白い布と徒然の。

今日も明日も明後日も、何かを探すでしょう。

習作1【雨の日の千早とP】

2013年11月14日 | 練習テキスト
習作1 

 明日も雨なのだろう。音叉の音が雨の音に紛れながら部屋の中に響く。
 やがて少女の声が音叉を追って響き始めた。その声が旋律になるのを待ちながら、私は紅茶で唇を濡らした。
 私はそのまま、ソファから窓の外の、上から降り注ぐ雨粒を見上げていた。
「プロデューサー、終わりました。」
「ああ。お疲れ様。」
「オフに付き合わせてすみません。」
「いいや、気にしないでくれ。」
 正直、最近は休日をどう使うかにも悩んでいる。何かをしていないと精神的に疲れてしまうようになってしまった。
 そんな中で、千早がトレーニングの付き添いを求めてきたことは僥倖に思える。特に監督するようなこともないけれど、少しは気分が紛れる。
「お昼、どうしようか。」
「なんでもいいです。」
「じゃあお昼抜き?」
「別にそれでもいいですけど・・・。」
「気になってるお店があるんだけど、一人じゃ行きにくいしな。」
「お供しますよ。」
「今日付き合ったお礼?」
「別にそんなんじゃ・・・。」
 私は千早に傘を渡しながら事務所の鍵をかけた。傘の柄がプラスチックが温かく感じられ、殊更鍵が冷たかった。

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