
映画「ジャージー・ボーイズ」
引き続き、舞台と映画を比較してみます。ネタばれしていますのでご注意ください
ステージからスクリーンへ(1)
ステージからスクリーンへ(2)
★金銭問題【内容を訂正しています】
映画では、4人がプロデューサーのボブ・クルー(以下、クルー)に出会って、仕事の契約をしますが、ボブ・ゴーディオ(以下、ボブ)は「事実上はバック・コーラスとしての契約だった」という内容のナレーションを入れます。舞台では「ドアからドアへ売り込みするよりはマシだったが…そんなに良くもなかった」と話すだけですが、契約の内容は観ている側が察するような感じです。
そして、映画では、4人がバック・コーラスの仕事が嫌でクルーとけんか別れをしますが、そのときにクルーはボブの持ってくる曲にこれといった魅力がないことと同時に、本人がお金に困っていることを伝えます。この「クルーがお金に困っている」ことの「告白」は舞台よりも早い。
映画でも舞台でも、クルーのもとを飛び出した4人は、仕事を探しますが、せっかく見つけたボーリング場で演奏する仕事も「トミーの過去の悪事」が原因でさせてもらえなくなります。落胆した4人が、「ある啓示」(笑)を受けて、グループ名を変えて心機一転、クルーの下で頑張る決意を伝えに行きますが、舞台では、ここで初めて自身が無一文状態であることを伝えます。
映画では、ずっと以前から、クルーは既にお金がない状態だったような話になっているのですが…この辺りはどうなのでしょう?(「事実」かどうかは別として、私はひたすら「話の流れ」を問題にしていますので、よろしく~笑)デビューさせる資金力もないのに、本人たちが不本意な仕事だと思っているバック・コーラスをさせる…ちょっと冷たい人ですよね(笑)
確かに、舞台では「いつクルーはお金がなくなったのか?」は、ハッキリさせていません。ただ、バック・コーラスの件で4人と衝突したときは、観ている側の印象としては「4人が、クルーの求めるレベルにはまだ達していないのだろう」と思わせます。まさか、お金がなくてレコード・デビューさせられないなんて思えません…また、舞台では、その後ボブが印刷工場で働いていたエピソードも話したりしますので、4人は相当の期間クルーと連絡を取っていなくて、その間にクルーの金銭問題が起きたような印象を受けますし、私もずっとそうだと思っていました。
そこで、舞台でも映画でも、トミーは高利貸しから大金を借ります。
ところが、そのあとが舞台と映画で大きな違いのあるところなのです!!
舞台では、トミーがお金を用意してくるも、今度はクルーは「金銭問題は解決したわ。父が助けてくれたの。父は私を愛しているのよ!」と言って、トミーのお金に手をつけません。(話はそれますが、性的志向のマイノリティーを思わせるクルーが、父との関係が良好なことに言及しているのも、60年代の話であることを考えてみても、興味深い台詞)そしてトミーは「俺が用意してきた金が要らないなんて、なめんな!」と激高し…そして、そのお金をポケットにしまいこみます。このシーン…誰もトミーがそのお金をそのまま返しに行くとは思いません。きっと、ギャンブルなどで使ってしまうんだろう…というのは容易に想像できるのです。
ところが、映画では、トミーが借りてきたお金を使うのですよね。また、話は前後しますが…映画では、ボーリング場での仕事を断られてすぐにお金を用立てていることから、トミーが自分の悪事が原因で仕事がもらえなかったことに対して責任を取っているようにも見えます。実際、舞台では、ボーリング場の仕事を断られたことについて、誰もトミーを責めないのがちょっと不思議な感じを受けるのですが…(それだけ怖れられていたのでしょうが)
いずれにしても、映画では、トミーがお金を用立てて来なければSherryはレコーディングできなかったことになっています。これは、かなり「トミー寄り」の解釈になっていると言わねばなりません。
★ボブとニック
フランキーが、「トミーのこしらえた莫大な借金を自分が責任を持って返す」と宣言したとき、映画では、ボブとフランキーが表情でやり取りしているのが見えて面白い。明らかに、この二人は、この件について、事前に話を決めていたのだろうと伺わせます。このとき、もうすでにニックは蚊帳の外…映画では、はっきりしてます。二人でニックがどう出るか見守っていたのでしょうが、彼が「グループをやめる」と言い出すのは、ほぼ予想通りでもあったように見えました。
ここで、ボブが、冷徹な表情で「ツアー中なんだ。やめることは許さない」と言うのも、舞台とは違う印象で驚きました。舞台では、ここのシーンのボブは、頭は良くても修羅場は苦手(?)なお坊ちゃんのような感じでしょうか。映画では、音楽家としても大成功しているボブが、他のメンバーよりも身なりもよく、風格も漂わせていることにも感心。実質的に、グループのリーダーとして君臨している様子がうかがえます。舞台は、ほとんど衣装は変わらないし…こういうところは「想像」に任せられます…で、私は、今まで、そこは想像できていませんでした(汗)こういうところを明確に見せるのも映画なのですね。
舞台では、ボブは、ニックとも友情で結ばれていたと語るシーンがあるのですが、映画ではなくなっていますね。舞台では、ボブはニックから女性や車についての指南(?)を受けます。そして、ニックという人物が、生活のすべてにおいて、徹底的に自分のやり方にこだわるタイプだとボブの口から述べられます。映画では、例のパーティーのシーンで、舞台と同じく、ボブが「女性については、ニックの言ったとおりだった」と言うシーン以外は、特に二人のつながりを表す部分はありません。
ただ、ニックは物事にこだわるタイプだった…というのは、これは実際にそうだったようで、ある資料では「今の時代なら、あの強いこだわり方には診断名がついていただろう」とも述べられています。それを考えれば、映画では実際にシーンとして見せられる「ホテルの部屋のタオルの山」なんて、ニックには耐えがたいことだったに違いありません。単にトミーとの力関係に屈していたというだけではなく…でもまぁ、ニックの独特の精神面については映画でも表現しにくいでしょうし…あそこのシーンはトミー役のヴィンセント・ピアッツァの肉体美に目を奪われるシーンってことでいいでしょう!(キャッ)
★Sherryができたのは…
話は前後しますが…映画では、ボブが「本気でヒット曲を作るんだ!」と意気込むも、なかなか浮かんでこない。とりあえず、約束の時間に合わせて、ニュー・ジャージーの雑然とした下町をバスに乗ってフランキーの家に向かっているシーン。
ここ、お気づきになった方もいらっしゃったと思いますが…町の騒音の中で、かすかに聞こえる車のクラクションが「しぇえりぃ~~♪」の音色に聞こえませんか(!)(いや、聞こえますよ!)そして、ボブの顔色がさっと変わり、バスに揺られながら楽譜を書き始めるんですから。
この曲は、ボブ・ゴーディオが短時間で書き上げた曲であることは知られていますが、映画のここのシーンは本当に素晴らしい!こういうのも、映画ならでは…これが、天才作曲家なのですね…
(続)
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