青みかんと準惑星

小ネタ乗せようかと思ってます。
時々二次系の下書き・・・

極先 原作ver コネタ 続き

2008-02-29 22:55:42 | 二次系 極先
久美子がてつとミノルと話していると、そこに慎が入ってきた。学校が終わってから、来たらしい。
「こんちは」
「おっ、慎さん。ご苦労さまです」
てつとミノルが、ほぼ、同時に挨拶をする。
久美子は一人、顔を赤らめた。
昨日のこと、一昨日のことが、フラッシュバックする。
「お嬢、どうしやした?」
一人で顔を赤らめている久美子に気づいたミノルが、久美子にたずねる。
「なんでもないよ!」
顔を赤らめて怒る久美子にぽかんとするミノル。
てつももちろん不思議顔で久美子を見た。
久美子は組のものに、慎とそういう関係になったことを伝えていなかった。
「山口、調子はよくなった?」
久美子の近くに行き、慎が尋ねる。
慎の顔が、わりと、久美子に近い。
カァァ…と、久美子の顔はますます赤くなる。
慎が近づくだけで、甘酸っぱいものが、胸をいっぱいに広がる。
こんな自分をてつとミノルには見せられない、そう思った久美子は、「ええと…、てつ、ミノル、今日は帰っていいよ!」と赤い顔で言った。
逆らうとどんな目に合うかわからない。
怪我が治ってから、喧嘩の稽古の相手をさせられるかもしれない。
「へい」
てつもミノルも素直に返事をして部屋を出て行った。
慎は二人の出て行ったドアをしばらく見つめ、久美子のほうに振り返るとにやりした。
「お前も俺と二人きりになりたかったの?」
「何、馬鹿いってんっ!!」
久美子は、大きな声で、否定していた。
「ここは、病院だぜ」
そういいながら、慎が久美子の唇を塞いだ。両方の手で、頬を覆う。
「んっ…」
慎の髪の毛から香るシャンプーの香りが、久美子の鼻腔をくすぐる。
あ…、いい香り…。
そう思った瞬間に、慎の舌が唇を割って、入ってきた。
初心者の久美子は驚いて、慎を離そうとするが、そのまま、押し切られて、深い口付けをした。
しかし、久美子が呼吸困難になってしまって、長くはもたなかったが…。
唇を離したあと、「ううっ…」と久美子は唸る。
日々、慎のペースに巻き込まれていく。
私は一体、どうなるんだろう…?

---

haijiさん、続きを書いてみたよー!
慎ちゃんに教育?されてく久美子…。

10年目の嵐 52

2008-02-25 00:27:53 | 二次系
耳をドアにつけて、私は中の様子を伺った。
魅録の甘い溜め息が聞こえる。
私は身体中の血が凍りつくかと思った。
娘と、魅録が関係を持っている。
しかも、菜々子の大事なリサイタルの日に!!
怒り心頭していた。
ドアを開けようとしたがあかず、殴りつけるかのように叩いた。
「萌々子、開けなさい!」
菜々子に配慮して、萌々子の名前を呼んだ。
魅録の名前を呼んだら、あの子はびっくりするかもしれない。
ここで名前を連呼したら、私と魅録の仲をかなり怪しむだろう。
もう、そんな関係にはなり得ないが。
数度名前を呼ぶとカチャリとドアがあいた。
萌々子が顔を覗かせる。
私は急いで中に入ると後ろ手で鍵を閉めた。
「魅録、ファンデーションのついたシャツがズボンからはみ出してますわ!」
魅録に注意したあと、萌々子を見た。
「萌々子も顔がまだらですわよ!」
私は怒りをあらわにしながら二人に言った。
萌々子が魅録の下半身に顔を寄せていた、というところだろう。
こんなところに出くわすなんて。
久しぶりに見た魅録はそれなりに貫禄がついて、たぶん、もう少し違うタイミングで会っていたら、心惹かれたかもしれないが、だらしない格好で、情けなく青ざめた表情をした魅録には全く魅力はなかった。
一方、萌々子は不敵な笑みを浮かべて私を見ていた。
その萌々子の表情が気に入らなくて、ついきつい口調で言った。
「萌々子、夫がいる身で、他人様(ひとさま)に誤解を招くような行動はつつしみなさい!それに今日は菜々子の大事なリサイタルの日ですのよ!こんなところを週刊誌なんかにとられたら、菜々子の人生が目茶苦茶になってしまいますのよ!」
萌々子の表情が曇る。
「菜々子のリサイタルだからどうだって言うのよ。いつだって、母様は菜々子、菜々子。何においても私より菜々子優先…。私は魅録さんと合意の上でしたいことをしてるだけだわ。母様に何か言われる筋合いなんてない。」
確かに私は萌々子より菜々子優先だった。頑張っている菜々子のほうを応援したかった。
萌々子の心境を思うと気まずくて、私は魅録を睨んだ。
「魅録も、魅録ですわ!私の娘とわかってて…。その上、何もこんな場所でしなくともいいじゃありませんこと!」
魅録はうなだれた。それは更に情けない姿だった。
「母様、ここじゃなければ、いいのね?」
萌々子が挑むような目で私に問い掛ける。
「そうよね。ここじゃなければ、何処でも…。子供を生んだっていいんだわ」
私は驚いて、萌々子を見つめた。
「萌々子…」
魅録も、掠れた声で萌々子の名前を呼ぶ。
「私、知ってたわ。彌緑ちゃんが母さまと魅録さんの子供だって。あの日、魅録さんが冗談めかして弟だと言ったけど、それは本当のことだとピンと来たわ。母様が生んだ子供はいなくなってしまったんですもの」
あの時、萌々子は気付いていないのではないかと思っていたが、やっぱり気付いていた。気付かぬふりをしていた。
萌々子は意地悪そうな笑みを浮かべた。
「私は美童とも、寝たのよ。母様が彌緑ちゃんを妊娠・出産してた頃よ」
「萌々子…!!」
血の気が引いていく。
「それに、今、母様と寝ている一生の家庭教師は、私の知人の弟で、私とも寝てるのよ。母様と寝たあと、私を呼び出して、抱くの。ハリのない母様より私がいいって…」
「萌々子!」
私が萌々子を叩こうとする前に魅録が萌々子を叩いた。
私は驚いて魅録を見た。
「どうして?」
頬を押さえながら萌々子は魅録を見た。
「言っていいことといけないことがある、萌々子。それに君に流されるように、俺は君と関係してしまった自分が言うのもおかしいが、自分を粗末に扱ってはいけない」
「母様と同じことをしてるだけよ、何が悪いと言うの!?」
私と、同じこと…。
ズキンと胸に傷みが走った。
私は悪いことをしていないのに、罪悪感を感じた。
魅録は軽く溜め息をついたあと、憐れんだ顔で萌々子をみた。
「君を抱いているとき、誰も君のことを愛していない。旦那だって、そうだろう。君も言ってたじゃないか。形だけの夫婦で、排卵日にしか関係を持っていないと」
「そうよ、彼は自分の子供が欲しいだけよ!愛されてなんかいないわ!」
私の知らなかった事実。
ゲイの夫を持ったときの私のようだった。私の場合は、触れられもせず、不妊治療で萌々子達を授かったが。清四郎と寂しさから関係を続けていた。
萌々子と私がダブって見えた。
「萌々子…」
涙をためて、魅録を睨む萌々子を抱きしめたいと思った。が、魅録が言葉を続けた。
「萌々子、少なくとも…、野梨子の場合は、皆、野梨子には夢中になっていた。まあ家庭教師は違うと思うが」
確かに、清四郎ですら、最初は私に夢中だった。
美童は今でも私を愛してくれている。
愛しているから、身体の浮気を勧めた。お互いの生活のスパイスの為に、と。
「君のことを、愛してくれた人はいないんだ」
魅録の一言に、空気が凍りついた。
萌々子の目に涙が溢れだす。魅録を睨みつけた。
「私は、誰からも愛されたことはないわ!」
私の方を見据える。
「実の母からでさえ!」
駆け出して、部屋を出て行った。
「ごめん、言い過ぎだった」
魅録は私にそういうと、萌々子の後を追った。
一人、部屋に取り残された。
時計を見ると休憩時間は過ぎていた。
せっかくのコンサートなのに、聴きに行く気にはなれなかった。

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やっぱり、ばればれでした。
萌々子に。
リサイタルでしゅらばって・・。

ウラ。
to be with ・・ 若干内容変えたのを載せてみました。

極先 ゲンサクver コネタ

2008-02-25 00:23:52 | 二次系 極先
私は昨日、雑賀の知り合いの暴走族にやられて、入院を余儀なくされている。
雑賀たちは一週間の自宅謹慎だと、藤山先生から聞いた。
まったく…。
世話のやけるやつらだ。
私はため息をついた。
狂言使って…。
謹慎がとけるときには、復帰しないとな…、と思う。
・・・駄目だ…。
思考が…!!
一所懸命違うことを考えようとしても、私の思考は、あのことにたどり着いてしまう。
あれは、夢じゃないだろうか…。
いや、夢であってほしい。
半分、願望だった。
思い出すたびに、顔が赤面する。
そして、体を動かそうとして、痛みが走る…。
「いでっ!!!」
それは言葉にならないような、痛みだ。
ううっ…。最悪。

「よっ…」
「ひゃあ!!」
私は思いがけない人物の登場に、思わず叫んだ。
私の思考のすべてを占める、主がやってきたのだ。
「お前…!授業は?!」
「今日は2限目からだから…」
彼が私のそばに近づいてくる。
「それに、お前がこんな状態なのに、顔も見ずに学校にいけるわけが、ないだろ?」
顔が近すぎて、思わず、息を止めてしまう。
「プッ…、何、そんなに赤くなってるの?」
「お前~!!」
手を振り上げようとして、痛みが走る…。
「いってぇ!!」
「馬鹿か」
ぼそっと、沢田はつぶやいた。
「ううっ…」
反論できない。
私は沢田のほうとは反対側を向いた。
「おとなしく、寝てないとな…」
沢田の指が、私の頬に触れる。
そのあとにやわらかい唇の感触が…。
私は驚いて、振り返った。
沢田が、にっこりと笑ってる。
いや、にっこりというよりは、悪魔の微笑みだ…。
たぶん…。
私の頬を両手で挟み、そして、そのまま、私に口付けた。
昨日と、同じ感触…。
やっぱり、夢じゃなかったんだ。
触れるだけの、それほど長くないキスをしたあと、沢田は、「じゃあ、またな」と言って、出て行った。
・・・私は、ぽかんと、その後姿を見送った。
身動きがとれず、ただ、見送るしかなかった。

---
haijiさん。
ええと、ちらっと即興で書いてみたはいいけど。
これはなんなんでしょうね?
だめだ・・。
もう少し、原作読んで、慎ちゃん研究しないと・・。

10年目の嵐51

2008-02-15 00:02:17 | 二次系
菜々子のリサイタル当日、私は家族でリサイタル会場に向かうことにした。今、家で萌々子待ちだった。約束の時間を30分過ぎてる。萌々子の携帯に電話を掛けたがなかなか出ず、さきほどやっと出た。あと10分で着くと言う。
リサイタル開始時間には間に合うが菜々子のそばに行く時間はなさそうだった。
指定された席は前のほうで菜々子から近い席だった。かなりぎりぎりに着いたので、会場にはたくさんの人がいた。
若手だから余り来ないのかと思ったが、満席とまではいかないが見渡すと8割くらいは埋まっていた。
私はホッと安堵する。
少し大きいリサイタルは今回が初めてだ。人が入っていて安堵したが、自分のことのように緊張していた。
「美童、緊張しますわ…」
「大丈夫だよ、菜々子は昔からしっかりしていたから」
左隣に座っている美童が私の肩を抱いた。
ガチガチになりそうな私の手を美童は握る。美童は相変わらず優しい笑みを浮かべる。
この微笑み方は昔から変わらない。こうして微笑まれると安堵する。
「美童!野梨子!」
聞き覚えのある声に振り返ると斜め後方の通路に可憐が立っていた。
びっくりして手を離し、慌てて立ち上がる。
可憐は私たちを見て少し苦笑いをした。相変わらずね、とでも思っているのだろう。
「ご無沙汰しております。リサイタル、おめでとうございます」
可憐が深々と頭を下げたので、私たちは礼を述べた。
「今日は誰と来たの?」
美童が尋ねた。
可憐は私達の左斜め後方を指差した。
「義母と千秋さんと、私の子供とか、まあ諸々」
苦笑しながら説明した。
「剣菱のおばさんたちと来たのか」
美童が見渡しながら呟いた。私はその集団を見て、心臓が止まるかと思った。百合子の後ろに真人が座っていて、その隣に清四郎の子供、そして彌緑がいた。赤ちゃんの頃からずっと見ていなかった。大きくなって…。
真人と彌緑に動揺していて、美童がその後言った言葉は聞いてなかった。
「野梨子」
美童に名前を呼ばれて、我に返る。
「ごめんなさい、少々、ぼっとしてましたわ」
美童は私に微笑んだ。
「今日、悠理と清四郎は来ないみたいだから。そのうち、また、皆で会おうと言ってたんだよ」
「ええ…」
私は可憐に微笑む。悠理と清四郎のことなんてどうでもよかった。過去だ。
再度私はあの一団を見た。彌緑が清四郎の子供と楽しそうに話している。
魅録に目がそっくりだ。私にはあまり似ていない。少しホッとするが寂しくもあった。
真人は一人でパンフレットに目を通している。
いつの間にか、萌々子が千秋のところに向かっていた。
「僕達も挨拶に行かないと行けないね」
「ええ、そうですわね」
とりあえず相槌を打つ。
「挨拶に来たら来たで大変よ。引率係の私が言うのだから、間違いないわ」
苦笑しながら可憐は言った。
その時、開演5分前を知らせるアナウンスが流れた。


20分の休憩を挟み、次はチェロソナタだった。前半の菜々子の演奏は堂々としたものだった。会場には割れんばかりの拍手が鳴り響いた。私は緊張しながら、演奏を聞いていたので、ドッと疲れが出た。娘の演奏を楽しむ余裕はまだなかった。手にかいた汗をハンカチで拭う。
「おばさま達のところに、挨拶に行かない?」
美童に言われ、その前に汗をかいた手を洗いたかったが、そのまま百合子たちのところに向かった。挨拶に行くと既に真人は席にはいなかった。少しがっかりする。百合子と千秋さんに軽く挨拶をしたあと、二人のことは美童に任せ、私は彌緑に話しかける。
歳はいくつなの、かわいいお洋服だけど誰に買って貰ったの、など、清四郎の子供にも話しかけながら、私は彌緑と話した。
にこにこと話す、彌緑のあまりのかわいらしさに抱きしめたい衝動に駆られた。
グッと我慢する。
秘密は秘密だ。
その衝動を抑えるため、化粧室に向かう。
ずっと離れて暮らしている上、自分が母であることを言うことが出来ないせいか、愛しさが込み上げ、いや、胸に迫り上がってきて、涙が出てきそうだった。
これではいけない。
私は、関係者以外立入禁止の看板のほうに向かった。構わずにその奥に入る。
菜々子と話しが出来れば、少しは落ち着くかもしれない。
菜々子の控室からは、チェロの音がした。休憩時間も落ち着かなくて弾いているようだった。やっぱり、声をかけるのはやめようかと思ったときに、控室から一つあけた手前の部屋から萌々子の笑い声がした。萌々子のほうが菜々子と比べて、若干声が掠れおり、低い。
何故、萌々子が?
近付くと話している相手は魅録のようだった。
…話している訳ではない。
私は我が耳を疑った。
萌々子と魅録が?

---
野梨子が、何かに気づきました。



私ごとですが、明日は飲みにいってきます・・

また、です(苦笑)

来週の金曜も飲みに(えっ・・)

10年目の嵐 50

2008-02-01 00:15:09 | 二次系
菜々子のリサイタルの一週間前、私は初めて美羽の家庭教師とあった。
美羽が楽しそうに私に話すので、どんな人物なのか見てみたいと思ったのだ。
二人が勉強している部屋にお茶を運ぶ。美羽は驚いた顔で私をみた。滅多に娘にお茶を運ぶと言うことはしないから。
「はじめまして美羽の母ですわ。」
「はじめまして。墨乃江真人です。」
真人は立ち上がり挨拶をした。
少年っぽさを残しつつも、少し大人びた笑顔を向けられた。胸がキュッと締め付けられた。鼓動が速まる。
少しの間彼を見つめてしまって、私は慌てて視線を反らした。
「綺麗なお母さんだね」
真人は私に言わず、美羽を見て言った。
「これでももう50歳を過ぎてるわ」
美羽は張り合うように意地悪く言う。
余計なことを、と思ったが、私はにこやかに頷く。
「50歳を過ぎてるということは僕の母と変わらないんですね」
真人は私ににこりした。
母親と比べて若いとか綺麗と言う言葉がなく、私は少しがっかりする。が、露骨にそんな顔をする訳にもいかない。私はにっこり微笑んだ。
「先生や美羽のように、若いと言うのはうらやましいですわ。…美羽さん、ちゃんとわからないことは先生に聞くんですのよ。」
そう言って、私は早々に部屋を出た。
自分が歳老いてしまったことについての嫌悪を感じた。
あと20歳、せめて若かったら…。
若かったら…?
真人のことが頭をよぎり、今まで感じたことのない、いや、正確には遠い昔に感じたような甘酸っぱい思いが胸に広がった。
美童に早く帰ってきて貰い、抱かれた。
その思いを打ち消すために。
美童に抱かれれば収まると思っていた。今までも体は美童が一番だと思っていたから。
でも今回は違った。
美童に抱かれているのに行為に集中出来ず上の空だった。

翌日、菜々子が家に来た。リサイタルのチケットをおいて行くためだ。私は菜々子と居間でソファに座り、向かいあって話していた。美童がいるため、昔のような純和風な家ではなかった。
「菜々子さん、ホテルになんて泊まらずに、家に泊まればよろしいのに。」
せっかく来たのにホテルをとり、そこに戻ると言う。
「…一人のほうが落ち着きますの。ごめんなさい」
菜々子は申し訳なさそうに頭を下げた。一人暮らしを10年もしていると、やはり一人のほうが楽なのだろうか。それとも、美童が苦手だから、うちには寄りたくない?
まあ、菜々子はもともと家族に距離をとるような子だったから…。
とても寂しい気持ちが胸に広がる。珍しく感傷的な気持ちになる。
「母さま、そんなに淋しそうな顔をなさらないで。今日は一緒に食事をしてから帰りますわ」
「ええ、そうしてちょうだい。皆、喜ぶわ」
少し、救われた気がした。
私はにっこりと微笑むと「麻紀さんに菜々子も一緒だと伝えてくるわ」と言い、伝えに立った。
ドアを開けると、たまたまそこにお茶を持ったお手伝いの麻紀がいた。
私は麻紀に菜々子の分の食事を用意するよう伝えていた。
すると視界に、彼が入ったような気がした。
さりげない風を装いつつ私は振り返った。
美羽と真人が二人でいた。今日は真人が来る日ではないと思ったが?
「こんにちは、お邪魔してます」
真人は爽やかな笑顔で私と麻紀に挨拶をした。
心が浮き立ってくるのを押さえつつ、真人に挨拶をする。
「こんにちは。先生、今日はお勉強の日でしたかしら?」
「本当は明日なんですが、学校の行事があって、今日に変えて貰ったんです」
「あら、そうでしたの。美羽さん、先生がいらっしゃる日が変わったのなら、教えて下さらないと」
「はーい」
悪びれた風もなく、美羽は返事をした。
「奥様」
麻紀が遠慮がちに切り出す。
「先生の分の食事は…?」
いい提案ね!
私はそう思いすぐに真人を誘った。
「先生、たまには一緒に食事を如何ですか?」
「わっ!!先生、そうして!」
美羽も喜んだが、それはつかの間だった。真人は私に申し訳なさそうに微笑んだ。
「食事は遠慮します」
私は微笑みつつも落胆する。
「えーっ、やだ!一緒に食事しよー!!」
美羽が真人の腕を掴み、じゃれついた。
その様子に、微かに嫌な感じがした。
真人はじゃれつく美羽に困惑した笑みを浮かべた。
「美羽さん、先生困ってるでしょう」
一応窘める。大人として。
「先生、今日は是非。娘も一人帰って来てますし、人数が多いほうが楽しいですから」
「いや、でも…」
もう一押しだ。
「たまにはよろしいじゃないですの、ね」
「はあ…」
少し困惑しつつも、うなずいた。
「やったー!!」
美羽が喜んでいる。
私は二人をほほえましげに見ているふりをしていたが、実際は私が1番嬉しかった。

7時になり、母、菜々子、一生、美羽、そして真人と私が食卓に着いた。
私の父は高齢で食事には介護が必要なため、一緒には食事が出来ない。
食卓につき、私は真人を紹介した。
「美羽さん、家族を紹介して差し上げて」
私は美羽に家族の紹介を頼んだ。
「先生の隣が御祖母様。その隣が菜々子姉さま、そして母さまと姉さまの間が一生兄さま」
「兄弟は3人?」
「いえ、菜々子姉さまには双子の妹がいて、萌々子姉さまというの。でも萌々子姉さまはお嫁に行きましたの」
私や母さまの手前半分丁寧語を美羽は遣う。
それが少し滑稽だった。
「菜々子姉さん、今度のリサイタル、どんな曲を弾くの?」
萌々子の話は興味ないというように、一生は菜々子に話題を振る。
「サン・サーンスの白鳥、ドビュッシーの月の光、シューベルトの野ばら、バッハのG線上のアリア…、あとショパンのチェロソナタかしら…」
「僕は姉さんの白鳥好きだな。心が休まる感じがするよ」
一生に菜々子は「ありがとう」とにっこり微笑んだ。
「姉さまはチェロを弾くのよ。今度リサイタルをするの」
話しがわからず、適当に微笑んでいた真人に美羽が説明した。
「へえ、チェロですか」
「そうなんです。私、今度和貴泉記念ホールでリサイタルを致しますの」
菜々子は少し恥ずかしそうに真人に向かって言う。
昔の私同様、殿方を苦手とするこの子が、珍しい反応だった。
「かっこいいですね、リサイタルなんて」
真人が菜々子を見つめて褒める。また嫌な感じがする。真人が他の女に興味を持つと嫌な感じがする。
「かっこいい、なんてことはありませんわ。私は、この家に背いて、こんなことをしておりますし。でも、この家には、一生がいますしね」
一生を見て菜々子が微笑む。一生もニコニコしていた。
「お姉さま、私もおりますのよ」
美羽が拗ねた口調で言った。
笑いが起こる。
笑いの起こるこんな食事は、久しぶりだったかもしれない。
真人の笑顔をそっと盗み見ながら思った。


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ちょっといつもより長めです。
携帯に温めていたのをやっと、こちらに。
ちなみに、本サイトの続きも書いてるものは書いてるのですが、手直しが微妙に面倒で滞っています・・・(苦笑)