25年12月号の事務所通信 テーマ1:《数字にウソつかせていませんか? ~変動P/Lの考え方~》の解答例です。
まずは、紙面上の原価報告書をご覧下さい。
原価報告書の勘定科目を順に確認していきますと・・・・・
①商品仕入高、②梱包費、③販売人件費、それと倉庫の④賃借料と⑤光熱費です。
次に、この5つの勘定科目の性質を考えてみます。
まず、5つ全てに共通している性質は、「売上を獲得するために直接必要なコスト」であるということです。
さらに、5つの勘定科目を2つの分類に分けてみたいと思います!
2つの分類を行う際の着眼点は、『売上の増減によって、そのコストも連動して増減するかどうか』です。
そうしますと、①の商品仕入高、②の梱包費は商品が売れれば売れるほど増えていくコストです。
一方で、④倉庫賃借料は同じ倉庫を使用しており、特殊な契約でない限りは、ほとんどの場合は毎月定額です。
⑤倉庫光熱費も、売上の増減に関わらず、(光熱費は季節により変動はいたしますが・・)一定額より減少しません。
残るは③の販売人件費ですが、これは少し判断の分かれる項目です。
売上が増えれば、販売員の残業も増える・・・ということは商品仕入高や梱包費と同じだ!と考えることもできます。
一方で、定時までの人件費は売上の規模に関わらず必要となるコストです。
このように悩んだ場合には、もう一つの観点を加えます。
それは・・・『売上がゼロの時に、そのコストが発生するのかどうか』です。
そうしますと、販売人件費については、残業代が通常人件費に比較して大きな割合を占めないような通常の場合は
④と⑤と同じようなグループに分けれると思います。
そうしますと、①~⑤のコストは、2つの分類に分けることが出来ました。
①と②は、変動費(売上の増減によって変動するコスト)、③~⑤は固定費(売上の増減に関わらず必要なコスト)となります。
これを基に経理部長さんの報告をもう一度聞いてみると、違和感が生じます。
売上総利益率の70%とは、固定費も含んだ割合なのです。
売上が増えても、それに連動して増えるわけではないコスト(③~⑤)も含んだ状態では、適正な必要売上高は算出できません。
売上と変動費に着目して算出される儲けを「限界利益」といいまして、売上総利益との関係は次のとおりです。
売上-変動費=限界利益
限界利益-固定費=営業(経常)利益
売上-売上原価=売上総利益
売上総利益-販売費及び一般管理費=営業(経常)利益
いかがでしょうか?売上原価と販売費及び一般管理費に含まれる項目を変動費と固定費に分類しなおしただけですので、
当然営業(経常)利益はどちらも同じ数値となります。
それでは、紙面の例を再考してみます。
売上高5,000万円に対して、変動費の合計は①商品仕入高1,000万円と②梱包費50万円の合計額の1,050万円ですので、
限界利益は3,950万円、限界利益率は79%です。
固定費は売上原価1,500万円から上記変動費を控除した残りの450万円と販売費及び一般管理費2,000万円の合計ですので、
2,450万円です。
そうすると、営業利益は3,950万円-2,450万円=1,500万円となり、紙面の計算例と一致いたします。
必要な営業利益は、あと2,000万円ですので、2,000万円÷79%=2,531万円となり、経理部長の報告数値と差異が生じます。
(いずれにしても目標営業利益が高すぎるのでは・・・という感想が聞こえてきそうですが・・・。)
今回の例では、必要売上高の差額は326万円でしたが、もっと倉庫の賃借料が高い場合はどうだったでしょうか?
販売費及び一般管理費に変動費が含まれていることもあるでしょう。
「どちらの方法でも最終的に算出される営業利益は一緒」
・・・ならば、経営判断に使える資料にしてみられてはいかがでしょうか?
経理を「集計作業」にしてしまっては、
せっかくの経営会議で意図せず数字にウソつかせてしまっては、
非常にもったいないと思います。
田村