あの一言…
あの一言…
ケケケケ…ケケケ
妖怪の笑い声のような
軽蔑の声が聞こえる
吐き捨てるように
口の中の苦いものを
手を突っ込んで
かきむしるように掻き出す
異様な匂いにむせかえった
意識が遠のき
ぬかるみの中に
引きずりこまれ
自分を見失い
泥酔してしまった
天井も人声も
グルグルと回る
耳の穴の管に
罵声の洪水が
流れ込んでくる
グワン、グワンと
頭の中が響く
鐘つき堂の中にいるような
鈍い鐘の音が
ズシーン、ズシーンと響いている
手足も頭も
胴体から離れ
私の意志とは無関係に
自由気ままに
酔っ払ってしまっている
あの一言
そんなつもりじゃ…
吐いた言葉が
冗談が行き過ぎて
仲間の心を傷つけた
あの時、直ぐに
あの一言を
取り消さなかったのだろう
有頂天になり過ぎて
一人取り残された
手にした酒を飲む
グイグイとあおる
喉を通る酒
行場がなく
目が回ってきた
饒舌な口が
弾み飛ばした一言
一瞬周りの空気が変わる
和やかな賑わいが
重く、重くのしかかる
寡黙な時間が過ぎ
一人、二人と
挨拶もなく
席を立って行く
そして、一人になった
楽しい時間が
思わぬ一言で
仲間を散らした
あっという間に
追い払ってしまった
呼吸しないと
死んでしまう
吸ってばかり
それでも、吸いきれない
吐いてばかり
それでも、吐ききれない
呼吸にもコツがある
吐いて、吸って
この単純な
一呼吸
吸って、吐いて
この呼吸
手順が違う
吐いて、吸うのがいい
時には
大自然の中で
思いきり
一呼吸
死にかけた命が
蘇って来る
ああ…生きている
一呼吸
この一呼吸
一心に一呼吸
大宇宙の波動が
蘇させてくれる
この一呼吸
大事なんだよな