
非常に面白かったです。
真理なんて、どこにもない世界…
すべてが「な~んてネ」
NYから戻って2週間余り、そろそろ「いい男欠乏症(?)」気味の私は、『プリンス・オブ・ペルシャ』のジェイク・ギレンホールでも拝んでくるつもりだったんですが、どうも時間が合わない。それで、なかなか評判のいいこの映画を選びました。
この監督さんの「腕」の確かさは『嫌われ松子の一生』で実感していたのですが、この『告白』でも、素晴らしいです。とにかく、登場人物は、すべて、ある意味「類型的」なのです。しかし、それを「超類型」とでも呼びたくなるようなものにまで完全昇華させているのです。とにかく、その卓越したテクニックで、最後まで引き込んでくれました。
この作品は、見る人によっては「教訓的」に考える人もいるだろうし、「人情ドラマ」として受け止める人もいるだろうし、さまざまだと思うのですが(しかし、もちろん、どの解釈が「正解」というものでもない)私なりに感じたことを、ネタばれしないように(これが難しい…笑)書きたいと思います。
まず、この映画には、さっそくハリウッドからリメイクの希望が来ているというニュースを目にしたことがあるんですが、これをキリスト教圏でやると、少し趣が異なってくるのではないかと感じます。この『告白』に描かれているのは、あくまでも、キリスト教圏における「神」に相当するような、絶対的な価値意識というものが希薄な世界と、その危うさであるように感じたからです。
日本のように、もともと、宗教というものが希薄な国では、かつてのような、いわゆる「世間さまに恥ずかしくないように」という意識まで薄れてしまったら、もう崩壊するしかない(と思う)。特に、子どもたちは、若さゆえに暴走しがちなエネルギーを抑制してくれる「外側の力」がなければ、まったく「かいならされていない」生き物と変わらなくなってしまう。「かいならす」というのは、ちょっと過激な言い方かもしれませんが(ですから、敢えて平仮名にした…あんまり関係はないかも…汗)しかし、私はかれらを憐れに思っています。頼れる精神的支柱もなく、何のしつけもされずに、「かいならされていない」子どもたち。思春期特有の、どうしようもないエネルギーを、どうすることもできずに、彷徨っているしかない。そして、安易な自己主張とハイテク技術だけに長けている…
この映画で描かれているのは、まさにそういう世界でした。そんな中で「命の大切さを知る」もヘチマもない…というか…私は、この映画の中で繰り返される「命云々」というのは、単なる二次的なテーマに過ぎないような気がしました。(自分の存在そのものに対する意識も希薄なのだから)そして、そういう危うさは「子どもの世界」にとどまらないのでは…という、寒々とした予感を残しました。
だいたい、私が子どもの頃は…「先生」というのは怖かったし、体罰もあったし、理不尽な扱いをしたこともあった…いろいろあったけれど、根本の部分では、先生とは「真理に導いてくれる人」なのだと信じていました。それが良かったのか、悪かったのか…両面から見る必要があるでしょうが…それにしても、「先生」に対するそういう意識がなくなったのは、いつからなんでしょうね?今どきの教師なんて、単に物分かりが良くて面倒見のいい、普通のお兄ちゃん、お姉ちゃんと変わらない。私的には、今どきの教師の「得体の知れないモノわかりの良さ」には、かなりの違和感があります。
映画の中では、2年生の担任の男性教師が、非常に上手く描かれていたと思います。幼稚な精神論と平等意識を振りかざした、ちょっと外国かぶれの、単なる「いい人」…彼に不満を持つ女生徒も、その不満が「何」であるのか、自分でもわからないし、分からないから、それを表現するすべも知らない。
少なくとも、少年Aは、自分が母から受け継いでいるはずの能力を信じていました。彼は遺伝として受け継ぐ先天的な才能を信じていたのでした。例の男性教師は、Aに対するいじめに気付いたとき、生徒たちにこう言います。「Aが勉強ができるからって、妬むのは間違いだ。みんなにはそれぞれの個性があるんだ。どんな個性を持つ者も、みんな同じなんだ!」
…出ました「人間みな同じ」(笑)
もちろん、こういう考えそのものが、「間違い」であるとは思いません。しかし、この男性教師のように、これ以外の考えを、最初からすべて排除してしまっていて、完全な思考停止状態に陥っている人々が、(教育畑に)大勢いるのとしたら、それは嘆かわしいこと…
ちょっと中途半端ではありますが、これ以上書くとネタばれしそうなので(笑)とにかく、よくできた映画でした。バックに使われている音楽も、懐かしいロックあり、フォークあり、クラシックあり…で、選曲のセンスも素晴らしい。
俳優たちの演技もよかったです。松たか子さん、よく見ると、そんなに美人じゃないのが、またよかった(笑)
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