主のいない館
柩に納められた
骸のように
虚ろな目をした
泥人形が転がっている
悪臭が消え
無機物化した
物体が崩れ
崩れた灰になり
風化していく
主を求めて
霊が道迷う
宿る所を失い
宙に舞い上がり
未練の涙を落とす
汚物にうごめく
無神経な生き物
あちこちに痰や唾
異様な乾きに
喉に悲鳴の声
枯れた空気
放射線状に散る
喉の悲鳴が切れる
網膜の映像には
何も映っていない
何もない
澱むものもない
漂うものもない
思考のカケラも
感情のカケラもない
気怠さが
頭の先から
足の先まで
ずっしりと
のしかかる
思考を止め
感情を乱し
浮遊する神経
チグハグな動き
苛立ちが走る
主のいない
館にたむろする
不純な感情
白痴のせせら笑い
嘔吐をまき散らす
いつもの事ながら
思案に暮れて
袋小路に入って
思わず
手を合わしている
知らず知らず
祈りに導く
この仕草
いつも誰かと
一緒なんだなあ
思案の袋小路
いつも闇の中
いつも寒々と
いつもいつも
凍りついている