特定非営利活動法人精神医療サポートセンター

発達障害、統合失調症、アルコール依存症、ベンゾジアゼピン系薬剤の依存等々、精神科医療についての困りごとに対応いたします。

患者への気持ち

2006年02月19日 | 看護論的経営論
 看護師の資格をとってしばらくは、患者に対しては

※プロとして誠心誠意かかわる。しかし、そこに情を持ち込む必要もないし、持つつもりもない。

そう思って、看護をしていた。
 今回、出版の件で職場を去らなくてはいけない状況になったことは、このブログをご覧になっている方ならご存知のことだろう。病院の立場からすれば、私は有害無益の存在。退職する為に詰め所の荷物整理や、今まで病棟にお世話になった気持ちを伝えようと病棟に上がるだけでも事務所を通さなければ階上に上がらせてもらえなくなっていた。
 私は、自分の正当性を貫こうと周囲を見ず、それまで、病院との対決姿勢を強調していたのだが、心も体もその対決姿勢から身を引いた時に、ふと思い浮かんだことがあった。

※患者のことである

仕事は、忙しかった。毎日の同じ光景に飽きたこともあった。しかし、患者とくだらない冗談を言い合っているときほど、楽しいときはなかった。少し病気をして休んでも「しばらく休んでたけど、大丈夫なんか?」とか「体いけるのー?もぅ、心配したわー」など、声をかけてくれる。そんなたわいもない日常が、もう目の前に現れないとなると、涙が止まらなくなる。
 正直、患者にも最後の挨拶くらいしたかった。いや、するつもりでいた。病院側に止められても、最後の挨拶は意地でもするつもりでいた。だが、直前でよく考えてみれば、お別れの挨拶で言い方を間違えれば患者の精神状態に悪く影響する。看護師としてそれはできない。そう思うと、やはり無理はできなかった。
つらい。とてもつらい。突然仕事に来なくなった形で消えていくのはつらい。日常がこれだけ自分に必要だったのかと思うと、辛くて辛くてたまらない。
私は、いつしか数年前の看護に対する姿勢とは正反対に変わっていたのに気づいた。

※看護師として関わるためには、そしてプロとして関わるためには、表面上だけの誠意では自分の気持ちなど伝わらない。患者の気持ちもわかり得ない。

こうして自然に大事なことを、この私の体と心に叩き込んでくれていた患者には感謝しなければならない。
 先日、お礼奉公返金の件で職場に行ったとき、受付口で患者の家族とばったり出会った。色々話をしてお別れの挨拶ができた。お礼奉公の件で話をするために待っていた幹部は、「時間は守れよ」と怒り心頭だったが、その怒りを見るのもいたずら気分に楽しかった。なにより、最後に家族さんに会えたことが嬉しかったのだ。
 
 月曜日が私の正式な退職の日。
 
 色々あったが、感謝の気持ちはどこで働こうと持ち続けたいと思う。正直、すっきりした退職ではなかったが、病院にもお世話になった。馴染み深いあの光景もみられなくなると思うと寂しい。18歳のときから色々と学ばせてもらったあの環境を一生忘れない。

ありがとう。


鼻がずるずるになったので寝ます。おやすみ。
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35 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
Unknown (精神科看護師ぼやく!)
2006-02-19 20:55:52
お久しぶりです!月曜が退職ですか…。私も何度も転職を考えるたびに患者さんのことで踏みとどまってしまいますのでお気持ちお察しします。他の看護師から学ばせてもらった事以上に、患者さんから教えてもらう事の多さと、彼らとの関係性を失ってしまう事を考えるとつい、踏みとどまってしまいますね。

辛いでしょうが、少しでも早く現場に復帰される事を願っています!
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Unknown (もっさん)
2006-02-20 09:51:29
>ぼやくさん

 日付は変わって、ついに今日が来ました。とても複雑な気分ですが、初心を忘れずこれからも看護師としてやっていきます。

 デスさん同様、当初から心配をおかけしたぼやくさんには、本当に感謝しています。今回は、自分の若さゆえ軽率な行動をとってしまい失敗したこともありましたが、この失敗は今後の大きな成長材料になると信じています。同じ失敗はすることなく、次へ進んでゆきたいと思います。“失敗は、最大の学びである”ですね。
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Unknown (death_scythe3)
2006-02-20 12:11:25
患者さんへの感情移入は必要なことだと、私は思っております。

特に精神科という分野では必要なことなのかも知れませんね。

大病院では別だと思いますが・・・



今日が正式な退職の日なんですね。

色々と考えてしまうでしょうけど、のんびりされるのが良いと思います。



そうそう、看護界ってお礼奉公なんていうものが、さも当たり前のようにまかり通っておりますが、一般企業で働く人間からしてみればおかしな事だと思います。

勉強させてもらいながら、というのは分かりますが、どの仕事も勉強しながらなんですよね。

もちろん専門学校に通われて資格を取るということにおいては、看護士というのは特別なんですけど・・・

返信する
がんばってくださいね。 (いひひ)
2006-02-21 02:17:16
僕の場合,どうしようもない時,どうしていいか分からないとき,とにかく寝ますね。

起きたときには,弱弱しい細胞らが死んだ気がして。励ましになっていませんが。そういうことを期待されるかたではないとも思います。

でも応援しています。



まことに勝手ながらブックマークにリンクさせていただきました。許可が必要であればご一報ください。
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流石! (西やん)
2006-02-21 04:49:08
さすが、作家ブログはコメントも多いですね!

私のブログは、このところ記事の問題か?アクセス数がやや減り始めました。

立場上 あまり過激な事も書きにくいし。

また、遊ぶに来ます。
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良い環境に・・・ (まーなん)
2006-02-21 14:59:50
うちの娘は、看護師志望です。

良い環境で働かせてあげたい・・・

でも、あの病院は・・・とかこっちは!とか。

色々、嫌な噂を耳にします。

進学校希望でしたが、先行きどうなるのか判らない世の中で「芸は身を助ける」と言うことで、商業高を受験しました。

本日、合否発表です。

先行き看護師がダメでも、資格がいっぱいあれば就職に有利ですからね。



若き頃、看護師さんとのお付き合いが何度かり、初婚の時も相手は看護師でした。

大変な仕事だと認識しております。
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Unknown (もっさん)
2006-02-21 17:31:48
>death_scythe3さん

それはそうと、ブログの閉鎖とは寂しいですよ。早く復帰してくださいね。ほんとに!!!まってますから!
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Unknown (もっさん)
2006-02-21 17:38:46
>いひひさん

ブックマークOKです。



 私は、凹み屋さんですが負けず嫌いでもあります。それは長所でもあり、短所でもあるのですが、そのおかげでここまでこられた経緯があります。

 よく、上司は私の性格を否定してましたが、人格否定は基本的に何も生み出さないものと思っています。前の職場では、私への教育が間違っていたのではと自ら反省している上司もいますが、そういう反省しかできない上司を育てた企業に根本的な問題があるのでしょう。

 未だに、出版した私の存在を否定し続け、数の論理で自分達だけで納得しているのですから残念でなりません。これからも、何かの結果を残し続けます。これからもよろしくお願いしますね。

返信する
Unknown (もっさん)
2006-02-21 17:43:10
>西やんさん

 毎度です。時々ブログ拝見しております。私は何も面白いブログはかけないので、友人のブログなどを羨ましく思います。

 しかしながら、私のブログの目的は日本の精神科看護を変え、そして看護全体を変えるという目標がありますので、アクセス数も必要になることは事実ですね。ただ、私のブログの一番の閲覧者は、前の病院の人間でしょう。今の時点では、あのかたがたには何も理解されないので、見てもらうだけややこしくなるだけなんですがね。

 世間が騒ぎ出したら、すぐに態度も変わることでしょう。それまでにはまだ時間をかけるつもりです。時々お越しくださいね。
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Unknown (もっさん)
2006-02-21 17:46:32
>まーなんさん

 看護師さんが、前の奥さんですか。それは大変でしたね。看護師さんは、独立心が強いものですから、理解するのも大変だったのでは?職業がそうさせているのでしょうかね。

 病院によっても忙しさが違いますが、忙しさと給料が見合ってないとも言われます。しかし、私からすれば「こんなもんでしょう」とも言いたくなることもあります。しかし、女性が家事をこなすことが多い世の中では、女性の看護師さんは実に大変なことだと思います。
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