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楽しい授業がしたい♪

TOSS模擬授業技量検定で、
実践した授業を載せています。
楽しい授業を目指しています。

海雀 (高山佳己氏の追試)「対比」と「イメージ」で詩の主題に迫る授業 

2011-01-02 | 日記
TOSSランド/国語/5年生/読む/詩文/

TOSS静岡SS合宿12月26日 D表検定を受検した授業です。

高山佳己氏「海雀」修正追試 対比とイメージで主題に迫る。 

TOSS静岡ML推奨
TOSS静岡/学生サークル飛翔・ゴールデンエイジ/一向/bright/ツバサ
生谷 あや(26級)
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1 主張
不確定要素をできるだけ排除し,大自然と人間の対比で詩の鑑賞を深める、高山佳己氏の授業追試≪HP≫。
詩の情景理解を簡潔にすすめ、5分間の中で、詩の情景を理解し、対比で主題に迫る授業。



2 教材について
五年国語上 光村図書 「海雀」北原白秋


3 高山氏の海雀の授業の発問の流れ

高山氏が2004年8月14日の第3回伴一孝講座で、伴一孝先生との同一教材模擬授業対決を行われ、その模擬授業の発問・指示・説明を公開されたTOSSランドを参照。

1、音読
指示1 2回音読をさせる

2、「海雀、海雀、銀の点点、海雀、」の検討
発問1 繰り返しの言葉を聞く
発問2 言い換えている部分について問う
発問3 繰り返し出てくる言葉のものが1つなのか、複数なのかを問う
発問4 どうしてそれが分かるのかを問う
発問5 話者の位置を問う
発問6 どうしてそれが分かるのかを問う

3、「波ゆりくればゆりあげて、波ひきゆけばかげ失する。」の説明
説明1 詩の中で分かりにくい部分を簡潔に説明する

4、対比→主題
説明2 何と何が対比されてあるかを言いきる
指示2 対比されているもの のイメージを列挙させる
指示3 それぞれのイメージをざっと読ませる
発問7 対比される片方を主題になっているもの置き換え、そうするともう一方の対比されたものは何を表している
かを問う
説明3 北原白秋について、この作品の背景について。


4 子どもへの実践からの学び

(1)授業を受けた生徒・児童について
第1回:中学2年生(1人) 第2回:小学校6年生(5人) 第3回:小学校5年生1(人) 第4回:中学校1年生(1人)

(2)子どもの反応を受けての修正
1:第一指示について
実践してみると、指示1では、「え?」と反応する子、「座って読むの?」と反応する子がいて、不安げな顔をしている子戸惑っている子が多かった。そこで、「2回読んだら座ります、全員起立。」の指示でやってみた。すると、スムーズに始められる。しかし、1回しか読んでいない子がいたり、「もう一回ですか?」という子もいた。そこで「1回読んだら座ります」の指示にしようとも思ったのだが、1回では理解が読みが少なすぎる、リズムもつかみづらい、そこで、高山先生が2回読ませておられるように私も2回読ませたい。且つ、1回目を座って読ませることにより、誰がプリントを持っていないか、読めていないか、などを見渡しやすく対応しやすい。いきなり立たせてしまうと、見渡しづらいので、後ろの方で困っている子ややっていない子に気付きにくい。そこで、「座って1回読みます。」と第一指示をして、ほとんどの子が読み終えたところで、第2指示「立って1回読みます、読み終わったら座ります。」をする。

2:高山氏実践の発問2銀の点点について
サークルでの検討でも、「海雀」だと答える人、「海雀の模様だ」と答える人、「海雀の目だ」と答える人様々であった。5先行実践のまとめにも記す向山実践では、銀の点点が何かということが討論になっているほどである。つまり、意見が分かれる不確定要素のある部分だと考えられる。そこで、この授業の主張でもある「不確定要素をできるだけ排除し」に沿い、この発問を割愛する。

3:発問3・4・5・6について
子どもの反応がとてもよかった。答えたそうにする子どもが多かった。テンポよく聞いていき、巻き込みたいところである。発問4で、理由を探す時、「詩の中に証拠となる部分があります。そこに線をひいてごらん。」というと、子どもは詩を一生懸命読んだり、見たりするようになったので、その指示を入れる。

4:「波ゆりくれば…」の説明
高山氏の授業では、「漢字に直してみます」「主語などを補ってみます」と丁寧に扱っておられる。しかし、5分の中におさめるのが厳しかったので、ここを短縮する部分にした。図を見せて、少ない言葉で説明をするように変更した。実践のあと、子どもに波のところの説明わかった?と尋ねると、わかった、なんとなくわかったという反応だったので、大丈夫かと思う。

5:対比
高山氏の授業では、「この詩で対比されているのは、海雀と波です。海雀と波の対比のイメージをノートに書きなさい。」である。言葉が削られていて明確である。しかし、子どもは「対比」の勉強をしたことがない子ばかりであったため、「対比のイメージを書きなさい」と言っても、何を書いていいのか分からない、という状況だった。学生サークルでもそうだった。そこで、「この詩で対比されているのは海雀と波です」の後に、「例えば、海雀は小さい、それに対して波は…?」と尋ねると子どもは容易に答えることができた。「このように、海雀と波を比べて、対比しているイメージをノートに書くのですよ。」というと、子どもは考えられるようになった。考えるべきことは分かるようになるのだが、すぐには思いつけない子が多かった。検定でのリズムとテンポでは子どもをあてに行けなかった。考える時間が必要だった。更に、考えるヒントを加える必要もあった。詩の言葉を参考にしてごらん、や、動きはどうかな、などである。
☆実際に子どもから出た意見:銀⇔白  弱い⇔強い 見たことがない⇔見たことがない  多い⇔少ない
             静か⇔うるさい       元気がない⇔元気がある    動かされる⇔動かす
次に、「先生も考えてみました。」と例示をし、読ませると、子どもは「あ~!」と反応する。なるほど、といった様子だ。

6:対比⇔主題に迫る
「海雀を人間とします。そうすると、波は何を表していると言えそうですか。」ここが更に難しいところである。しかし、子どもは対比のイメージを考えた時にしっかり思いを巡らせており、苦しいなかも、答えがでてくる。
徳に中学生の2人はきちんと意見が言えた。しかし小学校6年生の子たちは、ん~わからない、と考え付かなかった子もいた。
☆実際に子どもから出た意見:地球・地面・ジェットコースター・家族・火
子どもの発想に驚いた。子どもたちは自分なりに理由を持って、対比から発想をしていた。対比を使って考えることによって、思考は深まっていた。しかし、主題に迫ることができているのか、というところには課題が残る。子どもたちが世の中や荒波、逆境、人生などと人間のことを言っているのだと気付けるような、対比のイメージの提示が必要である。人間の無力感や暗さが子どもに伝わるようにしたい。



5 授業の流れ

1、音読

指示1 「海雀」プリントを出します。座って、一回読みます。どうぞ。
立って一回読みます。読み終わったら座りなさい。全員起立。 
座って一回、立って一回、と動きを入れることで、今誰が一回目を読んでいるか、2回目を呼んでいるかがわかる。プリントの色をカラーにしておくことで、誰がプリントを出せていないか、一目でわかる。最初に座って読ませることで、立たせて読むよりも全体を見渡しやすい。早く読み終わった子には、座っても読むように言う。座っても読んでいられた子をほめる。

2、「海雀、海雀、銀の点点、海雀、」の検討 

発問1 この詩の中で一番たくさん出てくる言葉は何ですか。
分かった子で言わせる。「分かった子で言います。さんはい。」
・海雀です。
説明1 これが海雀。 (画像を見せる)
発問2 海雀は1羽だけですか。それとも複数いるのですか。 
一羽だけだと思う人?複数いると思う人?    ・複数います。
発問3 どうしてそれが分かるのですか。 
詩の中に証拠となる部分があります。見つけて、線を引きます。どこにひきましたか。同じところにひいた人?まだあります。他のところに引いた人?それも証拠になりますね。
発問4 海雀は話者の近くにいますか。遠くにいますか。
2名、列指名する。「同じように思った人?」と全体にも聞いて巻き込む。・遠くにいます。
発問5 どうしてそれが分かるのですか。
発問4からテンポよく聞いていく。列指名2人。

3、「波ゆりくればゆりあげて、波ひきゆけばかげ失する、」の説明

指示2 赤字を読みます。「波ゆりくればゆりあげて」
   上下する波に揺られて、海雀は波の頂点へのぼる


   読みます。「波ひきゆけばかげ失する」
   次の瞬間波がぐっと下がり、海雀は波の後ろ側へ姿を消す


4、対比

指示3 この詩のなかで、対比されている言葉は海雀と波です。
例えば、海雀は小さい、に対して、波は?どうですか。(大きい) 
このように、海雀と波で、対比するイメージをノートに書きます。

「海雀のイメージをざっと読みます。」 ……
「波のイメージをざっと読みます。」 ……

発問6 海雀を人間とします。そうすると波は何を表していますか。 
4名を列指名。    ・人生  ・運命  ・社会の荒波  ・逆境
説明2 北原白秋。海雀を書く3年前に白秋は恋愛事件を起こします。そして次のように書いています。
「私は独りになり,私の前後四方は真っ暗になった。私は幾度か海を渡って旅をした。
苦しかった。今思えば涙が垂れる。」 
その後,神奈川県の三崎に住み,心をいやし,そこでつくった詩が「海雀」です。 


6 先行実践のまとめ

【原実践】○向山洋一先生「トークライン №54」「トークライン №55」1986年の実践より
1  音読    
2  詩の技法の確認(リフレイン 文字の配列 定型詩)    
3  設定の確認(作者 話者)  
4  討論(『銀の点点』とは、海雀の模様か、それとも海雀が銀の点点のように見えたのか、それとも泡が光っている様のことなのか。)
5  討論(「ゆりあげて」と「かげうする」は、海雀のことを言っているのか、波とか泡のことを言っているのか。)
国語に関する圧倒的な教養が見え隠れする中、学習技能の指導も同時に行われている。
途中で論点が集約されている。最後の教師の解はまさしく名人芸。
「かげうする」「飛んでいるか、浮いているか」の解釈については限定せず。
○浜上薫先生『「分析批評」の授業づくり2 5年の実践』1990年刊
1  音読   
2  設定の確認(海雀の数)
3  討論(海雀の飛んでいる場所)
4  詩の技法の確認(比喩 定型詩 リフレーン 対比 文語調)
5  評論文   ○内村博幸先生『詩を「分析批評」で教える』(石黒修編)2001年刊
1  音読(暗唱)
2  詩の技法の確認(文語調 定型詩 リフレイン)
3  設定の確認(海雀は遠くにいるのか、近くにいるのか。)
4  討論(海雀は飛んでいるか、浮いているか)

○山川亨先生(TOSSランド)
1  海雀の情景を図に書いて検討する。   
2  「波ゆりくればゆりあげて」を図に表す。
3  「波ひきゆけばかげうする」を図に表す。
○加藤剛史氏(TOSSランド)
1海雀は1羽か2羽か
2話者の位置は 遠くか近くか
3北原白秋は幸せだったか不幸だったか

○小宮孝之先生(TOSSランド)
1題名はなにか
2作者はだれか
3海雀はどこにいるか
4波はあるか
5今の言葉で書かれているか、昔の言葉か
6この詩を読んで気付いたことは
7波ゆりくればとは波がどうなることか
8ゆりくればとは、何の言葉の組み合わせか
9何が何をゆり上げるのか
10かげ失するとは
11話者に位置  12かげ失するとは、何がどうなることか
13海雀は何羽いますか。  14海雀は飛んでいますか。
15かげとはなんですか。 
16「かげうする」とは何がどうなることか。
17「波ひきゆけば」どうして「かげうする」なのか
18この詩は昼間の様子ですか、夜の様子か。
19「銀の点点」とは何がどう見えていることをいっているのか
20「点々」ではなく「点点」とかいてあるのはどうしてか
21海雀の並びかたは縦か横か ○松藤司先生 向山型国語 (2010年11-12月号)p14.15 
1気付いたこと、わかったこと、思ったこと
2何音か
3はじめ・おわり、となかを比べて違いをかく
4一羽かたくさんいるか
5話者の近くにいるのか、離れているのか
6海雀は海面に浮かんでいるのか、海の上をとんでいるのか
7「波~あげて」はいくつの区切れるか
8何をゆりあげるのか
9かげとはなにか


○森竹高裕先生(TOSSランド)
1銀の点点とは何のことか
2海雀は何匹か
3絵で描くとどうあらわせるか
4話者の位置は
5波の高さは
5海雀は陸から遠いか近いか

6 先行実践と比べた高山氏「海雀」授業の特徴


(1)大自然と人間とで対比させていること(提案性) 他の授業には見られない
(2)不確定要素はできるだけ排除され、また授業によって情景が確定されていくこと。
(3)模擬授業用の授業であること
(4)向山氏の実践で討論になっている「銀の点点」が海雀の模様か、海雀自体なのか、ということを海雀自体であるとして授業を進めている。
(5)対比についての知識があることを前提


7 対比で主題に迫る

☆一般化
①○と△はどんな違いがあるか《対比の列挙》 …海雀と波
②作品の中の○と△は何を表しているのか《対比の理由》…海雀は波に抵抗することはできない。波にもまれゆられている。
③作品は○と△によって何が言いたいのか。《作品の主題》…人間が世の中でもまれ浮き沈みしている様子を海雀と波になぞらえている。
向山洋一氏が「対比」を子供たちにどのように説明されているかを見てみる。 ☆対比の定義
①対比とは例えば「大きいに対して小さい」「先生に対して生徒」というように反対の組み合わせになることばです。(「春」)
②対比は、反対の場合もあるし、同じようなことを言っている場合もありますね、それをノートに書きなさい。(「小さなみなとの町」)…類比
③先生と生徒という反対の言葉、お父さん、お母さん、あるいは海と山とかいうように反対の意味で使われているとき「対比」といいます。            


8.【参考文献】向山洋一全集21プロは一文で一時間を授業する、36子どもが知的に燃える「詩の授業」
向山型「分析批評」の授業 向山洋一氏監修 向山洋一教育実践原理原則研究会著・一文を知的に授業する 向山洋一氏監修 向山洋一教育実践原理原則研究会著・文学教材キ―発問活用=小事典 向山洋一編
向山型国語 (2010年11-12月号)p14.15 松藤司氏
【TOSSランド参考HP】
海雀(北原白秋) 高山佳己氏
・「海雀」で辞書を引く 梶野修次郎氏 ・海雀(全ての語の辞書引きによる) 脇規洋氏
詩の授業~海雀(北原白秋) 三浦弘氏  ・「海雀」(5年上光村)授業案小宮孝之氏
詩の授業「海雀」上山留美氏      ・対比の使い方を詩「死んだネズミ」で理解させる 芹沢晴信氏
「きゅうこんのめがでた」「対比」で主題に迫る詩の授業。 齋藤奈美子氏
海の命の対比から主題文を書かせる 高橋博剛氏