうな


「息子の好きなだけシンナーを吸えと言うてくれてます。

石油缶にいっぱい入っているから 首を突っ込んで飲めや~」と


なかなか肝っ玉の据わった親方のようだと思いました

これくらい荒削りの気性でないと Y君を引っ張ってはいけないでしょう


本物だと感じました!


本人がその気なら願ってもないことです

Y君にぴったり~と 私までうれしくなりました


成人式の時にY君と話す機会があり

「まだ板金屋で働いているの?」と訊ねました

給料は親方に積み立ててもらって 50坪の土地をまず買ったそうです

いつか一戸建ての家を 親に建ててやりたいと思っていると 熱く語ってくれました


あれから28年が経っています

Yの夢は実現できているのでしょうか~?


親孝行に目覚めたYは 確実に命拾いできているはず

運命も大きく変わっているはずです


まったく音沙汰がないのですが 元気にしていてくれたらいいなあと願っています


転校生で大阪からやってきたBは 25歳の時にシンナー中毒で前歯ぼろぼろの

哀れな姿で亡くなったと 風のうわさで聞いています


運命の岐路は 親孝行に目覚めたら 先祖の守りをいただけるのではないかしらと

狭い経験ですが そう思えているのです


広大な高原です





PS

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