


車庫のなかを見回すと、孵っていた5羽のヒナが全部下にいた。

ここに3羽いるのが分かるだろうか。左上の箱の角に1羽、箱の右下のアルミのハシゴに留まっているのが1羽、写真の右端に1羽。この右側に私の車があって、車の反対側に2羽いる。
実は、我が家の車庫は、ツバメの巣に親ツバメが出入りしやすいように、シャッターを下から70~80㎝開けたままにしてある。巣は高いところにあるので、この程度なら外から巣があることは気づかれにくいが、ヒナがタイヤの横にいると、ヘビやカラスやイタチに狙われてしまうのだ。
ヒナは5羽とも、ときおり羽をバタバタさせるが、飛び立つ気配はなく、何羽かはピョンピョン歩くが、全く動かないでただきょろきょろバタバタしているだけのもいる。
妻とばあさんと3人で「どうしようか?」と思案したが、いい案が思い浮かばない。
息子がまだ保育園のころに、巣から落とされたヒナを飼って、1羽は死なせてしまったが、1羽は無事に旅立っていった。だから、これも飼おうかと思ったが、さすがに5羽は無理だ。
それに、バタバタしているところを見ると、そろそろ旅立ちの時期かもしれない。巣を見ると、壊されているようすもなかったので、ヒナは自ら飛ぼうとして下におり、そのまま飛び立てないでいるのかもしれなかった。親ツバメはそんなヒナたちに、忙しく餌を与えては、車庫の周りを舞い舞いして警戒しているようだった。
そのまま見てばかりもいられないので、私は草刈りに行った。2時間ほどして戻ってくると、妻とばあさんが車庫の前で何やら話していた。何かと思ったら、道向かいの電柱の上に烏が1羽、ずっと留まっているのだという。たぶんヒナを狙っているんだろう。
そこで、車庫のシャッターを閉め、その代わりに、車庫の小さな窓を開けることにした。窓には防犯用のアルミの格子がつけてあるのだが、以前、ヒナが襲われた時に、緊急用にシャッターを閉めて窓を開け、ツバメが出入りしやすいように、格子を何本が取り払って、隙間を大きくしてあるのだ。これだとカラスは入りづらいはず。もちろんヘビやイタチは入れないし、猫は近所にあまりいないので心配はない。ただ、ツバメにしても狭いことは狭いので、一度窓枠に留まってからでないと出入りできない。すんなり出入りできないが、仕方がないので、そのようにした。
シャッターを閉める前に、妻が窓を開けにいったら、ヒナたちが怖がって、そのうちの1羽が窓枠に留まった。
「あ~、そこを開けたいのに~、どいて~」といいながら、そぉっと妻が窓を開けたところ、そのヒナがバタバタと羽を動かし、次の瞬間、す~っと外へ飛んでいった。
「やっぱり飛び立つ時期やってんなぁ」と妻と笑い合った。
シャッターを閉められた車庫では、勝手が違うツバメたちの鳴き声が続いていた。一度シャッターを少しだけ開けて覗いてみると、ヒナは箱の角に身を寄せ合っていた。ただ1羽だけが下にいたままだった。ケガでもしているのだろうか。
もう一度シャッターを下ろしたら、もう鳴き声はしなくなっていた。状況を理解したのだろう。もう夜になるし、今日はこれでいいだろう。
明日は何羽旅立っているかなぁ。