日々是好日

日々の読書、日々の思い、徒然に

身体の知恵

2007-08-24 | Weblog
『身体の知恵』
斎藤孝 大和書房 2007.4.5

久しぶりに斎藤孝氏の本を読んだ。
私の尊敬する人が「これ面白いよ」と言っていたからだ。

これは『スポルティーバ』という雑誌に毎月連載されていたものに加筆修正されたものなので、
短い章がいくつもあって、各章はそれぞれ違うスポーツについて書かれている形である。

だから、非常に読みやすいし、斎藤氏独特の勢いのある文なのでさらに読みやすかった。

総合格闘技、相撲、テニス、バレーボール、卓球、バスケ、マラソン、ラグビー・・と
内容は多岐にわたっている。
どちらかというと、やる側ではなく「観る側」で書いているので
次にそれらのスポーツを見るときには違った視点で見れるかなと思う。

全体を通して、今の「パワー」主体のものはおもしろくないというのが伝わってきた。
相撲は大きい人が勝つ、テニスはラケットがよくなったのでサーブだけで終わってしまうなど、
ただ大きいだけ、ただ力があるだけで試合が決まってしまう最近の状況を嘆いている。

確かに「技」は、限られた道具、空間があって磨かれていくものだろう。

スポーツを単なる「勝負」ではなく「技」「身体」という面から
もう一度問い直さないといけない時代なのかもしれないと思った。

でも、本当に「身体」を意識してやっている選手は、
自分の状態を言語化できるそうなので、そんな人のインタビューなど
気をつけてみていきたいと思った。

自分の身体をもっと意識できるようにもなっていきたいものだ。

おすすめ度★★★☆☆

逆立ち日本論

2007-08-23 | Weblog
『逆立ち日本論』
養老猛司・内田樹 新潮選書 2007.5.25

最近、新書や文庫を読むことが多かったので、久々に読み応えがあった。
さすが養老猛司と内田樹。

とは言うものの、帯に「風狂の二人による経論問答」とあるように、
確かに問答集のようによくわからない部分もあった。

ユダヤ人について、日本語について、日本について、
全共闘に身体論等々、さまざまなテーマで語り合っていて面白いのだが、
「高級漫才」で笑えるためには、客も高級でなければいけない。

しかし、ついつい、ただ読んでしまって、笑えてない自分は
まだまだ高級漫才を理解できないレベルなのだなぁと実感・・・・。


話の中に、RASYOMON(羅生門)という日本語が
そのまま英語になっているという話があった。
なんというのか、真相がわからないままフェイドアウトしていくみたいな感じというのは、
日本的なことなんだなぁと初めて知った。
今まで思ってなかった点にスポットが当てられていておもしろかったし、
また、「日本」について考えさせられた。
(「日本論」なんだから当たり前か・・・)


おすすめ度★★★★☆



「世界征服」は可能か

2007-08-20 | Weblog
『「世界征服」は可能か』
岡田斗司夫 ちくまプリマー新書 2007.6.10

岡田斗司夫といえば50kgの減量!
ブログで見たが、全く別人のようになっていて、
ぱっと見てもじっくり見ても、岡田斗司夫だとはわからなくなってしまった。

117kが67kgというのはほぼ半分。
そこまで体重を落とすと性格や好みなど変わってしまうのではないかと思う。

それは余談だが、この本は「世界征服」なんていうテーマを
実に具体的にわかりやすく、ロジカルに書いている本である。

目次を見ただけでもそれはよくわかる。

第1章 世界征服の目的
第2章 あなたはどんな支配者か
第3章 世界征服の手順
第4章 世界征服は可能か

世界征服の目的の章には、
「人類の絶滅」「お金がほしい」「支配されそうだから逆に支配する」
「悪を広める」「意味不明」という項があり、
それぞれ具体例を挙げながら、きわめてわかりやすく述べられている。

他の章にも同じように具体的な項があげられている。

古今東西のアニメや漫画、映画だけでなく、
現在のアメリカとの問題なども織り交ぜていて、
岡田氏の博識ぶりが見事に発揮されている。
その論に賛成か反対かは別として、面白く読めた。

支配階級とか独裁者についての論が、結構新鮮だった。
独裁者とは、その誕生の時には任期制であったこと、
それを「終身独裁者」という体制にしたのが帝政だという話。
スターウォーズは、共和制と帝政の問題を抜きにして語れないらしい。

面白かったのは、『バビル2世』のヨミ様についての話。
彼は悪のトップでありながら、部下のために日夜働き
結局過労死してしまうのだそうだ。

あと『レインボウマン』の相手が「死ね死ね団」という
とてつもなく危ない設定だというのが面白かった。
どこかで放送していないだろうか。

結局、世界征服は割に合わないという話なのだが、
「世界征服」というちょっとふざけたタイトルではあるが、
現代の社会のことも結構考えさせられる本だった。

昆虫ー驚異の微小脳

2007-08-19 | Weblog
『昆虫-驚異の微小脳』
水波誠 中公新書 2006.8.25


昆虫がすごい、というのはよくわかった。
が、難しかった。
昆虫のすごさをさまざまな面から実証してくれているのだが、
その図とか表とか専門的で、なかなか私の脳では理解しにくかった。

複眼については面白く読めた。
私はよく、トンボにはこの世の中はどんな風に見えているのだろうとか、
メダカにはどう見えてるんだろうとか、
赤ちゃんにはどう見えてるんだろうとか思ってしまうのだが、
昆虫のあの複眼で見るこの世の中は、
私の想像を絶するものだろうというのは想像できる。
複眼の構造が図解されていておもしろかった。

同じ地球に誕生して、哺乳類と昆虫とこうも別々になってしまうものかと思う。
あまりにも違いすぎるからか私は昆虫がかなり苦手である。

もし、何かの理由で、昆虫が巨大化したら、
恐怖のあまり自分は生きていられないのではないかと思うことがよくある。
その大きさがたとえ猫ぐらいにしてもだ。
あの目、あの口、あの足、あの体・・。
それが巨大化して目の前になんて現れたら・・・
想像しただけで気を失いそうである。

しかし、この本には、昆虫はその構造上決して大きくはなれないと書いてあった。
それを読んでどんなに安心したことか。
それだけでも、この本をよんだかいがあったというものである。

おすすめ度★★☆☆☆
(私には難しかったから。昆虫好きなら読めるかも)

極北に駆ける

2007-08-18 | Weblog
『極北に駆ける』
植村直己 文春文庫 1977.11.25

野口健氏の本に触発され、植村氏の本を読んだ。

植村氏の名前は、もちろん知っていたが、
実際にどんな冒険をしたのか、どんな本を書いているのかというのは
ほとんど知らなかった。

この『極北に駆ける』というのは、
植村氏が、五大陸最高峰の単独登山を成し遂げたあとに「とりつかれた」南極横断の夢を実現させるための準備に、
グリーンランドに住み込んだときの話である。
「とりつかれた」という言い方がやはり冒険家らしいなあと思う。
なぜそうしたいのか、というような理屈ではなく、
なぜかそうしたくなって、いてもたってもいられなくなるのだろう。

しかし綿密な計画と行動力で、植村氏はグリーンランドのエスキモーので、
彼らと一緒に住み、犬ぞりを練習し、
そして実際に3ヶ月かけて3000キロの犬ぞりの旅をやり切ったのだ。

この本ではエスキモーのに入ってから、
3000キロの旅を終え、そのをあとにするまでのさまざまなドラマを綴っている。

日本と全く文化も気候も異なるイヌイットのに受け入れられ、
ついにはある夫婦の養子にまでなる。
野口氏の本に、「植村さんはどこにいってもみんなに好かれている」と書いてあった。
それは本当にそうなのだと思う。
世の中にはそんな人間もいるのだ。

この本を読んでも、植村氏の人柄がよくわかる。
やさしさ、ユーモア、人懐こさ、そしてものすごい行動力とチャレンジ精神。

すごい人の生き方を知るというのは、やはり大事だと感じた。
植村氏の他の本も読んでみたいと思う。

おすすめ度★★★★☆

習慣が「いのちの樹」を育てる

2007-08-18 | Weblog
『習慣が「いのちの樹」を育てる
日野原重明・小野恵子 だいわ文庫 2007.8.15

「いのちとは時間である」
日野原氏はそう言う。
だから、今、今の1分1秒を大事にしていく。
それは自分の時間だけでなく、他人の時間も。

待ち合わせに遅れたり、
自分ばっかりしゃべって人がしゃべる時間をとってしまったりするのは
人のいのちを奪っているのと同じこと。

「いのち」をそこまで意識していると、
おいそれとルーズなことはできなくなる。

この本は「習慣」をキーワードに、
人生にとってよい習慣をたくさん紹介してくれている。

その中で心に残ったのは、
1つは「伝記を読め」ということ。
前回書いた野口健氏も植村直己氏の本を読んで人生が変わった。
日野原氏はシュバイツァーの伝記を読んで医学校に行ったそうだ。

あともう一つは「感化力」ということ。
「あの先生のようになりたいとか、
 あの先生の言葉は心に染みるという感動を覚えないと、
 弟子はやろうという気持ちにならない」
「教育というのは人と人とのふれあいの中でされるもので、
 芸術作品と同じようなものだ」

これは日野原氏が尊敬する内科医のウィリアム・オスラー氏が
言っていた言葉だそうだ。
やっぱり人間性を磨いていくのが大事なんだなぁ・・・。


日野原先生にはまだまだやりたいことが山ほどあるということ。
ただ、それを全部自分が完成させるのではなく、
「天に大きな円を描きなさい。
 そしてその円の1つの弧(アーク)になりなさい」
というロバート・ブラウニングという詩人の言葉通り、
自分は1つの弧になろうと思っているということである。

いのちが限られたものであるというのを自覚しながらも
今このとき、今日一日を精一杯大事にして生きること。
そのことを改めて感じた一冊だった。

おすすめ度★★★☆☆

落ちこぼれてエベレスト

2007-08-16 | Weblog
『落ちこぼれてエベレスト』
野口健 集英社文庫 2003.1.25

たまたま出会った一冊の本が、
一人の人間の人生をこうも変えるものか。
これがこの本を読んでの一番の感想である。

この本には、野口氏の生い立ちも書かれている。
外交官であった日本人の父親とエジプト人の母親の話。
「外人、外人」といじめられた話。
母親が家を出た話。
暴力事件で停学になった話。等々。

その停学中に出会ったのが、野口氏の人生を変えてしまう本
『青春を山に賭けて』(植村直己)
だったのだ。

その本をきっかけに野口氏は登山を始めるのだが、
この本には、7大陸最高峰世界最年少登頂記録を樹立するまでの
さまざまな体験が書かれている。

7000m、8000m級になると、日本に住んでいる人間が想像もできないような世界が広がっている。
生死の淵も幾度となくさまよってきている。
なぜそんな思いまでして山に登るのかと人は思うだろうが
それはやはり登った者にしかわからないものなのだ。

たくさんの出会い、人々の支えを大事にしていること、
登山に同行する現地のシェルパを大事にすることなど、
野口氏の人柄が表れていて、読んでいてとても気持がよかった。

この本からも「行動」のキーワードが感じられる。
行動することは衝突も生むが、それでも行動しなければ何もかわらない。
そういうことを感じさせてくれる本だった。

おすすめ度★★★★☆


『心を揺さぶる語り方』

2007-08-14 | Weblog
『心を揺さぶる語り方 人間国宝に話術を学ぶ』
一龍斎貞水 NHK出版 2007.8.10

本屋でふと目にして買ってしまった。
「話し方」ではなく「語り方」だったからだ。

一龍斎貞水氏は、講談界初の人間国宝だそうだ。
恥ずかしながら全然その名前を知らなかったし、
講談というのも聞いたことがない。

しかし、一流の人の話というのは、やはりすごく上手で
この本も面白くすぐに読めてしまった。
張り扇(はりおうぎ)で釈台をピシャリとたたく印まで入れてくれている。

心に残ったところはいくつもあるのだが、
やはり、お客さん相手に日々お話をする方だけあって
「場の雰囲気は肌で感じる」とか、
「肌で感じれるようになるためには場数を踏む」とか、
「話っていうのは結局は人間性だ」とか、
そういう実際に経験されたことを書いてくれているのですごく納得する。

「自分らしさ」というのは、使いようによっては逃げ口上になると思っていて、あんまり好きな言葉ではないのだが、
それでも、今の自分ができることしかできないんだから、
努力はするけれど誰か他人になるのではなく、
自分として一歩一歩歩いていくしかないのだと感じた。
そういう意味で「自分らしく」話す、語るというのは大事だと感じた。

生きた芸をするには、その場その時でかわるお客さんの空気を肌で感じ、
その変化に合わせて自分の話も変えていかなくてはならない。
そしてその駆け引きは現場でしか学べない。

このことは、今自分が取り組んでいることにも、
当てはまりすぎるぐらい当てはまっている。

それだけにぐいぐいと引き込まれて読んでしまった。

あと、心に残ったのは、
季節や風景の微妙な情感をあらわす言葉がどんどん減っているというお話。
ペンキを刷毛で塗るかの如き大雑把な言葉しか使われなくなったら、心もそうなっていくだろうということである。
それは本当に味気ない恐ろしい世界だと思う。
だから、子どもには、意味がわからなくても、良い言葉をどんどんと教えていきたいものだ。

一度生の講談を聞きに行きたい。

おすすめ度★★★★☆

『人は「感情」から老化する』

2007-08-13 | Weblog
『人は「感情」から老化する』
和田秀樹 祥伝社新書(2006.11.5)

表紙を開くと次の引用がある。

青春とは臆病さを退ける勇気、
安きにつく気持を振り捨てる冒険心を意味する。
ときには、二十歳の青年よりも六十歳の人に青春がある。
年を重ねただけで人は老いない。
理想を失うとき初めて老いる。

サムエル・ウルマン「青春」
作山宋久訳より


最近はとかく「脳」ブームである。
これは結局はアンチエイジングという大きな流れの中の1つであろう。
実際自分も「最近物忘れがひどくて・・」なんていう悩みを抱えていて、
「脳を鍛える」なんていう言葉には反応してしまう。

和田氏は、
「健康・脳の機能・見た目の3つが国民の三大関心事になっているわけだが、
この3つを手に入れるためにも、もっとも大事なのが実は『感情の老化』を防ぐことだ」と述べている。

この感情を司るのが前頭葉ということである。

人間の持つさまざまな能力は、年をとっても案外衰えないというデータが出ているそうだ。
もちろん、生物として老化は必至なので、細胞は減っていくし、運動能力だって若い人のようにはいかない。
それは当然であるが、80や90になっても言語性のIQなんかは全く問題ない。
ただ、問題なのは、年をとると使わなかったときの衰えが激しいという点だ。

若いころなら骨折して1ヶ月寝ていても、治ればすぐに歩ける。
しかし、高齢になると1ヶ月も使わないでいると歩けなくなってしまう。
これは脳でもいえることだそうだ。
病気をして1ヶ月寝て天井ばかり見ているような生活だと軽い痴呆のようになることもあるという。

だから年齢を重ねるにつれて、意識して使う必要がある。

前頭葉は、和田氏によると
「思考や意欲、感情、性格、理性など人間ならではの振る舞いを司っている。
 人間らしく幸せに暮らすためのエッセンスが詰まっている」
ということである。
大事な部分であるが、脳の中でも早くから神経細胞の減少が起きるのが前頭葉らしい。

つまり、
「前頭葉を使い続けることが、すべての老化を食い止める一歩と言える」
ということである。


非常にわかりやすく、また読みやすかった。
どちらかというと男性向けかなという本だが、
「犯罪にならないことなら、自己規制をかけずにどんどんやるべき」
という和田氏の話には共感できる部分も多かった。

何より

「行動する」

ことに重きをおくことは全く賛成である。

ぐずぐずといつまでも思い悩むようになった、とか
出かけるのが億劫になった、とか
何を見ても感動しなくなった、というような人は必読である。


*最近の子どもは前頭葉が発達していないという話をよく聞く。
 「前頭葉」はこれからのキーワードかもしれない。


おすすめ度★★★☆☆