青みかんと準惑星

小ネタ乗せようかと思ってます。
時々二次系の下書き・・・

10年目の嵐 60

2009-03-15 19:35:44 | 二次系
「やめて!!」
長いスカートをたくしあげ、萌々子の下着を無理やり脱がせると、騒ぎ立てる萌々子の口に下着を詰め込み、俺は萌々子の濡れていない体に自分をねじ込んだ。
自分自身も痛かったが、構わず突き立てた。
強姦だった。
月も出てない、真っ暗な湖のほとりで、萌々子を犯していた。
昔最初に俺を犯したのは萌々子だからいいじゃないか、と心の中で言い訳し、萌々子のすすり泣く声が、菜々子の声に聞こえて、お前が悪いんだとばかりに狭い車内で体を動かした。
菜々子のことを愛していた。彼女は源氏物語の紫の上だった。だから、俺の過ちも許してもらえるはずだと思っていた。
だから、こんなことで、こんなにあっけなく彼女が去っていくとは思わなかった。
野梨子も俺から離れて、去っていった。
俺が犯しているのは、そのどちらでもない。
萌々子を抱いているときには、萌々子を一人の女性として、抱いたことはない。
いや、一人の女性として見ようとはしなかった。
野梨子の代わりだったり、性欲処理の道具だった。
そして、今日は野梨子と菜々子に対する憎悪の対象として、犯していた。
俺は犯しながら、いつか、涙を流していた。
コトが済み、運転席に仰向けで横たわったときに、萌々子に涙を拭われて、初めて気づいた。
「菜々子と何があったの?」
「俺は…、菜々子と結婚するつもりだったんだ。お前があのとき俺に抱きつかなければ、俺たちはうまくいくはずだった。コンサートのあとに、プロポーズを…」
言葉にならなかった。
涙が溢れてとまらなかった。
「俺の愛した女たちは、みな、俺のもとを去っていく」
萌々子にじっと見つめられていたのはわかっていた。
「お前がいなければ…」
「ごめんね、魅録さん…。私のせいなのね。私が、みんなの幸せを壊していたのね…」
そういって、萌々子は俺の涙を拭いた。
俺は何も答えなかった。
強姦した萌々子にそんなことを言われて、自分が惨めだった。
菜々子がいるのに、萌々子との関係をずるずると続けていた。恋愛関係のない、そういう関係の対象として。
俺は萌々子に甘えていた。
彼女の心の闇に気づかずに。
親に愛されていないということから発していた心の闇に。
それを見ないふりして、今まで、彼女に対して虚勢を張ったり、彼女を誰よりも下に見ていた。
それ自体がすでに過ちだ。
萌々子が俺の唇にキスをする。暗くてよくわからなかったが、微笑んだようだった。
「やっぱり、私はいないほうが、よかったのよね」
そういって、車のドアを開けて出ていった。
――いないほうがよかった
――いないほうがよかった
言葉を反芻する。
萌々子が、いなくなる?
「萌々子!!」
車の外に出ると、すでにあたりに萌々子の姿はなかった。
「くそっ!!」
車のエンジンをかけて、あたりを照らした。
湖のほうに向かう、萌々子の姿が見えた。
俺は走って萌々子を追いかけ、後ろから萌々子の腕をつかむ。
「離して、魅録さん!!私をこのままこの湖の中に…!!」
「だめだ!!」
「どうして?!私なんて、いないほうが、みんなの幸せのためにいいのよ!!」
俺は萌々子を抱きしめた。
「すまない、萌々子」
俺は何をやってるんだ。
「悪いのは、俺だ」
俺には、菜々子でもなく、野梨子でもなく。
「俺に必要なのは、君だっだ。頼むから、死ぬなんて考えないでくれ」
一番、俺が素直に感情をぶつけられるのは、萌々子だった。
そんなことに、今まで気づかなかったなんて、俺は愚かだった。

俺は、萌々子とともに、家路に向かった。
「今日のことも含めて、本当にすまない。俺が愚かだった。俺には、必要だったのが君だったということを今まで気づかなかった。結婚したときも、結婚しても君と俺の関係は変わらないと思っていた。菜々子が現れなくて、君が僕から完全に離れてしまっていたら、もっと早くに気づいていたかもしれないけれど、そんなときに菜々子が現れて、更に気づくのに遅れてしまっていた。彼女を理想の女性と見ることで、君が離れてしまったことからも、逃げようとしていた。彼女自身、つまり彼女の本当の気持ちのことも、結局、今まで何一つ知らなかった、彼女に俺の本当の姿も見せることはできなかった。いつも、彼女より優位に立つことばかりを考えていた。結局、俺の本当の姿を見せられるのは、君だった。俺には、君が、必要だったんだ」
正直に話した。
萌々子は「今は魅録さんも何もかも、受け入れられない」とぼそっと言った。
それはそれで仕方がないことだと思う。
昨日の今日だ。
俺も含め、みなが、萌々子を傷つけてきた。
ずっと沈黙したまま、萌々子のチチオヤの家の前に着く。
「でも、必要と言ってくれて、うれしかった。その言葉だけで、暫く、私は生きていける」
車を降りるときに、明るい笑顔で、萌々子は言った。
萌々子に対する過ちに対して、俺は償っていかなければならない。


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PCの電源が入らなくなりまして、この書いていた10年も諦めるところでしたが。
偶然、電源が入ったので、アップすることにしました。
たぶん、修理が必要・・。
これ。。。