今日は『何もしたくない』からこのセリフにしました。このセリフは…
出版社社員4年目のヨルムは会社でチーム長からも代理(主任に等しい)からも嫌われて、邪険な扱いを受けていました。
ある日、自分が担当していたプレゼンを露骨に外されたヨルムは、交際相手のジェドンを呼び出して話を聞いてもらおうとしましたが、まともに取り合ってもらえなかったばかりか、その夜、距離を置こう、というメールを受信しました。そこへ残る唯一の理解者だった母親が急死してしまい…。
葬儀を終えたヨルムはまたビラと会社を往復するだけの毎日を繰り返していましたが、ある日の朝の出勤途中のサムソン駅で、降りようとした他の客にイヤホンを引っかけられたヨルムは無理やり降ろされてしまいます。そしてチーム長に遅刻のメールを打っている最中、足元に桜の花びらが舞散るのに手を止めました。それからふと外を見ると満開の桜が目に入ってきて春を感じた時、一枚のレジ袋が風で飛ばされるのを見ると、次の電車には乗らず、会社には行かない、と決心し、反対の下り電車に乗り込みました。
下り電車はよく空いていて、車窓には春の景色が流れて行きます。その景色を見たヨルムは、胸の中で、
「下り方面の平日午前の電車内は、同じ世界と思えないほど込み合ってなくて静かで穏やかだった。」
と呟きました。それからやや間をおいて一息ついたヨルムの呟きがこの言葉になります。
『沁みる夜汽車』という視聴者のエピソードを再現ドラマで紹介する番組があります。その中にこれとよく似ていて、通勤途中で思わず空いた下り電車に飛び乗って逃避行する話が紹介されていました。朝、都心へ向かう混雑率100%超えの電車から郊外へ向かう空いた電車を見たら、通勤者なら誰でも一度は、実行はしなくても、逆向きに乗って普段の生活から離れてみたい、と思ったことがあるはずです。
そう感じるのには何かしらの理由がありますから、ヨルムほどまで追い込まれる前に、もちろんきちんと許可をもらった上で一度逆向きの電車に揺られたほうがよいのかもしれません。