にざかな酒店

我が龍神第三話

さくさく進みますよー。という感じの第三話。
今回はさらにアバウトな感じの神様設定が。
では続きでどうぞ。
これは、雨が降る前の出来事である。
ここ三時間ぶっ通しで歩いて、それもミルファーナ側に歩くとかなりうっそうとして暗い森だ。そろそろ、泣き言の一つ聞こえてきてもおかしくはない。
それに、追っ手も追いついてきても良い頃だ。
追いついてこない理由をいくつか考えると、奴らは追っている側だが、実はサラに危害を加える気はない、とかだろうか。ならフーリンカ側に行っても良かったのだが…。もしかすると、どこかのお嬢の気まぐれ家出だったかもしれない。
ならば、俺についてこいなどと言うべきではなかったろうか。
と、ときどきぽうっと光るのは何か、それもサラの足のあたり…。
「もしかして、だが、お前…」
「回復魔法かけながら歩いてるんだよー…」
どうりで口数が不自然なほど少ないと思った。やっぱり俺はどうともないがハードだったのだ。
「ちょっと休憩するか。」
と言ったのにサラはむしろしょぼんとしている。
「うう、ごめん…」
追われてる割にはのんきな感じだったが、やはりそれなりに訳はあるのだろうか。
ふむ、実はこっち側にあっさりシフトした訳、というか、ご褒美的なものがこっち側にはあるのだが、話すか。
「休憩したら、もう少し歩くぞ。夕方、夜頃にはつくと思うが、実はこっち側にはちょっとした天然温泉がある。」
温泉!?と、案の定はしゃいだ声だ。
が、なんか今、はもった声じゃなかったか?
「まあでも、一応朝まで入るのはガマンしろ。朝は俺はなかなか起きんからな」
本当?といぶかしまれるかと思ったが、意外と信頼されているのか、まだ若干きらきらした顔だ。
「風呂には入りたいだろう、何せ、道自体ほこりっぽいし、時々嫌な風も吹くしな」
「でも、追いつかれないかな…」
「奴らに追いつく気があれば、もうとっくに追いついてはいると思うぞ。それに、気になっていたんだが」
追っ手の格好は白っぽく、それも妙に光った服だ。騎士か、神官のたぐいのように見えるのだが…。
追求して良いものか。
「お前は何を隠してるんだ?」
「んー………と………説明が、ちょっと…疲れてて頭も動いてないし、そのうち解ると思う…けど」
「なら、休憩してからでいいか。まあ座れ。」
適当に葉っぱを集めた上から、布をしいた。
俺もこいつと会う前にした仕事で若干疲れている。
あのとき、こいつに投げさせた荷物が、実は中身血まみれの服とは。
追っ手より俺の方が明らかに不審人物なことは間違いない。
が、しかし、追っ手はこの時、確実に気を抜いていたのだ。サラとであった俺が、どうやら大酒飲みではないようだということに。
それに、この時、サラが隠してた理由が、ミルファーナに行こうとすれば、力をある程度なくす理由があるということ。
「ミルファーナ…といえば、だが。お前はレメティーナ人だから、アレを知らんのか」
きょとん、とサラが首を傾げる。
「あれ?」

「この大陸に伝わる、三人の女神の神話だ。三つの国にはそれぞれひとりずつ、女神がいて、それが今の国の名前になっているという」
「レメティーナは今は割とやおろずの神様だよ?」
「なんだ、その、やおろずの神っていうのは」
さすがに国が違うと、俺も知らん事を知っているのだ。
「万物には精霊が宿っていて、それぞれに神様がいるって言う奴だよー。例えば、木とか葉っぱとかにも精霊や神様がいるとか、変わったところで、商売の神様とか、縁結びとかもあるし」
解らん世界だな。
「俺が聞いた話だと、長女のフーリンカは園芸好きで、変わった植物を愛しているうちに魔王の種まで育ててしまった女神、二女のレメティーナは理知的で、合理的な女神、三女のミルファーナは薄幸の女神、という感じだが」
「薄幸?」
「住民にだまされて、その地を去ったという話だ。住民はミルファーナの力を搾取しようとして、ミルファーナだけを悪く言った。」
サラにはいまいち、理解できないようだ。
「言う事聞かそうと思ったら、普通おだてないかなあ」
「住民は神の上にたちたかったみたいだな」
「っていっても、自分の国の女神の悪口って、そうとうおかしいよ?」
俺も正しいとは思わんが、これは根本的に理解が難しいようだ。
「常に守るべき住人から悪く言われている女神の気持ちとしては、放り出していく気持ちも解らんではない。俺も、この話は親からよく聞いた話だからな。ただ、この話の分からんのは、去ったはずの女神がなんで自分の悪口を聞くとすぐさまたたるのか、という話だ」
なんだ、その、すっごく困った顔。
「たたるのー?」
「たたるんだ、これが。」
ぽつ、と、顔にあたったひとしずく。そして遠くで雷鳴。
「ちょ、ちょっと、雨降ってきたよ!?」
「…これは関係ないんじゃないか?」
「神様のうわさ話駄目だよ!!さ、休憩したし雨防げるとこにいこうよ」
それもそうか、と俺たちは先を急いだ。
この話をよくした母が事故で死んだのは、案外この話のしすぎかもしれない。
だが、俺はその地を捨てた神のことが、どうしても嫌いにはなれなかったのだ。
信仰をなくし、文明の発達にむかった国。それが俺の人生に牙をむいても。
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