「ローライのフィルム」を使う、
銀塩とデジタルを「空」に喩えてみる
ー 穏やかなどこまでも澄み切った空と、気流の乱れで変化を孕む空 ー
ドイツのローライ(Rollei)から、モノクロフィルムが発売になりました。
ローライといえば、二眼レフカメラメーカーの元祖です。かつて超小型レンジファインダーのローライも人気機種でした。その「ローライがフィルムを発売!」というニュースは、デジタルにより一変してしまった写真界では、久しぶりの明るいニュースになりました。
今月15日発売の『コマーシャルフォト』12月号に、ローライブランドの新フィルムの概要が報じられ、私も作品を2ページ(P.104~105)で提供しています。
実は『コマーシャルフォト』誌をはじめ、いまアート系や大御所写真家の間では「フィルムを残したい」という気運が高まりつつあります。結論としては、私たちのような「アナログとデジタル」の両方を知っている世代が「フィルム」を残そうと努力しなくては、本当にこのままフィルムが消えてしまうかもしれない…という危機感があるからです。
来年の写真界はきっと「フィルムを残そう」という気持ちがさらに新しい動きとなっていくのではないでしょうか。
さてローライの新しいフィルムは、私が長年愛用していたドイツのAgfaフィルムがブランド替えをしたものです。ラインナップは、R3(10~6400の可変感度)、INFRARED(赤外線400)、PAN 25、ORTHO 25、RETRO 100、RETRO 400の5タイプですが、PAN25はかつて世界で最も微粒子といわれたフィルムです。このPAN25とINFRAREDを使って、金春流の能楽師、金春穂高氏の翁(白式)を撮らせていただきました。
金春穂高氏とのコラボレーション作品は、現在NYで開催中の個展『Men at Dance-from Noh to Butoh』で発表していますが、メインの機材はHasselblad H-1とPhase-ONE(中判デジタル)の組み合わせです(協力:イイノ・メディアプロ)。 このたび4年ぶりにフィルムでも撮影をしてみて、銀塩カメラを使うプロセスがいかに複雑な難行だったか、改めて気づいた次第です。
撮影後、フィルムで撮ったものと世界最高級の中判デジタルで撮ったものを比較してみて、それらが同じ画像のようで、別物であることも改めて発見しました。
デジタルでの作品はコンディションがよい状態で撮影すれば、色調といい、コントラスト、鮮鋭度から階調まで、すべてにおいて最高のバランスが再現され、あまりにも完璧です。一方、銀塩フィルムでの作品は「粒子」の存在が独特の効果になっています。
この違いを「空」に喩えれば、デジタルでの完璧な作品は、雲も風もないどこまでも穏やかに澄み亘った空だとすれば、アナログは気流の動きに揺れ、変化を孕んだ空かもしれません。
デジタルでは「静」を、アナログでは「動」を感じるのも、粒子の存在によるものなのです。
そう思うと、粒子こそ、かつては写真のいのちだったのだと、改めて写真の過去を振り返りながら、どちらも写真の未来においては、存続してほしいと願う気持ちがますます強くなっていきます。
私が今回、金春穂高氏の「翁」を撮った作品でも、空をバックに翁舞いを演じてもらいました。
そこにフィルムならではの、粒子に秘められたいのちと「動」が感じていただけたらと願っています。(作品は『コマーシャルフォト』12月号にてぜひご覧ください。)
伊藤美露
2007/11/18
☆☆☆☆☆ NYにて伊藤美露 個展「能から舞踏へ」開催中 ☆☆☆☆☆
"Men at Dance - from Noh to Butoh by Miro ITO:
Japanese Performing Arts, Past and Present"
開催場所: The NY Public Library for Performing Arts
(Plaza Lobby-Steinberg Room), 40 Lincoln Center Plaza, NYC, NY 10023
開催期間: 2007年10月15日から2008年1月5日まで
開館時間: Tues, Wed & Fri: 11 to 6; Mon, Thurs: 12 to 8; Sat: 10 to 6
http://www.nypl.org/research/lpa/
☆☆☆☆☆ 日本図書館協会選定図書 ☆☆☆☆☆
『魅せる写真術 発想とテーマを生かす撮影スタイル』
著:伊藤美露 定価 : 2,079円 B5判/160P/オールカラー
ISBN 978-4-8443-5921-0
発行:株式会社エムディエヌコーポレーション
☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
『コマーシャル・フォト』 2007年12月号
■2007年11月15日発売
■B5 版 定価 1,650 円(税込み)
■発行:玄光社
銀塩とデジタルを「空」に喩えてみる
ー 穏やかなどこまでも澄み切った空と、気流の乱れで変化を孕む空 ー
ドイツのローライ(Rollei)から、モノクロフィルムが発売になりました。
ローライといえば、二眼レフカメラメーカーの元祖です。かつて超小型レンジファインダーのローライも人気機種でした。その「ローライがフィルムを発売!」というニュースは、デジタルにより一変してしまった写真界では、久しぶりの明るいニュースになりました。
今月15日発売の『コマーシャルフォト』12月号に、ローライブランドの新フィルムの概要が報じられ、私も作品を2ページ(P.104~105)で提供しています。
実は『コマーシャルフォト』誌をはじめ、いまアート系や大御所写真家の間では「フィルムを残したい」という気運が高まりつつあります。結論としては、私たちのような「アナログとデジタル」の両方を知っている世代が「フィルム」を残そうと努力しなくては、本当にこのままフィルムが消えてしまうかもしれない…という危機感があるからです。
来年の写真界はきっと「フィルムを残そう」という気持ちがさらに新しい動きとなっていくのではないでしょうか。
さてローライの新しいフィルムは、私が長年愛用していたドイツのAgfaフィルムがブランド替えをしたものです。ラインナップは、R3(10~6400の可変感度)、INFRARED(赤外線400)、PAN 25、ORTHO 25、RETRO 100、RETRO 400の5タイプですが、PAN25はかつて世界で最も微粒子といわれたフィルムです。このPAN25とINFRAREDを使って、金春流の能楽師、金春穂高氏の翁(白式)を撮らせていただきました。
金春穂高氏とのコラボレーション作品は、現在NYで開催中の個展『Men at Dance-from Noh to Butoh』で発表していますが、メインの機材はHasselblad H-1とPhase-ONE(中判デジタル)の組み合わせです(協力:イイノ・メディアプロ)。 このたび4年ぶりにフィルムでも撮影をしてみて、銀塩カメラを使うプロセスがいかに複雑な難行だったか、改めて気づいた次第です。
撮影後、フィルムで撮ったものと世界最高級の中判デジタルで撮ったものを比較してみて、それらが同じ画像のようで、別物であることも改めて発見しました。
デジタルでの作品はコンディションがよい状態で撮影すれば、色調といい、コントラスト、鮮鋭度から階調まで、すべてにおいて最高のバランスが再現され、あまりにも完璧です。一方、銀塩フィルムでの作品は「粒子」の存在が独特の効果になっています。
この違いを「空」に喩えれば、デジタルでの完璧な作品は、雲も風もないどこまでも穏やかに澄み亘った空だとすれば、アナログは気流の動きに揺れ、変化を孕んだ空かもしれません。
デジタルでは「静」を、アナログでは「動」を感じるのも、粒子の存在によるものなのです。
そう思うと、粒子こそ、かつては写真のいのちだったのだと、改めて写真の過去を振り返りながら、どちらも写真の未来においては、存続してほしいと願う気持ちがますます強くなっていきます。
私が今回、金春穂高氏の「翁」を撮った作品でも、空をバックに翁舞いを演じてもらいました。
そこにフィルムならではの、粒子に秘められたいのちと「動」が感じていただけたらと願っています。(作品は『コマーシャルフォト』12月号にてぜひご覧ください。)
伊藤美露
2007/11/18
☆☆☆☆☆ NYにて伊藤美露 個展「能から舞踏へ」開催中 ☆☆☆☆☆
"Men at Dance - from Noh to Butoh by Miro ITO:
Japanese Performing Arts, Past and Present"
開催場所: The NY Public Library for Performing Arts
(Plaza Lobby-Steinberg Room), 40 Lincoln Center Plaza, NYC, NY 10023
開催期間: 2007年10月15日から2008年1月5日まで
開館時間: Tues, Wed & Fri: 11 to 6; Mon, Thurs: 12 to 8; Sat: 10 to 6
http://www.nypl.org/research/lpa/
☆☆☆☆☆ 日本図書館協会選定図書 ☆☆☆☆☆
『魅せる写真術 発想とテーマを生かす撮影スタイル』
著:伊藤美露 定価 : 2,079円 B5判/160P/オールカラー
ISBN 978-4-8443-5921-0
発行:株式会社エムディエヌコーポレーション
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『コマーシャル・フォト』 2007年12月号
■2007年11月15日発売
■B5 版 定価 1,650 円(税込み)
■発行:玄光社
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