少しご無沙汰してしまいました。
夏はオルガンコンサートの季節でした。ことしもいろいろなところに弾きに行ったり…
中でも、旅行中の方々も大勢聴きに来て下さった、自分の教会での月曜日コンサート、Lundi d'Orgueは、ぶじに500回目のコンサートを終えることができて、11年目に突入しました。
毎週毎週月曜日の12時45分から午後1時半まで、ブリュッセルの中心地にいらっしゃる機会がある方は、Neuve通りのフィニステール聖母教会へ、昼の無料オルガンコンサートをどうぞ気軽に聴きに来て下さいね!
このようにしてコンサートの回数をプログラムに書き続けて来たのは、ほかでもない、「続くのかな?」という恐る恐るの気持ちがどこかにあったからかもしれないと思います。数える事で、勇気をもらうというか。しかし439回目とか、492回目とか書いてあっても、「きょう何回目だったかな?」と思い出せる人は既にいないように感じるので、きっちり500回目を終えた後、来週からはカウントするのはやめます、と宣言。
したはずなのに、501回目担当だった、2000年のオルガン修復を指揮したジャン・フェラール先生は、
「楽しみにしてたんだから、501回目弾くの。ちゃんとカウントしてよね!」
と言うので、プログラムには501回目、の文字が。
次の月曜日に弾いた夫も
「ま、いいか。」
とそのまま502回目、と表記。
そのつぎの月曜日に弾いた私は、言い出しっぺは自分だし…と思い、思い切って
「11年目」
の文字に変更。ちょっとプログラムの表紙がすっきりしました。
(上は500回記念パーティーの写真です)
♪♪♪
さてそんな8月も終わり、9月に始まるいろいろな活動に、秋の新学年はいつでも忙しくも楽しい日々。
ところがわたしが引き受けていた今までのアカデミーでの仕事がいろいろあって終わってしまったので、急に新しい人生設計を構想する事を余儀なくされました。
オルガニストが教える学校がなくなるということは、教えるオルガンがない、ということになります。
自分の教会では「教えも練習もしてはいけない」令が出ているため、まずは
「移動オルガン教室」
(つまりいろいろなところにオルガンをお借りしつつレッスンをする)
を開催しつつ、貯金して家にオルガンを入れる以外ない、ということになりました。一家で話し合い、計算して、数年計画でのオルガン購入を目標にすることになりました。
「靴屋さんは一番ぼろぼろの靴をはいている」
という仏語の喩えがあるように、オルガニストで自分のオルガンを持っている人はほとんどいない。他の楽器奏者で自分の楽器を持っていない人というのはあり得ないので、オルガニストは普通じゃないのですが、自分のオルガンぐらいいつかは持ちたい。と常に思いこそすれ、その楽器を使ってコンサートをするということはできない(家にホールのような大きさ・音響の部屋がない限り)。そこで、練習とレッスンが主な使い道になります。
差し迫った理由がないことも手伝って、なかなかその費用を貯められないままに、しかし夢見る事は無料なのでこれまで何度「うちにオルガンを入れるとしたら。」という話を夫婦でしてきたことでしょうか。そのたびに、「第1鍵盤の8フィートはプリンシパル。」と片方が言えば「いやいやモントル。」「第3鍵盤はガンバ?」「サリショナルのほうがいいよ。」
一つの鍵盤にひとつのストップ以上あるオルガンを作ろうとしても、こんな町中では騒音公害で近所迷惑になって結局使い切れないだろうし(自宅の壁は厚いけれど、オルガンはとても音が通る。)、パイプが増えすぎたら部屋が全部オルガンになってしまう。ということで一つの鍵盤につき「たった一つの音色」を選ぶというのが、楽しいというか難題というか…
そういう話を15年してきて、この秋、オルガンを購入する必然が本当に浮上してきた。
オルガンの小さな学校、という体裁を取る事でレッスン料は特定の口座に貯める。半額はローン。そしてそれでオルガンの設計を依頼する。出来上がって来るのは2-3年後。
どうしよう。
うまくいくのでしょうか?
最終的にローンも返済するまで6年間の節約生活。
人生って極端…でも遠回りして来た人生がだんだん中心に向かっているんだと信じて、夢に飛び込んでみたいと思うこのごろです。6年間…あっという間にすぎるのでしょうか?500回の昼コンサートがいつの間にか続けられたように。
と、いうことで、「オルガンの小さな学校」、
La petite école d'orgue de Bruxelles(仮名)
は随時入学可の、「フィットネスクラブ」の10時間チケット制のような体裁で来週から始めます。ダンスを習う様な気持ちでオルガンを習える教室にできるといいなと考えています。