めるつばうのおもうこと

めるつはミーム機械としてばうを目指します。

『息吹』テッド・チャン

2010-03-11 14:03:43 | book
買っておいてなかなかよまなかったのだけれど。
テッド・チャン。
世界観というものが面白い。確か、『バビロンの塔』もそうだった。
ちょっと閉塞感もありかな。
空気がそこの”人”を生かせている。肺のなかの空気が主原動力。

最初に書かれているのが「空気から生命を得ているとうのは間違い」
と言う出だし。
そこの人たちは空気を肺にいれてその圧力で生きているらしい。
肺は肺交換所みたいなところがあって。そこで空になった肺を
入れて満杯の肺を手に入れるとか。
人間以外の書き方がとても精緻だと思う。

脳という機能を調べてみるために自分の脳を分解するという行為。
脳を吊り出してしまうと、身体と脳の位置関係はどうなるのだろう。
そのあたりの感覚も面白い。意識の座である脳が宙吊りにされそれ
を身体についている目が観察していると言う風景。
さて、意識はどこに?記憶装置の考え方も、とても面白い。死ぬ事は
無くても、停止後再起動すると別人格になってしまうというのも
楽しい。まるでOS上に走るプログラムが人格といっているようだ。
そして気がついてしまう。”空気から生命を得ている”のではなく
圧力差であると。気圧差。まるでエントロピー増大則。熱力学的な
宇宙の終焉を予測させる。
このあたりの考察も面白い。熱力学的な死と圧力差がなくなる死。
どちらもエントロピーの問題といっていいのだろう。

それから外宇宙(というか閉じられた空間の外)に思いを馳せていく。
外にはまだたくさんの気圧差があってそしていずれはこの終焉して
しまう彼の宇宙の外からだれかが気圧を求めてやってくるだろうと
言う予測。そして、その誰かが彼の記述を読むことを期待している。
そしていまある存在の喜ばしさを伝えようと。
さて前回のチャンの物語は決定論的な世界観だった。どうあがいても
それらは決定されていると。
今回のこの最後は、輝ける未来ではないけれど、そこに在るという
そのこと自体を大切に思うという。
額面どおりに受け取っていいのだろうか?
まだわからない。
『地獄とは神の不在なり』をわたし的解釈に至るまで数ヶ月を要した。
まだかかるのだろう。

それは置いておいて、この人類たちは明らかに人造物だ。有機体ではない。
それを創った何者かがいるという示唆なのだろうか。
空気圧で生きていけたら楽しいかもしれない。

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