屋久島旅行記

屋久島に恋しました・・・。

楠川温泉

2005-06-30 | 2005年6月
屋久島でダイビングした後、えのっきーさんは大抵いつも楠川温泉に連れて行ってくれる。

人が3人も入ればいっぱいになってしまう小さな湯船の中に濃い温泉が湧き出ている。
休憩所は広くて、扇風機がぶうんぶん唸っている。
のぼせた身体をごろんと休めるには最適だ。

休憩所の下には清流がさらさらと流れている。
楠川温泉自体が、大通りをそれた林道を車で2,3分走った所にあるので、ちょっとした森の中の隠れ家みたいな雰囲気に溢れている。

海水で冷えた身体をあっためて、外で川を眺めながらぼーっとしていたら、小さな子供を2人連れた地元の人らしい若い女の人に声をかけられた。

「どこから来たんですか」

「あ、東京です」

えのっきーさんがお迎えに来るまで暇だったので、何となくおしゃべりする。

もともと屋久島生まれの人なのかと思ったら、もともとは鹿児島の人で、やっぱり旅行で屋久島に来ていた人と知り合った人と結婚して屋久島に住むようになったと言う。
うーん、かなり羨ましい。
私にもそんな出会いはないものだろうか。
結婚して屋久島に住み着けたら一石二鳥に美味しい話だ。

楠川温泉は地元の人たちもよく利用しているようで、この日はこの若いママも一緒に入っていた。
だからだろうか、何となく気さくにお互い話しが出来た。

「梅雨明けのホントにいい時期に来ましたね」
と言われて嬉しくなった。
365日雨が降る、と言われてる島なので、多かれ少なかれ雨の覚悟はしていたけれど、たまたま私が来た日から梅雨が上がったみたいに晴れ始めたと言う。

「屋久島はまだまだいっぱい良い所があるから、あと一日、楽しんでくださいね!」

そう言って、若いママはお子さん2人と車に乗ってぶうーんと帰って行った。

えのっきーさんはまだ来ないので、私は川べりまで降りていくとしゃがみこんで澄んだ川の水をただぼーっと眺めていた。

この島はどこに行っても水が綺麗。
だから、いつまで見ていても飽きない。
何だろう、こういう場所がこの日本に存在していて、ここに来られたことの奇跡に対して感謝したい気持ちになってしまう。

「ありがとう」としか、言えない。
それも、「言わなきゃ」と思っているのではなく、自然とその言葉しか溢れて来ない。

何に対して「ありがとう」なのか、私自身、よく判らない。
ただ、見せてくれてありがとうと思うし、存在してくれていてありがとうと思うし、私をここに来させて来てくれてありがとうと思う。

その気持ちを突き詰めてゆくと、最終的にはうわーっと涙が出てきてしまう。
何でだろう。
もう良く判らない。

ただ、嬉しくて仕方ないんだ。
この綺麗な、綺麗な水がここを流れている、それだけで。



魚の声

2005-06-30 | 2005年6月
2本じゃ物足りなくなってしまい、ついリクエストした3本目。

ツアー観光客は絶対足を踏み入れない、いかにも地元な感じの雑草の生い茂った細い裏道を抜けて行くと、突如としてごつごつの岩場の海岸に出る。
そこはえのっきーさんが独自に開拓したダイビングポイントらしく、従ってポイント名もまだついてない。
だから、無名ポイント。

無名ポイントの水中景色は、一見伊豆っぽいカンジ。
珊瑚礁もないし、むきだしの地味な岩がだらだらと続いている。
地形の起伏もないので、泳いでると飽きてくるかも。
でも、良く見ると、あちこちの岩と岩の間から細い棒状のムチカラマツがぬうーっと伸びている。
荒れ果てた大地のようにむき出しの岩が連なり、そこから突き出る無数のムチカラマツ。
その風景が、伊豆とは違う異質な雰囲気を醸し出している。
ここはどっちかって言うとマクロポイントで、伊豆にもよくいるシロウミウシが一匹いた、と思うと、見たこともない名称不詳の艶やかなウミウシがぽんぽんと張り付いている。

ここで、今回えのっきーさんの教えてくれた遊びの中でも特筆すべき事件が起きた。

生まれて初めて、魚の声を聞いた。

感音性難聴の私は普段は補聴器をつけているけれど、水中では当然、補聴器ははずさないといけない。
聞こえてくるものはダイバーの吐く空気の音とボートのエンジン音。
魚や甲殻類や海に生きるものたちがたてるささやかな音は自分には到底、聞こえやしない。
そう思っていた。

「じゃあ聞かせてあげるよ」
と、えのっきーさんは言った。
「ボートのエンジンなんかに比べたら高くて小さい音かもしれないけど、もしかしたら聞こえるかもしれないからチャレンジしてみよう。もし聞こえなかったらそれは仕方ないけど、聞こえたらラッキーだよね」
これを言われた時、私はもうどうしようもなく、無茶苦茶うれしかった。
聞こえなかったら可哀相だから、じゃなくて、聞こえたらラッキーと言うポジティブ所か、アクティブな発想が、遊び好きなえのっきーさんらしい。

そして、えのっきーさんはちゃんと聞かせてくれた。
真ん丸く太ったツマジロモンガラのたてる声(おと)。
思ったよりも大きい音だったのでビックリした。
その時、普段、ただ眺めているよりももっとリアルに魚の生命を感じたんだ。
あ、こんなに小さいけれど、この子は生きてる。
そう思った。
凄くリアルに。

今回はずっとマンツーマンだったことも幸いして、えのっきーさんは、「えのっきーさんがやってて楽しいこと」を惜しげもなく見せてくれた。
その一つ一つが、「あ、こういう楽しみ方ってあるんだなぁ」って新鮮な気付きがあって、私の中でダイビングの遊び方の幅がちょびっとだけ広がった気がする。

そういう視点の中で潜ったこともあって、普通に伊豆に潜る以上に屋久島の海の面白さを感じられた気がする。

お天気にも恵まれ、海のコンディションにも恵まれ、屋久島の素晴らしい自然の力にももちろん恵まれた。
だけれど、それらをとことん遊び尽くすことが出来たのは、遊び上手・楽しませ上手なえのっきーさんの絶妙なガイディングのなせる技でもあったと思う。

合計4本潜って、屋久島の海の魅力は、判る人だけが判る。
そんな気がした。

ポイントによっては物凄く地味だし、トロピカルフィッシュなんて全然いない所もある。
ここまで高い旅費を払って潜りに来るなら、沖縄まで行っちゃった方がいいのかもしれない。
そうしたい人は是非そうしちゃってください。
なんて書いてしまいたくなる。
特に、川と無名ポイントは潜ってる人は下手したらまだえのっきーさん位しかいない。
それだけ人の手が入ってない自然がそのままに存在している。
そしてそれを見にいけたことをとても幸福に思う。

まるで自分だけの宝物を見つけたようなそんな気持ちにさせられる。
出来ればあんまり他人に教えたくないような、教えてしまうのがもったいないような、そんな魅力に溢れている。
実際、ここに書いてしまったことをちょっとばかり後悔している。

今のままに、変わらないままに、永遠にあの島でたゆたっていて欲しいと、人間の手前勝手な願いだと判っていても祈ってしまう。

入った瞬間に視界を覆いつくす薄青いゼリーのように柔らかい水。
グローブをはずした手のひらに吸い付いてくる水の感触。
人を恐れない色とりどりの魚達に囲まれて、ゆったり漂う澄んだ時間に永遠に抱きしめられていたかった。


ポイント名:無名(仮称わいわい。近くに屋久島では有名な「わいわいランド」と言う大きなスーパーがあるので)



川で潜る

2005-06-30 | 2005年6月
そして2本目は、念願の川ダイブ。

宮之浦へ向かう大きな道路の途中、屋久島空港と楠川温泉の真ん中辺りに、小さな橋を挟んで、山から流れ込む清流がちょうど池のようにたまっている場所がある。
反対側はもうすぐに海だ。
橋を降りて、とことこっと歩けばすぐに川べりに着く。

器材を背負ってじゃぶじゃぶと川の中に入っていく。
深さは一番深くて3m。
浅すぎてダイブコンピューターではダイブモード表示にならない。

川の水は海の水よりずっと冷たくて、暑い南国の日差しに照らされていた体にはひんやりと気持ち良かった。
ウエイトを海より1キロ余分につけて、とぷんと沈む。

そこには不思議に美しい世界が存在していた。

ハゼの仲間がいっぱい。
でも、海で普段見るハゼ達とは顔も雰囲気も全然違う。

海で見るハゼは人間が近寄るとすぐに逃げてしまう。
でも、ここのハゼ達は、じーーーーっとしていると、ものめずらしいモノを見るかのように、どんどん近寄ってくるんだ。
好奇心旺盛な奴は、グローブなしの私の指に噛み付いてきたりする。
噛むとは言っても、昨日のスズメダイなんかより全然痛くない。
イタ気持ちいい感じ。

クロヨシノボリという顔に赤い筋が入った、歌舞伎役者みたいに派手な奴がいる。
こいつが、もう無茶苦茶面白い。
結構、血の気が多くて、自分と同じくらいの大きさの奴がいると、ぷっと頬をふくらませてから、ぐわーっと口を開けて威嚇する。
その表情がコミカルで、見てて全然飽きない。
つい、面白がって怒らせてみたくなる。

川の両脇は木々で囲まれている。
根は水の中まで伸びて、そこはスジエビ達の格好の隠れ場になっている。
スジエビは、5センチ位の小さなエビ。
そおっとそおっと手を伸ばすと、爪にちょこんと降りてきて、しゃこしゃことクリーニングをしてくれる。
追いかけるとやってくれないから、そーっと手を伸ばしてじっと待っている。

「水面から木が見える」
えのっきーさんに言われて、上を向く。
エアを吐いた瞬間、水面は揺れて判りにくいけれど、エアを吸う時、鎮まったガラスのような水面に一瞬、くっきりと緑が映る。
「あ!」と、エアを吐いたら、すぐに木は揺れて掻き消えてしまう。

ナイトダイビングの時に、水中から月を見たことはあったけれど、水中から木を見るなんて何だか不思議な気持ちだ。

奥の方はちょっとくぼんでいて、そこに山から水が流れ込んでいる。
そこから流れが分岐していて、今、私達が潜っている池みたいに水が溜まる場所と、海へ流れる渓流と別れている。
その分岐点まで行ってみる。

流れ込む水は力強く、側まで行くとシュノーケルがぶるぶる揺れる。
流れが入ってくる手前の岩に掴まり、顔を岩に近づけてみた。

ざあざあざあざあ・・・・。

水の音が、直接、手のひらから伝わってくる。

目を閉じて、しばらくそのまま流れ込む水を感じながら、音に耳をすませた。

いつも川の側で、足だけ水に浸して、岩に腰を下ろして、目を閉じて深呼吸していた。
そうすると、川とシンクロしているような気持ちになれる。

だけど、今、全身を川の水に浸して、流れる音を体中で感じている。
強烈に川とシンクロする。

憧れていた。

綺麗な綺麗な水。

水と一つになりたいって、ずっとずっと思っていた。

あの瞬間、川に抱かれて、物凄く幸せだった。

振り向くと陽の光がいくつもの天使の梯子を川底に下ろし、水は透明な若草色に染まっている。
何て美しいんだろう。

「うまく言えない」
えのっきーさんは川に潜ることをそう表現した。

私も同じ。
何と言えば良いのだろう。
不思議な魅力としか言いようがない。

単純に、綺麗とか、面白いとか、一言で言えない、何かがそこにある。

それにしても遊び上手なえのっきーさんは、川でも楽しそうに遊んでいました。

結構、この川は歩道から目立つ場所にあるんだけれど、そもそもここに潜ろうと思ったこと自体、如何にえのっきーさんが遊び好きと言うか・・・。
実際、川に1時間とか2時間とか潜ってると島の知り合いの人たちには変な目で見られたりしてるそう。
確かに、東京の感覚で言うと、多摩川の水溜りにスキューバ装備で一時間潜っているようなモノだからね。
「ちょっとおかしい?」とまでは言わなくても、「何してるんだ?」位は思われるかもしれない。

潜ったら気持ち良さそうだなー。
と、思って潜っちゃうえのっきーさんを見てると、何でもアリだな、って気がしてくる。

遊ぶことに決まりごとはない。
自分が楽しかったらそれでオッケーなんだ。

そういう自由さを、今回私は、えのっきーさんから沢山学んだ。

魅力って一度掴まるとどんどんハマる。
とらえどころがなくて、言葉にも表現しきれなくて、でも何だか楽しかったりする。
すっかり川に魅入られてしまった。

もっと見て、もっと感じたいなぁと思う。
あの訳の判らない面白さ。
吸収しきれない美しさ。

次はホテルの下を流れていた安房川に潜りましょう!

ちなみに、川の水温はかなり激しく上下するそうで、夏場でも16度まで下がることがあるらしい。
水深が浅いし、動く範囲も少ないから余裕で1時間くらいは潜れてしまうけれど、水温が低いので身体的な問題で1時間が限界とも言える。

川に潜る時は、フードとグローブ必須です。

ポイント名:たぶ川

Photo by えのっきー



ボートダイビング@屋久島

2005-06-30 | 2005年6月
屋久島2日目の1本目はボートダイビング。

実は、私の中で今回の屋久島旅行で一番大きかったことは、ガイドのえのっきーさんと出会ったことだった。
多分、えのっきーさんにガイドしてもらわなかったらここまで屋久島の海にも陸にもハマらなかったかもしれない。
それ位、えのっきーさんが教えてくれた屋久島との遊び方は私のツボにハマっていた。

えのっきーさんのダイビングは単なるフィッシュウォッチングにとどまらない。
ダイビングで遊ぶ。
魚と遊ぶ。
とにかく遊ぶのが上手。
私にとってどれもこれも今まで知らなかったダイビングの遊び方がいっぱいで新鮮だった。

珍しい魚がどうこうよりも、基本的に魚が動いてる処を見るのが好きなえのっきーさんは、ホントに魚の表情をよく見てる。
凄く珍しかったり、綺麗だったりする訳ではない、地味な魚のことでも良く見てる。
普段の伊豆では素通りしてしまうような魚達のコミカルな表情や仕草一つ一つをじいっと見ては教えてくれた。

魚を見せるんじゃなくて、そこにいる魚が何をしているのか、を見せようとしてくれる。

ゼロポイントで中層を泳いでる時、「なるべくゆったり動いて」と、えのっきーさんはスレートに書いてきた。
「魚に嫌われないコツ」だそうだ。
ふむふむ、なるほど、と、浮力を入れて、中層を泳ぐ、と言うよりも漂うカンジにしてみる。
するとツバメウオが私の横、ほんの数センチまで近寄ってきた。
ここのポイントの魚は人を知らないので、ホントに逃げない。
ビックリした。

そろそろボートに戻ろう、とゆっくり浮上していると、えのっきーさんが「追跡されてる」と書いて私の後ろを指差した。
何だろうと思って振り向く。
「ぎゃー!!」
数匹のツバメウオが、跡をつけて来ていた!
魚を追いかけたことはあっても、魚に追いかけられたなんて初めてだ。
ツバメウオ達はなかなか離れようとしない。
水深が10mを切ったあたりで、名残惜しそうに何度も後ろを振り返りながら、ツバメウオ達は去っていった。
「ほらね?」と楽しそうな目でえのっきーさんはマスク越しに笑顔を見せた。
いやもう、私は茫然自失状態です。

私は伊豆で潜っていても、魚よりどっちかと言うと他のダイバーの吐く気泡とか、水面に揺れる太陽とか、そんなモノばっかり見てる方が好きです。
えのっきーさんにそう言ったら、「泡を真上から見たことある?」と聞かれて、よしじゃあ見に行こうじゃないか、となった。

「こっちまで泳いで泳いで」
そう合図されて泳いで行くと、私達の真下を泳ぐ他のダイバー達の吐く空気の泡をちょうど真正面から浴びる処についた。
大きな泡をえのっきーさんがつつくと、それは割れて、無数の細かい粒になる。
その一つ一つに水の色が反射してそれは美しかった。
まるで自然の宝石だ。

ゼロポイントはポイントになって1年足らずらしい。
飛行機のプロペラの残骸が砂地にどかんと落ちていて、そこに魚が集まっている。
見慣れた伊豆の魚達に混じって、南国の魚がうろうろしてる。
まさに沖縄と伊豆の混在。
ペアを作っているクロホシイシモチの群れの中に、正式和名がまだついていないというエビが二匹も潜んでいた。
ホワイトソックスとバイオレットボクサーシュリンプ。
ホワイトソックスは前足のハサミの部分だけ真っ白で凄く可愛い。
一昔前の女子高生みたい。
バイオレットボクサーシュリンプは名前負けしない、艶やかな薄紫色の派手な奴。
こっちは、今風のギャルって感じかな。
ムレハタタテダイが群れをなしているその隣に、ツバメウオの大群。
キビナゴの群集は砂地に薄青いカーペットを作り、そこにえのっきーさんが突っ込んでいくとカーペットはすーっと二手に割れていく。
素晴らしく美しい海だった。


ポイント名:ゼロポイント

Photo By えのっきー

屋久島の朝

2005-06-30 | 2005年6月
翌日も、朝からいいお天気だった。

朝食を取りに行くと、昨日のおばさんはいなかった。
もう山に向かったんだろう。

着替えなどを準備して、えのっきーさんのお迎えを待っていると、何だかいても立ってもいられなくなってしまい、ホテルの下の安房川まで降りて行ってみた。

ホテルを出てすぐの処に小さな橋がかかっていて、橋の袂から川べりへ降りてゆける。

川の水は呆れる位に澄んでいた。
ここは山と海が近いので、川の水は清流のまま、直接海に流れ込む。
裸足をつけてみると、冷たくて気持ちいい。

見上げると青い空。
すぐ近くには濃い緑の山。
近くに小学校があるのだろうか。
ランドセルを背負った子ども達が橋で待ち合わせをしている。

気持ち良い朝だなぁ。

心までも伸びをしてるような気分。
私にとっていつからか都会にいるということは、それだけで時間との競争になっていた。
きっと、仕事を始めてからだと思う。
「無駄」をとことん排除するようになっていた。
必要なモノだけ見極めて、いかにロスを無くすかということを常に考えている。

人生の息抜きって、ホントはその「無駄」の部分にこそ沢山あるのに。
こうやって空を眺めたり。
昨日みたいに寄り道していい景色を見たり。
そういうことを全部忘れていたんだなぁ。

いや、忘れようとしていた。
自分の中の「楽しむ力」や、「生きる魂」を自ら閉じ込めてしまっていた。

都会にいると、それらは物凄く邪魔に思える。
だけど、今、屋久島でこうやって朝を味わっていると、やっぱりこっちがまっとうだよなって思う。

人間はロボットじゃないのに、ロボットになろうとしていた。
それも、真面目で完ぺき主義な私は、物凄くきちんとロボットになりきろうとしていた。

辛かった。

私はロボットになんかなりたくなかったし、こうやって綺麗な川が側にあって、山が見えて、空が青くて、それだけで幸せだって思える気持ちがちゃんと生きているのに知らず知らず、殺そうとしていた。

それがオトナになる、ということだと思っていた。

そうなんだろうか。

何だかよく判らなくなってきた。

何だか、ここにいると、今が良ければそれでいいじゃん的な気持ちになっちゃうみたいだ。

もちろん、現実的に私は大人で、責任もあって、お金のことも考えなければならなくて、身体を壊してて、仕事も休んでて、この先のことを考えると不安だし、焦るし、もうどうすればいいんだろうって思うけど、少なくとも今は、とりあえず身体も元気で、お金もそこそこにあって、誰にも迷惑かけてなくて、雨が多いと言われてる屋久島なのにこんなに良いお天気に恵まれて、川の水は綺麗で、何かもうそれでいいじゃん、って思う。

何ていうか、ごちゃごちゃ考えてたら、この島の美しい部分をちゃんと感じ取れなくなってしまうって思うんだ。
難しいことを考えてる暇があったら、目や鼻や、手や、使える器官を全部総動員してこの島のこの空気をもっともっと感じようよって思う。



屋久島ロイヤルホテルにて

2005-06-29 | 2005年6月
今回泊まったホテルは屋久島では老舗と言われる屋久島ロイヤルホテル→HP(http://yakushima.co.jp/royal/)。

安房川と言う美しい川のほとりにあり、山の眺めが素晴らしい。

シングルで予約を入れたにも関わらず、部屋が莫迦に広い。
リビングがあって、ベッドルームがあって、和室があります。
この際だから思いっきり散らかし放題にしてみたら、すぐに何がどこにあるのか判らなくなって、結局ちんまりと部屋の隅っこに荷物を寄せておいた。
こんなに広いのに、全体の3分の1くらいしか使えてない・・・。
勿体無いような・・・。

夕食を食べに広間に降りて行ったら、三つ分の食膳が用意されてあった。
そのうちのひとつには、50代くらいのぽっちゃりとしたおばさんが陣取って美味しそうにビールを飲んでいた。

私はその隣にぺたんと座る。

屋久島には一人旅が多いと聞いたけれど、たまたまこの日の夕食にはひとりで来てるお客さんしか集まっていなかった。
もうひとりはまだ山から帰って来てないらしい。

最初のうちは私もすまして一人でさくさくと食事をしていたけれど、そのうちおばさんが話しかけてきた。
もともと人懐こい方のようだった。
今日はどこを見て来たの、と言うような話で盛り上がる。

おばさんの方は、今日は白谷雲水峡に行き、明日は朝5時に起きて、縄文杉を見に行くらしい。
噂の「10時間登山」だ。
凄いなぁ。
こう言っては失礼なんだけれど、私より遥かに太ってらっしゃるし・・・決して運動が得意、と言うような風には見えないのに。

私は今回、ダイビングだけ出来ればいいや、としか思ってなかったから、こんな風に屋久島そのものを満喫しようとされてる方を見ると、何かちょっと自分が勿体無いことをしてるような気持ちになってしまう。

そうこうしてるうちに、遅れていたもうひとりのお客さんがやっと戻ってきた。
若い男性で、新聞記者とのことだった。
彼は今回、仕事で縄文杉の取材に行ってきたそう。

と言うことは、今日、さっきまで山を登ってた訳だ。

皆、凄いなぁ。
やっぱり、屋久島=縄文杉なんだ。
うーん、でも私は10時間も登ってまで見に行こうとは思わない。
何だろう?縄文杉までわざわざ行かなくても、この島って、そこらへんに川とか林とか、海とか、いっぱい見てて楽しいモノが溢れてるような気がする。
さっき見てきた橋からの眺めみたいに。

ところで、見知らぬ者同士の夕食はなかなか和やかに進んだ。
何だか、同じように屋久島に惹かれてやって来たんだと思うと、変に連帯感が沸いて来てしまう。
おばさんは明日、縄文杉に行くので、男性から情報を仕入れたりしてた。
私も海のことを話したり、あさっての最終日は飛行機に乗るからダイビングは出来ないので、どこに観光に行けばいいか、なんてことを聞いてみたりして、結構楽しく過ごした。

もともと一人旅は好きで京都や西伊豆の方に行ったことはあるけれど、いつもペンションとかに泊まっても周りは大抵、友達とか恋人、家族と一緒に来てて、旅先で人と仲良くなるってことがあんまりありえなかった。
だから、正直、旅先で誰かと知り合いになるって、凄く憧れていた。

屋久島って、いいな。
ますます、好きになりそう。




恋に堕ちた瞬間

2005-06-29 | 2005年6月
一旦お店に戻って、ログ付けをした後、えのっきーさんが泊まってるホテルまで車で送って行ってくれることになった。

夕日が林に差し込んで、「ああ今日も一日が終わる」と言う気持ちにさせられる。
ゆっくり夕焼けを楽しむ感覚を久しぶりに思い出したと思った。

この時、大きな橋を渡ったのだけれど、そこからの眺めが素晴らしかった。

もともと車の交通量が都会と比べると極端に少ないけれど、地元の人しか通らないような裏道に入ってしまうと、まったく、と言っていいほど車も人も通らなくなる。
その裏道にある大きな橋の真ん中に車を停めてもらう。

茜色に染まった空にこんもりと山がそびえている。
木々に陽光が反射して、山も金色に光って見える。
橋の下は緑で埋め尽くされていて、真下にある川は切れ切れにしか見えない。

車も誰も通らない。
ちょっとぞっとする。

あまりにも壮観すぎる眺めと、ここに夜が来たら、と言うことを思うと。
橋の両脇には街灯なんてシャレたモノはなくて、つまり夜になったらここは真の暗闇に閉ざされてしまうということだ。
この素晴らしい眺めを創り出すことが出来る自然を目の前に、私はあまりにもちっぽけ過ぎた。

何となく、この時、やっと私は自分が今、屋久島にいるんだということを実感したんだと思う。

都会にいる限り、夜がやってきても、困るような場所はあんまりない。
数メートルも歩けばコンビニがあるし、タクシーは走ってるし。
だけど、例えばこの橋の上に置いて行かれたら・・・考えるだけで怖すぎる。
そこにあるのは、自然の落とし穴だけ。

そういう場所が普通に存在してる。
ということを実感した時、私は、自分が今いる場所が屋久島なんだ、と言うことをリアルに感じたんだと思う。

人間がまだ弱くて、かなわない自然の力がすぐそこに生きている。
でも、その自然の力があるからこそ、こんなに素晴らしい景色を創り出せている。

この島はそういう場所。

例えば、都会で女性の一人歩きは怖い、という時、恐怖の対象は人間であるけれど、この島で夜、ひとりで歩いたら怖いよ、というのは、人間じゃなくて、人間ならざるモノ、の方を心配した方が良いんだろうね。

だからと言って屋久島は怖い所だよ、なんて言う気は毛頭、ない。
昔から自然は人間にとって「畏怖」の対象だった。
「畏怖」があるからこそ、憧れる。
憧れて、魅了される。

「あー、アタシ、今屋久島に来てるんだぁ・・・」

今頃になってそんなことを言った私を、えのっきーさんは笑ったけれど、私はきっとあの時、屋久島に滅茶苦茶、ハマったんだと思う。





初ダイビング@屋久島!

2005-06-29 | 2005年6月
地元道をぐるーっと抜けてたどり着いた小さな港。
南国の真っ白な陽射しが照りつけるばかりで、コンクリートが眩しい。
人も舟もいない。

さて、どこからエントリーするんだろう。

って言うか、ダイビングサービスは・・・??
あれ、そう言えばタンクは車の後ろに積んである・・・。

伊豆を拠点にダイビングをしている私は、まずダイビングサービスがないという事実に軽くカルチャーショックを受けた

ダイバーであれば判ると思うけれど、通常伊豆などダイビングが盛んな場所で潜る場合、ポイントごとにダイビングサービスが点在していて、ダイバーはそこで潜る人数などを申告する必要がある。
サービスの方ではその申告を受けて、タンクを用意してくれる。

が。
さすが、屋久島、ダイビングサービスなんて物は存在しませんでした。
伊豆では通常、エントリ・エキジット時間もポイントごとに決められているけれど、ダイビングサービス不在の屋久島では、好きな時間までエントリすることが出来る。

この時既に15時近かった為、エントリ時間を気にしていた私は、一気に拍子抜けしてしまった・・・。

堤防によじ登って、海を見渡しながらブリーフィングを受ける。

って言うか、どこからエントリーする訳・・・?
まさか、この堤防からどっぽんと入るとか?

「あそこから入る予定なんだけど」
そう言ってえのっきーさんが指差した先は、小高い崖でした・・・。




はい??

崖と言うか、よくある切り立った崖、と言うのでもなく、高さはそれ程でもない。
よくあるプールの飛び込み台の一番低いヤツよりもうちょっと低い、くらいの高さだろう。

が、足場が悪い・・・・。
試しにスニーカーで近くまで行ってみたけれど、安定しない岩場の急斜面になっている。
ここをスキューバ装備して降りてゆくのか・・・。
一歩間違えたらジャンプして海中に降りるより滑って転がり落ちる可能性の方が高いかもしれない。

何よりも、エキジットの時、どうやって上がるんだ??

申し訳程度に岩場にロープがくくりつけてあって、えのっきーさん曰く、これに掴まりながらエキジットするということだけれど・・・スキューバフル装備で、このロープに掴まって、しかもタダでさえ濡れて身体が重くなってるエキジット時によじ登れる腕力が、私にあるとは思えない。

これが屋久島のダイビングですか・・・・・・。

ダイビングサービスがないってことは、当然エントリ口が整備されてる訳でもなく。
まさに、その辺の岩場からどっぽんと海に入る訳。

この時点で、かるーく、挫折しました・・・orz

ダイビング本数300本の経験はあっても、整備整頓の効いた伊豆でぬくぬくと潜っていた私に、屋久島のダイビングは余りにもハードルが高すぎた。
ああ、ごめんなさい。屋久島の海を甘く見てました。やっぱりここは屋久島でした。すみません。すみません。

もう屋久島でダイビングできないのかなぁ。こんなにすぐ近くに海があるのに。畜生、悔しいぞ。
こうなったら多少、無理してでもあの崖からダイブするしかないのか?

と悶々してたけれど、さすがえのっきーさん、伊達に10年近く屋久島でプロの潜り屋さんをやっていた訳ではなかった。
私のビビり具合を見てとると、さくさくと次のポイントへ移動し始めてくれた。

でも、屋久島ってどこもこんな調子なんじゃないの?
伊豆でぬくぬくと甘やかされて育ったダイバーである私ごときに潜れる場所なんて果たしてある訳?

で、次に着いた処は、見渡す限りの大礁原。
ここは砂浜ではなく、珊瑚礁の跡が一面を覆いつくしている。
ダイビングブーツがないとごつごつしていてかなり歩きにくい。

でも、さっきより足場は全然まともだ。
潮が引いていて、多少、と言うか、半端じゃなく遠浅だけど、まぁ、大瀬崎の引き潮の時みたいなモノだ。
波もないし、全然イケる。
やったね。

車を停めて、準備して、いざエントリー。

うわっ、何だこれ、水があったかい!
って言うか、熱い!
つい先週あたりまで、水温20度ぎりぎりの伊豆の海で潜っていた為、冬用のグローブをはめていたんだけれど、それがうっとおしく感じる位、水があったかい。

しかも、物凄いサーモクライン。
後から聞いたけど、屋久島の海は山ととても近いので川からの冷たい水が直接流れ込んでくる。
川の水と海の水が混ざり合う海岸付近は、温度が入り乱れている為、サーモクラインがバブル発生しているのだ。

サーモクラインをかき分けてかき分けて、泳いでゆく。
ようやくサーモクライン層を抜けた頃、思わず息を呑んだ。

すっごい水が綺麗。

陽射しが揺れて、礁原に影を作る。
とおーく、どこまでも淡い水色。

普段、伊豆で滅多に見られない南国の魚達が当たり前の顔をして泳いでる。

憧れていたシンデレラウミウシ。
ラベンダー色が鮮やかだ。
卵を守っているセダカスズメダイは気性が荒い。
ウエットスーツの上からでも噛み付かれるとかなり痛い。
まぁ、この子にしてみたら自分の頭上をこんな奇怪でデカイ生き物が泳いでいくんだから、ゴジラみたいに見えるのかもしれない。
気の毒と言えば、気の毒だ。
でも、何もしてないのにゴジラだって噛み付かれて痛い思いをしてるんだからね。

伊豆では探さないと出てこないクマノミは、ここでは飽きるほどに沢山いる。
クマノミのバーゲン状態。
アイラインがけばいハタタテハゼ。

大ヒットは、クロなまこに隠れているウミウシカクレエビ。
ホントはやっちゃいけないことなんだけれど、地表をもぞもぞと這いずり回っているクロなまこをそっと裏返すと、ち~さな、ホントに小さな、1センチにも満たない半透明のエビがくっついてる。
このエビ君、なまこをひっくり返されて、見つけられてしまったので慌てて、ひっくり返ったなまこの裏の方に逃げようとするんだけれど、その逃げ方が秀逸なんです。
こそそそっと動くのではなく、ずるーっとなまこの表皮を滑って裏側に逃げ込むんだけれど、滑る時、何故か両手のハサミをバンザイ状態に広げ、大の字になってずるーっと行く訳。

これは、笑えます!!

とおーくの方にカメが泳いでいた。

あったかくて、気持ちよくて、いつまでも潜っていたいなぁ。
海の中にいると、たまに陸に戻るのが物凄く嫌になっちゃう時があるんだけど、今日の海はそんな感じだった。

ああ、いいなぁ屋久島の海。
もうこのまんま、ぷかぷかと綺麗な水の中で漂っていたいなぁ。

とは言っても、エアもそろそろ切れてきたので、渋々、エキジット。
さっきより更に遠浅に感じるビーチをずるずる、べったべった歩いて陸へ。

一時は潜れないかも・・・と思ったけれど、ちゃんと潜れて良かった~。
今日はもう時間が遅かったので1本で終わりだったけれど、明日は丸一日、ダイビング三昧だ!
何か、川にも潜れるんだって。
うきき。
楽しみー。

潜ったポイント:志戸子








屋久島の印象

2005-06-29 | 2005年6月
小さな屋久島空港に降り立つ。
空港の向こうにはこんもりとした濃緑の山。
空気はむわっと熱い。

でも、一番「違う」と感じたのは、空気が軽いことだった。

この時期の都会の空気はいつだって重くて、じっとりしている。
喘息持ちで気管支が弱くて、いつも肩凝りやら眼精疲労やらに悩んでいる私は、時々都会特有のこの重たい空気の中で息が詰まりそうになることがある。

この島はそれがない。
確かに熱いし、湿度も高いけど、空気が軽い。
さらっとしている。

縮こまっていた肩から、ふっと力が抜けていくようだった。

空港までお迎えに来てくれたYMSのえのっきーさんとお会いした後、そのまま車でショップへ向かい、支度を済ませて早速海へ。

宮之浦を越えて、一湊へ車を走らせる。

右側は海、左側は山。
道路の道沿いには雑草がぼさぼさっと生い茂っている。

うーん、でも何だか、イマイチ、モードが切り替わらないんだ。
伊豆のちょっと田舎、みたいに思ってしまう。
空気は確かに違うんだけれど、こうして車に乗って窓の外を流れる景色を見てると、どうにも「屋久島に来た!!」って実感が沸いてこない。

と言うか、日常モードにがっちりと縛られているので、旅モードに入りきらないんだろうな。
それに、これまで私はダイビングで伊豆にはしょっちゅう行ってるけれど、こうやって飛行機を乗り継いで、こんな南の方までひとりでやってきて、旅らしい旅なんて、やったことなかったんだもの。
伊豆はもう何十回も行ってるし、電車で2時間もすれば着く処だから、私の中では旅行と言うほどのモノでもない。

生まれて初めて、ひとりで旅らしい旅、みたいなモノをやっちゃった訳だから、モードが上手く切り替えられない。

「屋久島、屋久島・・・ここは屋久島・・・。って言うか、どの辺りが屋久島??」

そんなつぶやきを乗せて、車は一湊へ向かいます。

屋久島上陸!

2005-06-29 | 2005年6月
すったもんだありましたが、ようやくエアコミューター内で落ち着きました・・・・。

プロペラジェットなだけあって、こちらは普通の飛行機より客席同士が近いし、飛行機のエンジン音やゆれがもっと直に伝わってくる。
それに窓から見える景色も近い。
もともと高い所は好きなので、さっきまでダッシュしてたことも忘れかけてはしゃぎだす。

ちなみにエアコミューター内ではサービスで飴を配ってくださってるんですが、JACと書かれた緑色の包装で包まれたレモン味の飴はめっさ美味いです!!

そうこうしてるうちに、ぐぐっと高度が下がってきて、窓の外一面にエメラルドグリーンに光る海が迫り始める。
うわぁ~!!

自分がこれからこの海で潜れるなんて、嘘みたい。
早くも心が躍る。

そして、濃緑に包まれた島。

出発する時、東京は雨が降っていたけれど、島はピーカンだった。


行きの飛行機トラブルその2

2005-06-29 | 2005年6月
その2

ぜいぜい肩で息しながら、何とか鹿児島行きの飛行機に間に合い、無事離陸。

と、書きたかったんだけれど・・・。

飛行機体験のある方はこれもまた良くお判りかと思いますが。
飛行機って予定通りに離陸することは、まずありえない。

現に私の乗った飛行機も10分位押してたんですね。

ところで、屋久島に飛行機で行くには、まず羽田から鹿児島へ行き、更に鹿児島からエアコミューターと言うプロペラエンジンの小型飛行機に乗り継がなければなりません。

この時点で懸案事項がひとつ。

私の予約している飛行機は、鹿児島に到着して、エアコミューターに乗り継ぐまでの間の時間が25分程しかないということ。
つまり、羽田を離陸した時点で10分押していれば、当然着陸時間も10分遅れると見た方が良い訳で。

・・・・乗り継ぎ、間に合うのか??

私はでっかいキャリーバッグを預けていたので、鹿児島に着いた時点で、荷物を受け取り、それからチェックインを済ませる時間が必要になる。
かなりギリギリかなぁ・・・と心配になった。

でも、現時点で飛行機は鹿児島に向かって飛んでいる訳だし、ここで考えていても仕方ないし、まぁ、何とかなるっしょ・・・。

朝一番の鹿児島行きに乗る為に、相当な早起きをしなければならなかった私は、無駄にダッシュしなければならなかったこともあって、その時点で少し眠くなって来てしまったので、飛行機が安全態勢に入ってしばらくしたらストンと寝てしまった。

で、結論。

何ともなりゃしなかった。

鹿児島空港に到着した時点で時間は到着予定時刻ぎりぎり。
そこから再びダッシュで荷物受け取りに向かうも、その荷物がなかなか出て来ない。
その時点でおよそ10分も待たなければならなかった。

次の屋久島行きの飛行機に乗るには、5分後には搭乗口にいなければならない。

顔面蒼白。
でっかいキャリーをひっつかんで、鹿児島空港を駈けずり回る私は、誰が見たって「大慌て」なヒトだったのでしょう。

「お客様!?どうかされましたか?」
と、スチュワーデスのお姉さんが声をかけてくれました。

「あのっ!あの、これ、この、この飛行機に乗らなきゃならにんですっっ!!」

藁をもすがる勢いで、お姉さんにチケットを突きつける。

お姉さんはカウンターに声をかけ、即座にチェックインの手続きに入ると同時に、もうひとり、カウンターの人が電話をかけ始めた。
聞きかじっただけだったけれど、恐らく飛行機に待機連絡を入れていたのだと思う。

結果。
荷物を預けることはその時はもう出来なかったので、最初に声をかけてくれたお姉さんがキャリーを持ってくださり、2人で搭乗口まで走ってゆくことになった。

息せききって、ボディチェックを抜け、搭乗口へ。
エアコミューターは普通の飛行機みたいに搭乗口と飛行機がくっついてる訳ではなくて、滑走路を横切ってゆくのです。
お姉さんと私、滑走路を走る・走る。

結果、何とか飛行機には間に合ったけれど、私はもう一つ勉強しました。
乗り継ぎの便には余裕を持たせること。

それにしても、スチュワーデスのお姉さんって凄い。
あのデッカイ、重いキャリーを、あんな細いお姉さんががらころ引きずってダッシュで走ってゆけるんだもんなぁ。
火事場の馬鹿力とも言うけれど。

それにしても、一体何の為に2時間も早く羽田に着くように手配したのか・・・とほほ。


<後記>
飛行機を乗り継ぐ時、最初にチェックインする空港で「乗り継ぎ」と言えば次の空港でいちいち荷物を受け取って、またチェックインするなんてことをしなくても済むんだってことを、この時まだ私は知りませんでした・・・。







行きの飛行機トラブルその1

2005-06-29 | 2005年6月
その1

羽田空港に到着して、チェックインを済ませる。
手荷物も預けて、さて。
チケットには「15分まえまでに搭乗口まで起こしください」とあるので、「なーんだまだ時間あるじゃん」と、空港内の本屋さんなどをぶらぶらしながら時間つぶしをしてた私。

その時既に間違っていた・・・。

私は搭乗口のことをゲートのことだと思い込んでいたのです。
あの、ボディチェックとかする所、あるじゃないですか。
あれを搭乗口だと思ってた訳。

飛行機体験のある方なら、私のアホさ加減がお判りになるでしょう。

「まだ時間あるけど一応初めてだし、気持ち早めに搭乗口に行こうー、っと」
なんてのほほんとした気持ちで、ゲートに向かった時、既に20分前。

当然のことながら、ゲートって言うのは割りと並ぶ。
この時もちょっと並びました。
以前、沖縄ツアーでチェックに引っかかった私は、緊張気味にゲートを抜けて特に何も言われなかったのでホッとして荷物を担いで、さぁ行こう!えーと、8番ってどれだ、8番8番・・・・・。




・・・(-◇ー;)!!

8番ってあれかいーーーーー!!!!


飛行機体験のある方ならお判りかと思いますが。
搭乗口って、モノによってはゲートからものすんごおぉーーーーーーーく、遠い。
途中、動く通路まであったりして、下手したら5分や10分は歩かなければならない位、遠くにあったりする。

たまたま私の抜けたゲートと、搭乗口はめっさ離れていました・・・・。

その時、私は勉強しました。
搭乗口とゲートは違うものであること。
そして、ゲートは少なくとも搭乗口にたどり着かなければならない時間の10分前までには抜けなければならないこと。

その時既に、「15分前までには搭乗口にいらしてください」の15分前。

ダッシュしました。

実は、羽田空港の地理があまり良く判ってないという懸念もあり、搭乗する飛行機のおよそ2時間前までに空港に着くようにリムジンバスを手配してた私。
せっかくかなりのゆとりを持って空港に着いたのにダッシュしなければならない状況を作り出した自分のアホさ加減にはもう何も言えませんでした。

屋久島前日

2005-06-28 | 2005年6月
そもそも私が屋久島に行こうと決めたのは、この春にストレスで身体を壊して、しばらく仕事を休むことになり、突然現れた長いお休みに対して、面と向き合いきれなかったからだった。

一番忙しかった時に、仕事を途中で放り投げるようにして休んでしまった自分にも、具合が悪くなるばかりで気管支喘息の為にいつだって呼吸がしづらくて苦しい自分の身体にも、今の自分の置かれている状況に対して肯定を出来ない自分の心にも、何もかもうんざりしていた。
仕事を休むことになってホッとした気持ちはあっても、嬉しい気持ちには全然なれなかった。

仕事に行かないと一日が長い。
その長い、暇な一日の中で、莫迦みたいに真面目な私は、自分自身と向き合い続けることしか出来なくて、苦しいばっかりだった。

そんな時にたまたま読み始めた田口ランディさんのエッセイ本にハマった。
コトバに出来ない自分自身の辛さや苛立ちや焦りや不安が、田口ランディさんの書く文章を通して、表現されていた。

田口ランディさんは屋久島が大好きで、ご自身も一番辛い時に屋久島に行って転換期を迎えられている。
その時のことはランディさんの書いたどのエッセイ集の中にもちらほらと述べられている。

もともと去年の秋にダイビングツアーで屋久島に行く筈だったけれど、風邪でキャンセルしてしまった。
私の中で屋久島は一度は行ってみたい島。

せっかく仕事も休みなんだし、思い切って行ってみようかと思った。

とは言っても、その時私の中で屋久島に対する印象は、映画「もののけ姫」程度のモノだった。
そして、スキューバダイビングを趣味としていた関係で、森や山には殆ど興味がなく、屋久島の海で潜れればいい、と思っていた。

そこで知り合いのダイビングショップを通じて、屋久島マリンサービス(通称YMS)を紹介してもらい、と言うか、ショップのHPのリンクを辿って、YMSにメールを送り、YMSのHPにリンクしてある旅行会社を辿り・・・そろそろと、屋久島行きの準備を始めた。

実は私は27年間生きていた中で飛行機に乗った経験は一度しかない。
飛行機の予約の手配すらも自分ではやったことがなかった。
そんな箱入り娘の私が、初めてひとりで飛行機に乗って、本土から更に遠い島へ渡ろうとするのだから、どこから手をつけたら良いのやらさっぱりだった。

幸いにしてYMSのHPにリンクしてある南西旅行開発という旅行会社は、親切かつ丁寧で、私の送った「屋久島に行くのは初めてなんですが・・・どのようにすれば良いのでしょう」みたいなアホなメールに対して、即、旅行予定日と希望価格に見合ったツアーをいくつか提案してくれた。

とにかく目的はスキューバダイビングだったので、観光は二の次、と言うか、どうでも良かった。
車の免許がない私は、YMSさんの送迎エリア内にある宿の希望とダイビング込みでおおむねの予算を条件として、ツアーを選んだ。

何せ、最初の飛行機経験は友人がすべて計画・手配してくれた沖縄ツアーだったので、今回の屋久島が実質上自分で手配する初めての飛行機旅行。
結果的に旅行会社に丸投げする形になってしまったけれど、その分、面倒なことは何もなかったし、本当だったら個人で手配すればもうちょっと安くなったモノもあったかもしれないけれど、そこは仕方なかった。

YMSさんにダイビング器材をあらかじめ送っておき、後はいつもの伊豆にダイビングに行くのとあまり変わらない気持ちで荷物の準備を済ませる。
気になると言えば、「一年に365日雨が降る」といわれている屋久島のお天気。
6月末の旅行日は梅雨明けしてるかどうか、かなり微妙だったけれど、前日までの天気予報では雨の確率も低かった。

気持ち的にはかなりスムーズに準備が進んでいたので、ホッとした。
例えば準備の段階で、なかなか物事が進まなくなるとそれは私の中では「行かない方が良い」と言うサインなので。

と言うか・・・屋久島に行くことよりも、飛行機に乗ることの方が私の中では緊張度が高かった。
大体、羽田空港の地理さえもろくに判らないし・・・飛行機のチェックイン・チェックアウトの手続きさえも以前は友達に全部やってもらったようなものだったので、実際にどんなことをするのか、なんて良く判ってないし・・・。
前日、私が一番気をつけていたことは、JALとANAではターミナルが異なるので、それを間違えないようにしよう、と言うことだったりして。

自宅から羽田までの交通経路も良く判らないので、近所の駅から出てるリムジンバスの予約まで入れてしまった。
少しでも安心した気持ちで飛行機に臨めれば・・・と思って。

そんなこんなで、明日からいよいよ屋久島です。

って言うか、飛行機です。
大丈夫か私・・・。