2007年がいつの間にか終わり、2008年が始まりました。
地球温暖化をはじめ、世界がひとつの危機的な転換期にある今、私個人の昨年といえば、ドイツ~アメリカ~日本と20年がかりで旅して求めてきたものが、実は日本文化の源にあり、長年の「見えない本物」をもとめた旅がひとつ終わった年となりました。
日本文化については、主に身体芸術を中心に、前衛から古典まで、これまで米国在住時より数えて5年がかりで取材をしてまいりましたが、それをひとつの形にできました。
★個展の作品55点がNY公立図書館の永久コレクションになりました。
昨年10月15日よりNYでの個展『Men at Dance - from Noh to Butoh:Japanese Performing Arts, Past and Present(能から舞踏へ)』は、NY公立パフォーミングアーツ図書館にて開催されています(2008年1月8日まで)。
http://www.nypl.org/research/calendar/exhib/lpa/lpaexhibdesc.cfm?id=474
http://www.jfny.org/news.html
国際交流基金の助成のもと、在NY日本国総領事館の後援を得て「NY舞踏フェスティバル」とのタイアップ展として、同図書館の主催にて実現いたしましたが、出品作品55点は、NY公立図書館の永久コレクションに寄贈いたしました。
撮影にご協力下さった舞踏家室伏鴻氏の「Quick Silver」、Sal Vanillaの蹄ギガ氏・KIK_07氏他の「inter-active」 、御能の世界からは観世流シテ方の武田志房氏の「高砂」、武田友志氏の「絵馬」、武田文志氏の「敦盛」、そして金春流シテ方の金春穂高氏の「翁白式」など、スタジオでの撮りおろし
によるコラボレーションの作品が、永遠にNYの公立図書館の収蔵品となり、今後、同図書館において教育・研究・展示目的のために、活用されることになります。
ご支援いただきました皆様に改めて深く御礼申し上げます。
★新連載『極意で学ぶ 写真ごころ』開始
昨年6月に上梓しました拙著『魅せる写真術』(MdNコーポレーション刊、日本図書館協会選定図書、ISBN 978-4844359210)にて、アナログからデジタル、アートからドキュメンタリー・広告の世界まで、写真家として培ってきた経験を次世代に託そうと、写真の教本を出版しましたが、この本の発刊がきっかけとなり、昨年11月号より『アサヒカメラ』誌(朝日新聞社)において連載が始まりました。
奈良の宗教行事から能狂言、古武道まで日本文化の中から世界へのメッセージを焙り出そうと、これまでの日本での取材活動を通して、日本はすぐれた「極意」の国であることも実感できました。数多の天才たちが人生のすべてを捧げ、技に託した「かたち」、かたちを超えたこころのあり方を「極意」として探り出しながら、写真のとっておきの技を伝授する講座になります。
モットーは「極意とは基礎なり」_。
デジタル機材の急速な普及により、写真を撮ることは趣味以上に生活に密着した習慣になってきましたが、写真が日常の「記念品」を創るならば、せめて絵を描く時のような「絵ごころ」ならぬ「写真ごころ」を持ってほしい、そんな願いをこめて、写真を撮る「こころ」の大切さを説いていきます。
日本やドイツで美学を学び、絵や写真を通して、美の世界に触れてきた私の持てるすべてを捧げる連載です。
よろしければご高覧ください。
★惜しまれる "The Last SAMURAI"、柳生新陰流前宗家・柳生延春師範逝去
日本文化の取材を通して出会ってきた中で忘れられないお方といえば、柳生新陰流・柳生延春前宗家です。昨年5月4日、88歳にて永眠されました。
(http://www.yagyu-shinkage-ryu.jp/yagyu.html)
戦前から戦後にかけて大転換した日本を古武道ともに生き、500年の道統を尾張の地に護り抜いた柳生延春師範の「武士魂」と兵法は、日本文化のかけがえのない文化遺産です。
私が撮影させていただいた時間はごく短く、前宗家の最後の二年間だけでしたが、前宗家には、まさに「極意の世界」の一端を見せていただきました。
前宗家がいつもおっしゃったお言葉は、
「きのうのわれに きょうはかつべし」____
88年間、どんなときも剣の稽古を欠かさなかった柳生延春師範の日々の鍛錬を支えたお言葉です。いまその言葉の重みを改めて感じるとともに、日本の失った「最後のサムライ」の喪失の大きさに、深い悲しみを感じえません。
延春師範の後を継ぐ柳生耕一現宗家の今後のご活躍を祈念いたすとともに、延春師範のご冥福を改めてお祈り申し上げます。
************************************************************************************************************************************************************
私も今年は、延春師範のこのお言葉を座右に置き、
「さくねんのわれに ことしはかつべし」
と、これまでの活動をもう一つ先に進めていきたい気概です。
とりわけ、奈良を中心に日本の身体を通した「奉納」や祈りの文化を、古代から現代まで世界へ紹介する仕事をより包括的にすすめ、2010年を次なる目標に挑戦を続けていきます。
今年もまた遠大な夢に向かって、さらなる研鑽を積んでいきたい所存です。
本年もどうかご支援のほど、よろしくお願いいたします。
2008年1月
伊藤美露
http://www.miroito.com
text and photo by miro ito, all rights reserved.
photo: sky over kamiuma, 1.1.2008
地球温暖化をはじめ、世界がひとつの危機的な転換期にある今、私個人の昨年といえば、ドイツ~アメリカ~日本と20年がかりで旅して求めてきたものが、実は日本文化の源にあり、長年の「見えない本物」をもとめた旅がひとつ終わった年となりました。
日本文化については、主に身体芸術を中心に、前衛から古典まで、これまで米国在住時より数えて5年がかりで取材をしてまいりましたが、それをひとつの形にできました。
★個展の作品55点がNY公立図書館の永久コレクションになりました。
昨年10月15日よりNYでの個展『Men at Dance - from Noh to Butoh:Japanese Performing Arts, Past and Present(能から舞踏へ)』は、NY公立パフォーミングアーツ図書館にて開催されています(2008年1月8日まで)。
http://www.nypl.org/research/calendar/exhib/lpa/lpaexhibdesc.cfm?id=474
http://www.jfny.org/news.html
国際交流基金の助成のもと、在NY日本国総領事館の後援を得て「NY舞踏フェスティバル」とのタイアップ展として、同図書館の主催にて実現いたしましたが、出品作品55点は、NY公立図書館の永久コレクションに寄贈いたしました。
撮影にご協力下さった舞踏家室伏鴻氏の「Quick Silver」、Sal Vanillaの蹄ギガ氏・KIK_07氏他の「inter-active」 、御能の世界からは観世流シテ方の武田志房氏の「高砂」、武田友志氏の「絵馬」、武田文志氏の「敦盛」、そして金春流シテ方の金春穂高氏の「翁白式」など、スタジオでの撮りおろし
によるコラボレーションの作品が、永遠にNYの公立図書館の収蔵品となり、今後、同図書館において教育・研究・展示目的のために、活用されることになります。
ご支援いただきました皆様に改めて深く御礼申し上げます。
★新連載『極意で学ぶ 写真ごころ』開始
昨年6月に上梓しました拙著『魅せる写真術』(MdNコーポレーション刊、日本図書館協会選定図書、ISBN 978-4844359210)にて、アナログからデジタル、アートからドキュメンタリー・広告の世界まで、写真家として培ってきた経験を次世代に託そうと、写真の教本を出版しましたが、この本の発刊がきっかけとなり、昨年11月号より『アサヒカメラ』誌(朝日新聞社)において連載が始まりました。
奈良の宗教行事から能狂言、古武道まで日本文化の中から世界へのメッセージを焙り出そうと、これまでの日本での取材活動を通して、日本はすぐれた「極意」の国であることも実感できました。数多の天才たちが人生のすべてを捧げ、技に託した「かたち」、かたちを超えたこころのあり方を「極意」として探り出しながら、写真のとっておきの技を伝授する講座になります。
モットーは「極意とは基礎なり」_。
デジタル機材の急速な普及により、写真を撮ることは趣味以上に生活に密着した習慣になってきましたが、写真が日常の「記念品」を創るならば、せめて絵を描く時のような「絵ごころ」ならぬ「写真ごころ」を持ってほしい、そんな願いをこめて、写真を撮る「こころ」の大切さを説いていきます。
日本やドイツで美学を学び、絵や写真を通して、美の世界に触れてきた私の持てるすべてを捧げる連載です。
よろしければご高覧ください。
★惜しまれる "The Last SAMURAI"、柳生新陰流前宗家・柳生延春師範逝去
日本文化の取材を通して出会ってきた中で忘れられないお方といえば、柳生新陰流・柳生延春前宗家です。昨年5月4日、88歳にて永眠されました。
(http://www.yagyu-shinkage-ryu.jp/yagyu.html)
戦前から戦後にかけて大転換した日本を古武道ともに生き、500年の道統を尾張の地に護り抜いた柳生延春師範の「武士魂」と兵法は、日本文化のかけがえのない文化遺産です。
私が撮影させていただいた時間はごく短く、前宗家の最後の二年間だけでしたが、前宗家には、まさに「極意の世界」の一端を見せていただきました。
前宗家がいつもおっしゃったお言葉は、
「きのうのわれに きょうはかつべし」____
88年間、どんなときも剣の稽古を欠かさなかった柳生延春師範の日々の鍛錬を支えたお言葉です。いまその言葉の重みを改めて感じるとともに、日本の失った「最後のサムライ」の喪失の大きさに、深い悲しみを感じえません。
延春師範の後を継ぐ柳生耕一現宗家の今後のご活躍を祈念いたすとともに、延春師範のご冥福を改めてお祈り申し上げます。
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私も今年は、延春師範のこのお言葉を座右に置き、
「さくねんのわれに ことしはかつべし」
と、これまでの活動をもう一つ先に進めていきたい気概です。
とりわけ、奈良を中心に日本の身体を通した「奉納」や祈りの文化を、古代から現代まで世界へ紹介する仕事をより包括的にすすめ、2010年を次なる目標に挑戦を続けていきます。
今年もまた遠大な夢に向かって、さらなる研鑽を積んでいきたい所存です。
本年もどうかご支援のほど、よろしくお願いいたします。
2008年1月
伊藤美露
http://www.miroito.com
text and photo by miro ito, all rights reserved.
photo: sky over kamiuma, 1.1.2008
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