MIRO ITO発メディア=アート+メッセージ "The Medium is the message"

写真・映像作家、著述家、本物の日本遺産イニシアティブ+メディアアートリーグ代表。日本の1400年の精神文化を世界発信

「伎楽 仮面の道」間もなく完成 ~ 東大寺ミュージアムオープン

2011-11-23 23:05:14 | Weblog
9.11から10年、そして震災から8ヶ月経ちましたが、世界の大激動のただ中にあって、私自身、自らの非力さと向き合いながら、被災地の慟哭から見えてくる未来の希望を信じながら、その気持ちをいかに作品に託していくか、という挑戦の日々が続いています。

10年経った「9.11」のメモリアルデーには、「9.11と3.11をつなぐ」気持ちを、作品に結実させたいという誓いを新たにしました。私はといえば、NYに思いを馳せながら、日本の1300年前にタイムトリップをしていました。

ちょうど9月から東大寺の伎楽面のショート作品を制作し始めました。
伎楽については、かつて故・野村万之丞さんが復元された「楽劇 真伎楽」とワシントンのスミソニアン・フォークライフ・フェスティバルで出合って以来、「伎楽」に託された時空を超えた意義を読み取り、映像として作品化することは夢の一つでした。

伎楽は、アジア最古の仮面劇といわれ、日本には1400年前に伝来し、聖徳太子によって奨励されました。奈良時代に全盛を極めましたが、平安末期に衰退し、江戸時代には滅びてしまいました。その起源や伝来については謎が多く、伎楽が果たしてどういった芸能だったのかを、チベットやブータン、インド舞踊や中東の騎馬民族の踊りなど、アジア諸国の芸能にまで遡り、楽劇として復元されたのが野村万之丞さんでした。

私は、昨年の平城京遷都1300年を記念して開いた個展「光の道:祈りと芸能のシルクロード」(Canon Expo Tokyo)のために、東大寺の伎楽面を撮らせていただき、展覧会の後、作品を東大寺に奉納いたしました。それがきっかけとなって、今回、東大寺伎楽面の写真と野村万之丞さんの真伎楽面ならびに「楽劇 真伎楽」の写真をもとに、「伎楽 仮面の道」という作品を制作し始めることになりました。間もなく完成しますので、12月から東大寺ミュージアムにてご覧いただけるかと思います。

さて先月の10月10日、東大寺初の宝物館となる東大寺ミュージアムがオープンになりました。東大寺ミュージアムは、南大門を入った左手の東大寺学園跡地に建てられた「東大寺総合文化センター」内に設けられ、連日大変な賑わいを見せています。

オープニングの展示は、「奈良時代の東大寺」。東大寺の1300年前の至宝60点が集められています(2013年1月14日まで)。このミュージアムの最大の魅力は、現在、須弥壇が修理中の法華堂のご本尊「不空羂索観音立像(ふくうけんさくかんのんりゅうぞう)」と月光菩薩、日光の菩薩像が展示されていることです。

「不空羂索観音立像」は、法華堂内陣でのお姿とは異なり、光背や宝冠(現在修理中)で飾られておられない分、その堂々たる体躯から発散される圧倒的なパワーに息を呑まれる方は多いかと思います。

東大寺の中でも一番古く、東大寺の創建の歴史ともつながりの深い「不空羂索観音立像」の前に立つとき、1300年間受け継がれ、守られてきた聖なるもの、そこに捧げられてきた数多の祈りや歴史の重みと向き合わせていただける、何にも喩え難い尊い体験となります。
この観音さまならば、きっと聖武天皇の大仏造立の願いを叶えられたことでしょうか。

なかでも観音さまの智慧に溢れた眼に強く打たれました。観音さまの眼は世を憂い、かつまた人類の過去から未来を貫くすべての悲しみを見つめているようでした。

私は、観音さまの眼から溢れ出る智慧の光に、未来への答えを求める気持ちで頭を垂れ、深い祈りを捧げました。

さて同ミュージアムのロビーの映像コーナーでは、私にとって初の映像作品となった「大仏さまは生きている」をご鑑賞いただけます(東大寺へ寄贈)。
大仏さまとは、一体どういう仏さまであるかを、写真から作った動画により、映像詩として構成いたしました。ぜひご覧くださいませ。

http://culturecenter.todaiji.or.jp/museum/

1300年前に思いを馳せながら、世界の安寧への願いをこめて

伊藤みろ メディアアートリーグ
2011/11/23

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[ フォトエッセイ]
書名: 心のすみか奈良 いのちの根源なるものとの出合い
古寺・古社・古儀に学ぶ「いかに生きるべきか」のメッセージ
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定価: 2,000円(本体1,905円)ISBN: 978-4-270-00564-4
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