宮脇淳子
徳間書店 2019
始皇帝や武帝、元、明、清の何人かの皇帝を取り上げて、漢民族の周辺の民族も含めて広域的な視点から中国の皇帝の事績等について、わかりやすく説明した本。目から鱗のような話がたくさんあった。例えば、
・漢民族の建てた王朝は、現在の中国を除けば、秦、漢、宋、明だけである。その漢民族の範囲も時代とともに変わっている。
・始皇帝は文字を統一したが、発音は統一していない。離れた地域の中国語は外国語のようなもの。
・元寇の主体はモンゴル兵士ではなく、高麗や契丹、女真人だった。
・モンゴルにはチベット仏教の信者が多く、歴史的なつながりが強固
・清の時代の公用語は満州語で、文書は縦書きの表音文字。
・清の最盛期の康熙帝、雍正帝、乾隆帝のうち、雍正帝は目立たないと思っていたが、意外と有能な皇帝だった。
ややもすると中国は周辺諸国に対して圧倒的な力を誇り、歴史的にずっと支配する側にいたようなイメージを持っていたが、周辺異民族が建てた王朝も多く、また、周辺にも、特にユーラシアの草原地帯には強大な帝国がいくつも存在していた。そうした帝国の実態はあまり文書として残されていないせいなのか、印象が極めて薄い。文書に残すこと、記録することが重要ということか。