ほんの一休止
目に映る残照
いのちの終わりに見る
美しいもの
一瞬の輝きな中に
安堵が得られない
生きて、生ききって
心残りがある
沈む夕日に向かって
時よ止まれと叫ぶ
叫んで、叫んで
枯れて届かない
今日と明日
その繋ぎの約束
永遠に残るのだろうか
残照を観るたびに
心象が揺らぎ
寝付かれぬ夜が怖い
寝苦しいうたた寝
不安に怯え
空を見上げる
真っ暗な空に
点滅する星
別れの合図に見えた
走り、走って
駆けまくっているうちに
いつの間にか
足が鈍り
萎えていく気力
立ち止まっていた
切り絵のような
鋭角の家並みの向こうに
夕日が沈み
しばらく照り映え残る
柔らかな明かりが
心なしか寂しい
空いっぱいに広がる
真昼の太陽の明るさ
その安堵感と異なり
残照の趣は妙に
最後の残り火のように
心象に焼き付く
今沈む夕日が
明日の朝日に昇る
疑うこともないのに
不安と寂しさが
脳裏の空間の中に
一瞬駆け抜ける
おお、おまえか
この一瞬に
気さくな言葉が
飛び交い、爆発する
今の己の年齢など
一瞬にして吹っ飛んでしまった
酒を酌み交わし
飲むほどに
昔の顔に戻っていく
三十年をタイムスリップし
若き日の顔が
きらきらと輝いている
言葉の端々に
毒舌が走る
その毒舌が心地いい
あの頃は…
語り尽くせない
時の凝縮がはかれない
ああ、青春
この言葉がしみわたる
心の奥底まで
美酒の酔が
青春の顔を蘇らせ
青春を語らせる
学窓を巣立ち
志を持って別れ
それぞれの道を歩み
世の中の荒波に揉まれ
浮き、沈み、這い上がり
彫り込まれた顔がある
セピア色の写真
その中の顔ぶれ
あいつもいる、こいつもいる
この世にいないものもいる
時の流れに映る
懐かしい顔、顔、顔
三十年ぶりに
居並ぶ顔ぶれに
道にすれ違って
通り過ぎる顔
頭髪も薄く、白い
時を凝視し面影が蘇る