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And This Is Not Elf Land

OUR TOWN その②


ソーントン・ワイルダーの有名な劇OUR TOWN(わが町)を観る。これは、プロのカンパニーからスクールプレイに至るまで…アメリカで最も頻繁に上演されている劇。先日亡くなったポール・ニューマン氏は、Broadwayでこの作品に出演していたことでも知られています。日本では、早川演劇文庫から原作本が出ています。

今回のカンパニーのものは、評価は特に高いわけではなかったんですが、一度これが演じられているのを観たかったものですから。観劇に至るまでの「いろいろ」は
こちらに

ストリーはこちらで取り上げています。

劇が行われたのは舞台と客席が設定されている場所ではなく、普通のスタジオ。両側に椅子が並べてあり、真中で演技が行われる形式でした。椅子は(数えたわけではありませんが)150前後かな?6,7割が埋まっていました。

中心となる二つの家庭は、テーブルと椅子が設定されているだけ。動きも、実際の道具を使わずに振りだけで表現されますが、面白かったのは、両家の母親二人が豆の皮をむくシーンは、本当に豆が使われていました。豆=日常のイメージがいい意味で突出していて面白い。豆のヘタを折る「ぱきっ」という音の繰り返しが、いやでも耳に残ります。

アルコール依存症に陥っている音楽家の男性もスタジオの隅に場が与えられていて、常に酒をあおる姿が見えるようになっていました。70年前の設定なのに、服装も現代のものそのままでした。

この劇で重要なのはステージ・マネージャー役で(ポール・ニューマン氏はこの役だった)町の紹介から、登場人物の背景、劇中には表れない出来事を語っていきます。私が興味があったのは「語り手の眼差し」。「視点」は「台詞」に表れますが、「眼差し」は実際に劇を見ないと分からないもの。でも、ここがとても重要だったりする…

まぁ、これについては、ここではこれ以上書きません。(駄文をレポートなんぞに転用されても、かえってご迷惑になると思いますんで…すいません)

当たり前かもしれませんが、演技は主役級からチョイ役の子供たちまで、例外なく上手い。何と言うか…日本人は、歌も踊りも演技も…もう不戦敗ですな(あー!言っちゃった!)私が言いたいのはですね、どれだけ層が厚いんでしょうか?…ってことです。というか、一番の違いは、演劇に「学問」としての地位がしっかり与えられているということでしょう。実際、一般の日本人には「ブロードウェーで主役を張れる人はハリウッドの主役級と同等のに見られる」と言っても信じない人が多いし、「売れてる」映画スターが何で舞台に出るのか(エクウスのラドクリフ君とか)理解できないという人も少なくない。

さて、OUR TOWNに戻りますが…3幕は死の世界が描かれるのですが、フロアの客席部分にも出演者(死者たち)が座り、彼らの声が多重に聞こえてきます。エミリーが一度だけ幸せな過去の一日に戻るシーンはどうなるのかと思ったら、ステージの端に「コンテナ」ほどのスペースがあって、そのシーンなると幕が開いて、過去の世界が演じられました。面白いのは、このコンテナの中は非常にリアリスティックで、エミリーの両親は「当時の」服装をしているし、家具や調度品も時代背景に忠実なものを使っていて、朝食は「実際に作る」んですね。ぷ~んと本当にいい匂いがしてくるのです。それまでは、殆どすべての動きはジェスチャーだったのに。

しかし、幸せだったはずの過去に戻ったエミリーが、幸福を取り戻すどころか、絶望してしまうシーンは、圧巻というか、力技というか(?)あこまでやられると、理屈抜きで涙腺が緩んでしまいます。面白かったのは、上演前に喧嘩をしていたおばさんたちも泣いていたこと(笑)

第3幕は、おかしな例えかも知れませんが、日本の感覚では、お寺の御御堂で、みんながお坊さんの説教を聞いているような感じだった(?)もっとも、このOUR TOWNはアメリカならではの話だと思うので、日本版「わが町」を考えるとしたら「3幕はお寺の御御堂」という発想はさほど的外れでもない気がするんですが、いかがでしょう(笑)
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