※原作の設定を大きく逸脱した部分を含むお話です。苦手な方は閲覧ご注意ください。
「歌、かぁ・・・」
しばらく黙ってあたしを見ていた高彬は、呻くようにそう言うと(うーむ)と言う感じで腕を組んでしまった。
そのままの姿勢で目を瞑り、上を向いている。
お歌なんて公達の必須教養みたいなもので、有能花形公達である高彬にしてみたら、さしてハードルが高いこととは思えないんだけど・・・
なんて思う気持ちとは別に、あたしは高彬の腕を組む姿にドキマギしてしまった。
だって当然のこと、高彬は裸なわけで、腕を組むことで強調される腕や胸の筋肉が目について仕方ないんだもの!
逞し過ぎるわけでもないのに、でも、しっかりとしてる腕や胸。
武官だからちゃんと鍛えてるんだろうし、そこら辺の生っチョロイ公達とは違うのかも知れない。
こう言うのを<オトコの色気>と言うのかしら・・。
薄暗い部屋の中にある少しの灯りが上半身裸の高彬の身体に陰影を作ってて、今の今まで、この身体に組み敷かれたのか思うと、恥ずかしいような嬉しいような不思議な気持ちになってしまう。
結婚したと言う事は、高彬のこの身体はあたしのものだと思っていいと言う事なのかしら・・?
「・・・」
あたしは息を飲んで、一人で目をシロクロさせてしまった。
やだ、あたしったら<この身体はあたしのもの>だなんて、何、ハシタナイ事、考えてるんだろ。
自分の考えにびっくりしてしまう。
「・・歌は、実はそんなに得意じゃないんだよ」
一人であわあわしてたら、目を開けた高彬が言い、情けなさそうな顔であたしを見ている。
「え」
「今まで、瑠璃さんに歌を送らなかったのは、タイミングがなかったって言うのもあるんだけど、そもそも苦手でさ・・」
「そ、そうなの・・?公達って誰でも得意なのかと思ってたわ」
言いながら、そう言えばあたしも筝の琴が苦手だし、弟の融だって歌が得意と言う話は聞いたことがないし、そりゃあ人によるのかもね、なんて思う。
「じゃあ、いいわよ。前言撤回するわ。別にお歌は・・」
「いや、ちょっと待って」
またしても目を瞑り、思案することしばし。
高彬は少し恥ずかしそうにあたしの手を取ると
「九重の 霧に隠れし 撫子の 花にふたたび 逢ふぞうれしき」
囁くような声で歌を詠じた。
そうして、あたしの反応を窺うように心配そうな顔でじっとあたしを見てくる。
「・・・」
「やっぱり、変だったかな・・」
「ううん!」
あたしは大慌てで高彬の手を握り返した。
「素敵なお歌」
反応が遅れてしまったのは、あまりに嬉し過ぎたから。
九重とはズバリ宮中のことを指し、つまりこのお歌は
『宮中の霧に隠れて居なくなってしまった撫子の花に、こうして再び逢う事が出来て、本当に嬉しいですよ』
と言うお歌なのだ。
確かに凝ったお歌ではないのかも知れないけど、その分、ジンと胸に迫ってくるものがある。
───九重の 霧に隠れし 撫子の 花にふたたび 逢ふぞうれしき
心の中で反芻する。
逢ふぞうれしき、逢ふぞうれしき・・・・
何度も反芻してるうち、涙が滲んできてしまう。
「瑠璃さん?」
あたしの目の涙に気が付いた高彬が驚いた様に言い、顔を覗き込んできた。
「・・どうしたの」
あたしは頭を横に振った。
「・・素敵なお歌だから嬉しくて」
「・・・」
「あたしも、高彬にまた会えて本当に嬉しかったの・・」
「瑠璃さん」
次の瞬間、高彬に抱き寄せられていた。
<続>
瑠璃からのお歌のおねだり、高彬は素敵な歌で応えてあげました。
このお歌は、私が鈴夏さんにお願いして作っていただいたものです。お歌の意味も、鈴夏さんのを原文のまま使わせていただいております。
高彬らしい、ストレートで愛情たっぷりのお歌ですよね。
これまた鈴夏さんにお願いをして、このお歌の返歌を作っていただいておりますので、次回はそちらもどうぞお楽しみになさってください!
鈴夏さん、ありがとうございました。
次回、最終回(予定)です。クリックで応援をお願いいたします。
↓↓
「歌、かぁ・・・」
しばらく黙ってあたしを見ていた高彬は、呻くようにそう言うと(うーむ)と言う感じで腕を組んでしまった。
そのままの姿勢で目を瞑り、上を向いている。
お歌なんて公達の必須教養みたいなもので、有能花形公達である高彬にしてみたら、さしてハードルが高いこととは思えないんだけど・・・
なんて思う気持ちとは別に、あたしは高彬の腕を組む姿にドキマギしてしまった。
だって当然のこと、高彬は裸なわけで、腕を組むことで強調される腕や胸の筋肉が目について仕方ないんだもの!
逞し過ぎるわけでもないのに、でも、しっかりとしてる腕や胸。
武官だからちゃんと鍛えてるんだろうし、そこら辺の生っチョロイ公達とは違うのかも知れない。
こう言うのを<オトコの色気>と言うのかしら・・。
薄暗い部屋の中にある少しの灯りが上半身裸の高彬の身体に陰影を作ってて、今の今まで、この身体に組み敷かれたのか思うと、恥ずかしいような嬉しいような不思議な気持ちになってしまう。
結婚したと言う事は、高彬のこの身体はあたしのものだと思っていいと言う事なのかしら・・?
「・・・」
あたしは息を飲んで、一人で目をシロクロさせてしまった。
やだ、あたしったら<この身体はあたしのもの>だなんて、何、ハシタナイ事、考えてるんだろ。
自分の考えにびっくりしてしまう。
「・・歌は、実はそんなに得意じゃないんだよ」
一人であわあわしてたら、目を開けた高彬が言い、情けなさそうな顔であたしを見ている。
「え」
「今まで、瑠璃さんに歌を送らなかったのは、タイミングがなかったって言うのもあるんだけど、そもそも苦手でさ・・」
「そ、そうなの・・?公達って誰でも得意なのかと思ってたわ」
言いながら、そう言えばあたしも筝の琴が苦手だし、弟の融だって歌が得意と言う話は聞いたことがないし、そりゃあ人によるのかもね、なんて思う。
「じゃあ、いいわよ。前言撤回するわ。別にお歌は・・」
「いや、ちょっと待って」
またしても目を瞑り、思案することしばし。
高彬は少し恥ずかしそうにあたしの手を取ると
「九重の 霧に隠れし 撫子の 花にふたたび 逢ふぞうれしき」
囁くような声で歌を詠じた。
そうして、あたしの反応を窺うように心配そうな顔でじっとあたしを見てくる。
「・・・」
「やっぱり、変だったかな・・」
「ううん!」
あたしは大慌てで高彬の手を握り返した。
「素敵なお歌」
反応が遅れてしまったのは、あまりに嬉し過ぎたから。
九重とはズバリ宮中のことを指し、つまりこのお歌は
『宮中の霧に隠れて居なくなってしまった撫子の花に、こうして再び逢う事が出来て、本当に嬉しいですよ』
と言うお歌なのだ。
確かに凝ったお歌ではないのかも知れないけど、その分、ジンと胸に迫ってくるものがある。
───九重の 霧に隠れし 撫子の 花にふたたび 逢ふぞうれしき
心の中で反芻する。
逢ふぞうれしき、逢ふぞうれしき・・・・
何度も反芻してるうち、涙が滲んできてしまう。
「瑠璃さん?」
あたしの目の涙に気が付いた高彬が驚いた様に言い、顔を覗き込んできた。
「・・どうしたの」
あたしは頭を横に振った。
「・・素敵なお歌だから嬉しくて」
「・・・」
「あたしも、高彬にまた会えて本当に嬉しかったの・・」
「瑠璃さん」
次の瞬間、高彬に抱き寄せられていた。
<続>
瑠璃からのお歌のおねだり、高彬は素敵な歌で応えてあげました。
このお歌は、私が鈴夏さんにお願いして作っていただいたものです。お歌の意味も、鈴夏さんのを原文のまま使わせていただいております。
高彬らしい、ストレートで愛情たっぷりのお歌ですよね。
これまた鈴夏さんにお願いをして、このお歌の返歌を作っていただいておりますので、次回はそちらもどうぞお楽しみになさってください!
鈴夏さん、ありがとうございました。
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