西尾政孝の読書日記

ニーチェ、バタイユ、三島由紀夫、井筒俊彦、ウィルバーを中心に、その周辺を読み散らかしています。

幸福とは

2021-01-30 | Twitter
宮沢賢治は「世界がぜんたい幸福にならないうちは個人の幸福はあり得ない」と言ったが、これはこの人生においては幸福などあり得ないということである。あるのは目標としての幸福だけであり、この人生において幸福になったと思っている人は真実を覆い隠されていることに気づいていないだけなのである。

だから私は言いたい。「あの人は幸せそうでいいな」と他人を羨む必要はないのだ。幸せそうに見える人でも大抵それぞれの不幸を抱えているものだし、仮にその人が本当に幸せだとしても、それは単に真実を見ていないからである。残念ながら、真実と幸福はこの世界では一致しないのである。

最近の風潮として、幸福強迫神経症とでも呼ぶべきものがあるのではないか。少しの不幸で人生がもう終わったかのように考えてしまう傾向は私にもある。これは幸福でないといけないという根拠のない強迫観念に洗脳されているからだと思う。

その結果、人は少しでも不幸の匂いがするものを自分から遠ざけ、意に反してそれが自分の領域に入りこんでしまうと必要以上に落胆するのである。このような神経症的反応が自分より不幸そうに見える人への差別感情につながることは、昨今のコロナ騒動でも容易に見て取れる。