滴りは雪降る胸の悲しみか胡蝶はとほき日日を舞ひをり

歌会「壊」より

2006-08-05 10:36:53 | Weblog
いつしかに滅びし花壇あるじ亡き家の醜草 石燈に燃ゆ 

壊される借景ひかへ圓通寺 静謐といふ緑雨ふりくる 

崩壊の寺院は虫の鈴の籠ふうらり揺れて雨を呼びこむ 

キックする脚は破壊か暴発か跳べない鳥はいつも木の下 

ほうたるの滅びし郷をほうほうと舞ふアンブレラ ビル風がもう 


番外詠草
壊滅のセンセーションが吹き荒ぶ日本海とふ犠牲者はいま
滅ぶまじ伊万里焼きてふ錫ならす碧眼いろなき風の道より
ほろほろと翅こぼし舞ふ夏蝶の堕つる描線あをく光れり
霧咲かす草も枯葉も毀れゆく白き雨ふる夏の時間へ
借景に高層たつか圓通寺比叡ふきぬく幻影を追ふ
一点をぐるりと回しコンパスの壊れたやうな世代の図式
溢れゆく水の透明さながらに髪梳く指のさはらかに夏
ワンパターン壊してしまへ詠歌する指ゆらゆらと伸び縮みさせ
倒壊の悲鳴すさまじ震度7梁に剪まれ呻く死相が