MY LIFE AS A DOG

ワイングラスの向こうに人生が見える

The Life of Emile Zola

2006年03月19日 16時17分32秒 | 映画
アメリカ映画「The Life of Emile Zola(ゾラの生涯)」(1937年作品)を観る。

フランスの作家エミール・ゾラが、かの有名な“J’accuse..!(我、弾劾す)”という記事をL’AUROURE紙に掲載したのは1898年のことである。このなかでゾラは、国家機密を漏洩した罪で終身刑となっていたユダヤ人大尉ドレフュスの冤罪を主張し、軍の上層部が真相を知りながらこの事実を隠蔽していると激しく糾弾する。いわゆる「ドレフュス事件」とよばれるものである。
ゾラの書いた記事は、ドレフュスを反逆者であると信じて疑わない一般大衆の怒りを買い、各地でゾラに対する激しい抗議運動が巻き起こった。

その後ゾラは、政府を侮辱した罪で逆に告発され、政府、民衆、そして裁判官をも敵に回して孤独な闘いを強いられる。わずかな支持者に支えられつつゾラは奮闘するが、結局裁判に敗れ、彼はイギリス亡命を余儀なくされる(その後帰国)。

1902年9月29日、ゾラは自宅で死体となって発見される。死因は一酸化炭素中毒といわれているが、これについては謎の部分が多く、未だ多くの者が暗殺説を支持していることは周知のとおりである。尚、ドレフュスの冤罪が証明され、彼が無罪を勝ち取るのはゾラの死後実に4年が経過した1906年になってからのことである。

この映画は「ドレフュス事件」の顛末をストーリーの中心に据えている。特にゾラが告発されて以降の法廷シーンはかなり見応えがあり、ハリウッドお得意の法廷劇の原型を見る思いがする。尚、1937年のアカデミー賞において「ゾラの生涯」は3つのオスカー(作品賞、助演男優賞、脚色賞)を獲得している。

この映画の中でゾラは幾度となく“justice”という言葉を口にする。残念ながらこの“justice”という言葉は、現在のアメリカにおいてはすでに手垢にまみれている感があるので、何度も“justice”を連呼されると、見ているほうは胡散臭くてどんどんと冷めていってしまうのだが、今回はあえて目をつぶることにする。この映画自体は素晴らしいものだと思うし、きっとこの映画が撮られた頃のアメリカには、“justice”という言葉にももう少し重みがあったに違いないだろうと思うからである。

ゾラは晩年、空想的社会主義に傾倒し多くの政治運動に参加した。
その意味では、ハリウッドで赤狩りが始まる前のこの時期にゾラのような人物をヒーローとして描くこのような作品が撮られたことには何か因縁めいたものを感じずにはいられない。言い換えれば、古きよき時代のハリウッドの最後の姿がこの映画の中には残っているといえるかもしれない。

尚、この「ゾラの生涯」もそうであるが、近年、デジタル修正技術の進歩によって、数々の古典的名作がリマスター版として再び日の目を見ることになったのは大変喜ばしいことだと思う。
擦り切れたフィルムの中で色褪せていた登場人物たちが、再び生命を吹き込まれ、動き、語り、そして歌い始めるのを見ると、僕は、すでにこの世にはいない彼らが、血の通った人間として再び目の前に立ち現れるような感覚にとらわれるし、また、時に彼らの体温すら感じられるような気がするからだ。

ということで、エミール・ゾラについては、
こちらこちらをご参照ください。


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2 コメント

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関係ないけど、 (chidorikko)
2006-03-19 20:23:11
永田議員のメール問題から、告発した某フリージャーナリストのことをマスコミが書き立てたり、証人喚問すべきだという政治家が出てきたりとまあ世間を騒がせているけど、その真相や世間の好奇心は別として、公益通報者保護法(内部告発を保護するための法律)はどうあるべきなのか、考えさせられました。
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chidorikkoさん (kazu-n)
2006-03-21 00:57:42
コメントありがとうございます。

渡米の準備は着々とすすんでおられますでしょうか?



さて、永田議員のメール問題についてですが、まあ、どうなんでしょうねー。例のフリージャーナリストを証人喚問することで何を明らかにしようとしているのかがよく分かりませんが、もし、このフリージャーナリストが民主党を陥れるために誰かの指示を受けてやった(たとえば自民党とか)という可能性が多少なりともあるのなら、証人喚問にも意味はあるのかもしれません。



しかし、民主党が怒りの矛先をかわす為だけにこんなことをやろうとしているのであれば、それはお門違いだと思います。非難されるべきはガセネタを裏も取らずに国会に持ち出した永田議員と民主党の幹部ではないでしょうか。



それから、もともと日本の公益通報者保護法は、公益通報者の保護にはほとんど役立たない天下の愚法であるわけですが(詳しくはここでは書きません)、ただし今回の場合、このジャーナリストが公益通報者であるとはとてもいえないでしょうから(単なる嘘つき?)、その意味ではこのジャーナリストに対し公益通報者保護法が適応されることはないのではないでしょうか。



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