その2より
<電波検査>
映画版では、主人公(裕次郎)の技術者がレーダ設置後に設備室内でノートに数式を書いています。「レーダの方程式です」と言っていますのでDVD画面をストップしました。ぼやけていて確かではないのですが教科書で出てくるレーダー方程式ではないような気がします.
下の式はレーダー方程式です。 (国家試験なんかでもおなじみ?)
RFワールドに一般のレーダ方程式の他に雨滴などを考慮したものが記載されています。映画では電波検査を控えて事前勉強している場面です。
台風が日本列島に接近していることから、電波監理局(現在の総務省総通局)の電波検査を受ける前に、レーダー電波の発射を気象庁の藤原課長に迫り実行するシーンがあります。気象庁の上司は「電波庁には私が言い訳する」と違反覚悟の決断をして裕次郎がスイッチオンして電波が発射されるのですが。
しかし実際には、この時点では時期的に予備免許が下りており試験電波の発射は可能かと思うのですが。??です。
もっとも業務に利用してしまってはダメなのでしょうが。(レーダー画像を見て予報してはダメ??)
小説では、電波検査を前に電波管理局との折衝や電波検査の模様も詳しく描かれています。
気象庁や技術者たちは、”電波管理局検査官が山頂で高山病になれば、検査内容が緩くなるのでは”と期待したが、3人とも若くてすぐに順応して・・などが面白く書かれています。
私も何回か仕事で検査を受けたのですが、若い検査官は舐められてはと思われるのか結構細かく聞かれます。大概は、もう一人の方は年上で淡々と進みます。一度だけ衛星地球局のスプリアスの測定でうまくゆかず、検査官側から「昼からもう一度しましょう」と言われ蒼白になったことがあります。なんとか再測定でクリアできて合格を貰った後、上司にからかわれたのを覚えています。
気象庁の無線局であり三菱電機社員の裕次郎は、無線従事者として選任されていないため技術操作はできないので、違反が描かれていると思ったのですが、小説内では検査の受検をメーカ技術者が対応していることから、選任されていたのでしょう。
実際の検査は選任について無線従事者免許証と照合されます。
アマチュア無線局の免許状です。(プロの無線局の免許状もそれほど変わらなかった記憶がありますが)
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いろいろ映画などに突っ込むことも無線家ならではの楽しみです。(少々ひねくれています)
この富士山レーダー局は実用化試験局として免許されて、その後に実用局(陸上局なのか??)になったようです。
<台風接近>
ところで、この映画での接近する台風の風雨にドームが耐える内容ですが、”台風18号が接近し富士山を通過”とあります。
ということで昭和39年(1964年)の台風18号を調べました。気象庁のデータベースで検索できます。
結果は、これはデタラメです。この台風は日本の遥か南を大陸に向かっています。22号が9月24、25日に九州~近畿~東北を通過していますがこの年に上陸し富士山に接近の台風はありませんでした。
富士山付近を通過したのは翌昭和40年の台風17号のようです。
ドームは完全だった耐えたと裕次郎は伝えますが、小説にはレドームの漏水の模様が書かれています。この辺はまあ映画ですからと気にしないのですが。
この映画は、大きな情緒的なところも無く淡々と見られ、技術者や物づくりを称える内容には称賛しますが、少し残念なのは気象庁の話しですし気象に関する嘘を無理に描かなくてもと思います。
この富士山レーダは、気象衛星ひまわりが運用されたこともあり、1999年に役目を終わりました。最高峰に設置した広範囲レーダとしてIEEEのマイルストーンの電子電気技術遺産に登録されました。今は富士吉田市に移設展示されているようです。来年訪問してみようかと思っています。
今年最後のブログをご覧いただき有難うございました。来年はサボらないようにします。
良いお年をお迎えください。
レーダー方程式は、対象物体で跳ね返ってくる電波の受信電力です。
それはともかく、富士登山ですか? OVUさんは経験されているのですか。 JM3EYK武久氏は20代の頃に登ったそうです。 まあ、今からでは無理です。
もっとも、その前に富士山レーダーは山頂でなく今は麓にあるそうですので・・
私は30年ほど前に大阪の事業所でTV中継回線の運用もしたことがあります。放送局の方とは打合線で運用の連絡などもやりとりしていました。懐かしいです。
この富士山頂の小説では、電波管理局との検査日程の事前調整や電波検
査の様子が書かれていて面白いです。私がプロ局の検査を受けたのは30年ほど前ですが、今は検査対応の雰囲気も違うのでしょうか。
これからも無線がでてくる映画をみてイチャモンをつけようかと思っています