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本が呼んでいる?

2017-06-16 10:42:37 | 日記
書店や図書館でお目当ての本があるわけでもなく本棚をめぐっていると、
なぜかしら強い引力を発していて、通りすぎることができない本の
存在に気付くことがあります。

深く心を惹かれて読んでいた本を読み終わってしまい
ぽっかり空いた心をかかえて、本棚をさまよっていた時でした。

最初に目にしたとき、その本は寒々とした装丁で、しかもタイトルから
氷の粒を打ち込んできました。
あったかく、こころにしみるおだやかな物語を求めていました。
過酷な物語は読みたくありませんでした。
3.11以後はずっとそうでした。

なのに、なぜか通りすぎることができず、分厚いそれを手に取り
訳者が村上春樹と知って、そうだったのか・・・と。
村上氏は3.11の後、いちはやく原発事故に対し毅然としたコメントを
寄せました。

「極北」はマーセル・セロー作。
チェルノブイリ事故の後、立ち入りが禁止されている汚染地で一人
生きていく女性の物語です。
著者は英国テレビ局の番組制作でチェルノブイリ近郊に住む一人の
女性を取材したことが下敷きになっているフィクションです。
村上氏は2010年の夏にこの小説を読んで「訳さなければ」と
思ったそうです。
つまり2011年に東北を襲った東日本大震災の前のことになります。

訳者があとがきで書いているように、福島とチェルノブイリとを
結ぶ太く熱く脈打つ悲痛な物語の動脈で、現実を照射するものであると。

訳者が村上春樹でなく、チェルノブイリや福島事故と関係のない物語で
あったなら、冷たく荒涼とした印象のこの本を手に取ることはなかったと
思います。

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