
先日、アカデミー賞作品賞受賞作品のCRASHを観に行ったとき、とにかく、始まるまでは「これが、私の好きなDO THE RIGHT THINGを超えているはずがナイ…ナイと思う…たぶんナイだろう…」などなど…あれこれ考えていたものでした。
「超えている」という言い方は正しくないかもしれませんね。シンプルに「面白い」と言ったほうが良さそう。
ま、どちらにしても「人種問題」を題材にしているという共通点はあるものの、どちらもそれを題材とした創作であるのだから、ま、比べてどうこう…というのもおかしいのでしょうが。
DO THE RIGHT THINGは(時々)私のNO1に挙げるくらいに好きな映画でもあります。
理由は、以前にBrooklynのデカルプ・アベニューにある監督、スパイク・リー(Spike Lee)のブティック、Spike Lee Jointへ行ってカッコいいTシャツを何枚も買ってきて好評だったという…(凄くバカな理由ですいません)
CRASHも大そう気に入った作品でした。こういう風に、人間同士の相克が分かりやすく、リアルに描かれているものは結構ツボだったりします。
話を戻しますが、当時のNYはまだ治安が悪く、特にBrooklynは簡単に足を踏み入れられるような場所ではなかったのですが、多くのアーティストを生み出したBrooklynをこの目で見て、実際の空気に触れてみたいという思いは強く、結局、現地の事情に詳しい人に案内してもらったのが懐かしい思い出です。
DO THE RIGHT THINGはBrooklynの貧しい地区、Bedford-Stuyvesonのある暑い夏の一日(摂氏で言うと35度以上)を描いています。
※ ※ ※
とにかく、エアコンなど無縁の貧しい地区。
住民の多くは黒人。
イタリア系親子の経営するピザ店、韓国人夫婦(この人たちの英語がメチャクチャ下手。同じアジア人として身につまされる~!)の経営する食料品店。
さまざまな人間が登場する。
とにかく「暑苦しい」(!)
何が?…って…すべてが。
オープニングクレジットはPublic Enemyの過激なラップFight The Powerに合わせた黒人女性のボクササイズで始まる。
朝8時、地元FM局のDJ(Samuel L. Jackson)の「暑苦しい」トークで、ストリーは始まる。
今日も暑くなるぞ~!テーマカラーは「黒」だ。
黒は熱を蓄える色!
寒さに備えるのだ!!
波乱の一日の幕開けを予感させるメッセージ…
監督のSpike Leeはピザ店のバイト、ムーキー役として登場。関係ないけど、彼の着ているシャツがカッコいい。自分の店に置いているんだろうな…。ま、そんな話はどうでもいいけど、ムーキーも仕事は長続きしないし、ガールフレンドとの間に子どももいるけれども、世話は彼女の親に任せっぱなし。家賃は妹に頼りっきり…。仕事ぶりも真面目…とは言い難い。
ピザ店主のサルは主要人物。25年にもわたりこの地でピザ店を開いている。彼は「一応」自分の仕事や、地域で果たしてきた店の役割に誇りを持っているし、露骨なracist(人種差別主義者)である長男に、人種間のハーモニーの大切さを説いたりする。Spike Leeはサルをもっとracistとして描きたかったとのことだが、サル役のベテラン俳優、Danny Aielloは単純ではない、重層的な差別意識をうまく表現していると思う。
とにかく、ピザ店も、あまりに危険な地域にあるために電気店がエアコンを取り付けに来るのを躊躇している。ただでさえ暑い日に、オーブンの傍でピザを焼き続けなければならない。壁にはライザ・ミネリ、ジョー・ディマジオ、フランク・シナトラ、ロバート・デ・ニーロなど、イタリア系アメリカ人の写真が飾られている。
映画では、照りつける太陽が見せられることはなく、背景は主に貧しいストリートとアパート。
子どもの「道路の落書き」の「太陽」が見せられるだけ。
NYは「落書き」の方が真実…なんて
Paul Simonなど、アーティストたちは言っている。
真っ赤な壁をバックに世間話をする黒人男性3人。
やっぱ、暑苦しい…
それぞれに不満をぶちまける。
それぞれ少し正しい。
少しずれている…。
「市長」と呼ばれている哲人気取りの無職男。
仕事に出かけるムーキーにDo the right thing!と声をかける。
彼も少し正しい。
少しずれている。
じりじりと照りつける太陽。
Radio Raheemはラジカセで大音量でPublic Enemyの曲を流し、ストリートを歩くばかりでなく、サルのピザ店でもラジカセを止めない。Buggin' Outはサルの店のイタリア系アメリカ人の写真への不満が抑えられなくなる。黒人街でビジネスしているのなら、アフリカ系アメリカ人のヒーロー達にも敬意を表して彼らの写真を飾るべきだ!そうできないのならサルの店をボイコットだ!!と喚きはじめる。
みんな、少しずつ正しく、少しずつズレているんだけれど、それでも、微妙なバランスを保っていたのに…異常な暑さでバランスが崩れ、沸点を超えてしまう。
考えてみれば
'hot'と'hate'
語感が似ている…
最後は警察官の行き過ぎにより命を落とすRadio Raheemに怒った住民がサルの店を襲い大暴動になる。
ムーキーがRadio Raheemの痛ましい死に様を目の当たりにして
Hate!
と叫んで、サルの店のウインドウを叩き割り、暴動を誘発させる。
このシーンはアメリカのサイトでも物議を醸していた。
沸点まで達してしまったなら…もはや、暴発するしかない。これがムーキー(Spike Lee)にとっては「正しい事」なんだろうな…そんな解釈でいいんでしょうか…きっと、そうだろう…。
ショッキングな内容だけれども、音楽や映像も凝っているし、なかなかセンスのいい映画だと思う。ただ、絶え間ないf-word、s-word、あまりに過激な歌詞には抵抗がある人も少なくないかも。
この映画は、何らかの解決を示そうとしているものでもない。
あくまでも「俺たちに対する奴ら」
そんな緊張感といつも隣りあわせで生きるのを「これでもか!」と見せられるのは…私は嫌いじゃない。
いつだって人間は「超ギリギリ」…
Fight the POWER!
最後のマルコムXとキング牧師のメッセージまで、しっかり楽しませてもらった。
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