ヨルダン通信その6
<ラマダン編>
朝夕はめっきりと涼しくなってきたが、日中はまだまだ暑い日差しが降り注いでいる。今年は8月22日からイスラム恒例のラマダン(断食)が始まった。ほぼ1ヶ月間のラマダン中は夜明けから日の入りまで、一滴の水分も口にできない。
以前赴任していたトルコでは2日間、このラマダンを体験した。さすがに仕事に支障がある(日本庭園の手入れがはかどらない)ので、2日間で終了したが、食べ物のありがたさを身にしみて感じることができた。
ところで、トルコでは断食をしない人も僅かではあるが居た。レストランも開けている店もあり(堂々とは開けてはいないが・・・)、そこで密かに昼食することは可能だった。
しかし、ここヨルダンでは全くと言っていい程レストランの類は閉まっている。大型スーパーの中でもファーストフード店やレストラン街は日中は営業していない。
今年のラマダンが夏の暑い季節(毎年少しずつずれていく)で、なおかつヨルダンはトルコより緯度が低いので、ここ数年は相当過酷であろう。今回は最初から断食に挑戦するのは無謀だと諦めた。
とはいっても、断食をしている同僚達の前で公然と食べる訳にはいかない。職場に居る間はみんなと同じ様にラマダンを行う。作業時間がいつもより短縮されているので、終わるや否や、今まで歩いていた距離の半分程度をバスに乗り、アパートに帰宅してから遅めの昼食を採っている。
幸い私の住んでいるアパートは殆ど外国人ばかりなので、気が楽だ。朝も部屋できっちり(いつもより量も多く)食べているので、職場内でのラマダンもあまり苦にならない。
日本庭園の工事が始まっていれば、しっかり食べないと無理だろうが、予想通りというか工事はまだ始まらない。ラマダン明け(9月20日前後)の後にお祭り騒ぎの長期休暇があり、 本格着工はそれが終わった10月に入ってからだろうと考えている。
太陽が沈み夜になると、アパートの周りが急に騒がしくなる。それまであまり動かないでラマダンに耐えていた人々が食事をたらふく採って、ショッピングに街へ繰り出す。私も時々歩行者天国のある繁華街をうろつく。昨年も近くのホテルで過ごしていたので、ここスワフィーエ(私の住んでいる地域の名前で、トルコでも同じ名前の所があった)界隈は私の庭となっている。
《アパート近くの街並》
<作業編>
アブドゥーン日本庭園の滝組と池の護岸や飛び石等に用いる石の選定で、シリア国境近くのウンム・カイスと少し東に行ったマフラック、そして南の景勝地、砂漠と岩石群で有名なワディラム及び紅海に面した都市アカバに行った。
《ゴラン高原をバックにウンム・カイス遺跡にて》
昨年調査していたカラク及び死海近郊と今回調査した中では、日本庭園に適した石があり、なおかつピックアップしやすい場所はウンム・カイスだと思われた。ここの石を第一候補に選定し、わかり易いレポートを作成し市役所本庁に報告した。
様々な大きさの石が存在し、汚れも少なく少し丸みを帯びた味わいのある石だ。ただ、場所が有名な遺跡に近いので、採石の許可を得られるかが懸念材料である。だめでも他の候補地があるので、何とかなるだろう。
石張りや延べ段、タイル張り、砂利等の細かい石の選定はアンマン市内の石材店を数箇所訪れ、おおよその選定作業を済ませた。これに伴って、市役所本庁の女性技術者と工事方法や材料についての打ち合わせを重ねている。
《本庁の技術者と綿密な打ち合わせ》
同時にヨルダン人が工事の内容を把握できるよう、図面の様々な地点における断面図や詳細図を作成し、事務所のパートナーであるサウサンが私の図面をトレースし、アラビア語での図面作成をしてくれている。
《サウサンが私の図面をトレースしてくれた》
《トレース図面を元に距離を細かく測る》
たぶんラマダン中にはこれらを元に、工事業者が入札で決まるのではと考えている。ラマダン開けは1週間ほどの長期休暇があり、日本の正月の様に人々が帰省する。イスラム住民の大移動だ。休暇が明けて、気分も新たに日本庭園の本格的な工事に入りたいと考えている。
<観光編>
石の調査で紅海に面している港町アカバに行ったが、ここはヨルダンきってのリゾート地である。石の調査が終了してから、昨年日本から一緒に赴任した、青年海外協力隊員のKさん宅にお邪魔し、アカバでのシュノーケリングを楽しんだ。
珊瑚礁の海中を泳ぐ熱帯魚を見ていると、インド洋に面したタンザニア、ダル・エス・サラームの美しい海での思いが蘇ってきた。アカバではもちろん恒例?の刺身も美味しく頂いた。
《アカバ港からイスラエルの都市、エイラートを間近に臨む》
《アカバ港を散歩する親子》
アカバで過ごした後、私がヨルダンで今一番気に入っているペトラへ向かった。昨年に行かなかった場所を歩いたが、岩登りの技術が必要な所もあり、登山家としての血が騒ぐ。雄大な自然の中で、久し振りに納得いく登山が楽しめた。
《朝のエル・ハズネ》
《兵隊さんと記念撮影》
《ぺトラで出会ったレバノン美人》
《ペトラの警察官》
幸いアンマンにある私のアパートからはペトラ行きの長距離バスの便が良いことを知った。日帰りも十分可能である。これから機会ある度にペトラに行って、傑作を撮りたいと思う。
以前に頼まれ庭木の剪定をした家で、娘さんの結婚披露宴に呼ばれた。イスラムでは男性と女性は別々の場所で祝う。女性の場所は歌や踊りで賑やかなのだが、男性の方は妙に静かだ。
まず新郎の親戚を新婦側の親戚が出迎え、新郎が参加者にキッスでのお出迎え。 その後、キュネフェ(クナッフ)という餅のようなお菓子(トルコでも一般的なもてなしのお菓子)とジュース類が配られ、一斉に食べる。
《新郎がキッスで出迎える》
《キュネフェ(クナッフ)という御餅のようなお菓子をみんなに配る》
最後は全員でイスラムのお祈りを捧げ、お開きとなった。女性の披露宴会場も見たかったのだが、テントと布で覆われていて中を見ることはできなかった。 残念!
ここはトルコのように、住まいの近くに青空市場が無いが、アブダリというバスステーションに毎週金曜日、市が立ち出かけてみた。古着や靴類が多く出品されている。安価で良い品物が手に入るので、非常に便利な所だ。
《アブダリで金曜日に開かれるスーク(青空市)》
《古着や靴、雑貨が売られている》
いつもは日本と同じような大型スーパーで買い物することが多い私だが、久しぶりに活気のある青空市を味わうことができた。