雨の鷹取山から降りてくると、田主丸町に行きつく。
田主丸町には有名な店がある。
人呼んで、鯉とりまあしゃん。
私等が小学生の洟垂れの頃から、バス旅行でこの街並みを通る度、バスガイドのお姉さんが、
「左に見えますのが、鯉とりまあしゃんのお店でございます。」
と白い手袋で指し示すのがお決まりだった。
それ程、有名人だった。
【鯉の巣】川魚料理専門の店だ。
現在は3代目が経営している。
と、知ったか風に書いてはいるが、実は初めて訪れる。
店の前には鰻の生け簀が。
店内に入ってすぐには鯉の生け簀。
「いらっしゃいませー」
これだもの。
鯉とり名人まあしゃんの雄姿だ。
使うは、伝統の漁方『鯉抱き』
多い時は、口や脇に数匹の鯉を抱きかかえて、川から上がって来ることもあったとか。
料理が運ばれてくるまで、暫しパネル展示に目をやる。
「お待たせしました。男気セット(2700円)でございます。」
えーっと、
ミニせいろ蒸しに、川魚の洗い、鮎の塩焼き、鯉こく、鮠の甘露煮、鰻巻き、鯉卵の煮物、鯉皮の酢の物、茶碗蒸し、プリン
いよっ!男気があるねえ。
ウヒヒ
オホホ
先ずは洗いから。
これは寒鮒だそうだ。
始めて食す。
よくある酢味噌ではなく、酢醤油で頂くのが、この店の流儀らしい。
ハム
!!
臭みも癖も全く無い。
淡白の中にも、上品な旨味があり、しかもコリッコリだ。
絶品!
鯉の洗い。
好物である。
これまた、全く癖がないのは、言うまでもない。
川魚への先入観をお持ちの方でも、その思いが180度変わってしまうと断言する。
肝心の鰻がボケてしまっているが、
アーン
もう、鰻君ったらぁ。
どうして君は、そんなに良い子なの。
ハム
ムシャ
田舎料理と侮ることなかれ。
どれもこれも、大変美味!!
50年来の宿願が、この日果たされた。