みれいのみらいといま

みれいです。楽しかったことを残していけたらいいな。

【結婚しました】という件名

2020-06-22 11:09:06 | 日記
ベットに入りスマホをいじっていると、【結婚しました】という件名のメールが届いた。


高校生の時いじめにあっていた真美からだ。


私のLINEのアカウントも知らないので今どきメールというのが、いっそう懐かしい感覚にさせた。


メールの内容によると真美は今福岡にいて、この6月に結婚したという報告のメールだった。


私は電話番号から真美がLINEに登録しているかどうか調べた。

Mami Nakamuraで登録がしてあったので、アドレス帳から「友だち追加」をして

メッセージに


真美へ

お元気ですか?

結婚おめでとう



と打った。


その後、なんて書こうか…


手が止まってしまった。


ひとつひとつの謎を解かないと物語が先に進まないゲームのように、真美が結婚したことよりも、まず都内を離れて九州で暮らしていることが不思議に思えた。



真美は高校生のころ自宅から、いや自分の部屋からも出られない程の引きこもりだった。


その原因は私だったと思う。


私はいじめられっ子だった。


私は今から考えると信じられないくらいの引っ込み思案で、人見知りが激しく、周りの人間に恐怖を感じていた。


周りの人が笑っている意味や注意してくる意味が全く分からず、たびたび自分の感覚のズレをまがまがしく感じていたからだった。


高校生になってもクラスで誰とも話さず、孤立していると、あるグループから「カッコつけてる」とか「バカにした態度だ」とか言われるようになった。


上靴を投げつけてきたり、席にすわらせないといったいやがらせを受けていた。


やめてよ!と拒否したり泣いたりすればまだよかったのかもしれない。
けれど私はとにかく黙って、反応をしなかった。
そのことがなおさらムカついたのか、スカートを切られたり、トイレに入ると外からホースで水をかけられたり、どんどんいじめはエスカレートするようになった。


今だったらSNSを使った誹謗中傷やデマを流され、もっと精神的な負傷も大きくなっていたかもしれない。

その当時だったので、まあそれだけで助かったと思っている。


真美はそんないじめをするグループから「あんたもやれ」と言われていたそうだ。


真美は決して私に危害を加えることはなく、むしろそのグループに反抗して私を守ってくれることもあった。


次第に真美はグループの人たちを無視するようになった。


そんな彼女の態度に不満だったいじめグループは、ターゲットを私から真美に変えた。


私はいじめられなくなったが、真美は学校に来れないくらいにダメージを受けた。


いじめグループの企みで、好きな男の子からもいじめられたからだ。


私をかばったことで真美はいじめられっ子になってしまった。



彼女は学校を休みがちになり、とうとう登校拒否をした。



私は、彼女の家に度々訪問して、彼女と話をした。


何を話していたかは、はっきりと覚えてはいないけれど、好きなアイドルの話とか、スイーツの話題とか、たわいもない話ばかりだったと思う。


真美のお母さんの話では、その当時、私だけが唯一彼女の部屋に入れたようだった。


それから、高校卒業に必要な最低限の74単位をクリアし、真美はなんとか卒後することができた。



私は真美とは違う大学に入った。


私はこれまでの振る舞いを反省をして、周りと積極的に話しかけ、いろいろなことに無関心にならないように気をつけて過ごした。


そのおかげで2年にもなると友人も数多くでき、楽しい大学ライフを送っていた。


GWに入る前、ふと真美のことが気になってメールをしてみた。


そうすると、大学生にはなったものの、真美は相変わらず引きこもりがちな生活をおくっていた。


私は駅前でケーキを買い、久しぶりに会いった。


真美は元気そうで、ファッションとか外見が少し変わって、少しかわいくなっていると思った。


でもなんかちょっと違和感があり、彼女の内面の「不安」は隠しきれていない感じがした。



それでも、「変わろう」としている彼女の真面目さがかえって痛々しく思えた。


私が、大学生活で大きく変わるきっかけとなったのが、夏休みのアルバイト。


大学の仲間と応募した沖縄のリゾートバイトだ。


沖縄のリゾートバイトはとても人気だったので1人しか選ばれず、結局私だけが行くことになった。


内気な性格はすぐには治らないもので、初めて合う人ばかりの中、不安もあった。


けれど仕事だと否が応でも積極的にならなくていけない場面があるもの。


私は仕事に取り組むことで、引っ込み思案な自分を克服し、自然と今のように社交的な性格に変わっていくことができた。


それは、頑張った分バイト代という目に見える報酬を手にしたことで、さらに自信につながった。



真美にもリゾートバイトの話をしたら、関心を示したので二人で応募しようということになった。


リゾートバイトのサイト「リゾバ」で、「友だち同士で応募できる」という条件に絞って探し、ヒットした何件かに応募した。



そして四国のテーマパークでのお仕事に決まった。



テーマパークでは、ど派手な制服を着たり、オーバーな笑顔を絶やさなかったりする仕事だった。まるで、一日中、180度自分の性格と違う振る舞いをしなければならなかった。


でも強制的に笑ったり、大きな声を出していると、気持ちまで明るく影響されて、自分の中にもこんな自分がいるってことを発見できた。



しかし、真美はそんなアルバイトについていけないと、弱気になってしまい、体調が悪くなって途中で帰ってしまった。


私は、自分から変わろうとすることを放棄した彼女にがっかりして、少し腹も立った。



それから、私から彼女を誘うことはなかった。


また連絡を取り合うことも減り、交流も途絶えていった。




そんな、彼女が結婚をするという。




私のいじめがきっかけで、色々なことから逃げていた彼女が、自分のペースで少しづつ扉を開け、今新しい生活を始めているという。



私はLINEのメッセージに

真美へ

お元気ですか?

結婚おめでとう


の後


真美と話がしたい。


と打って送信した。



画面を閉じ、スマホを裏返して置こうとしたそのとき、


私のスマホがブーン、ブーンと振動した。