過去ログ(2013年8月23日、Lost in translation)で、「懐かしい」という言葉を取り上げた。英語には、「懐かしい」に相当する言葉がないと言われたときの驚きを書いた。ところで、つい最近おなじような内容のブログを目にした。タイトルは、『日本特有の感覚「懐かしい」、そして「愛妻家」』、筆者はドイツ人のマライ・メントラインさんである。英語を母語にする人だけではなくドイツ語を母語にする人にとっても、「懐かしい」は日本特有の感覚であり、特有の言葉らしい。その文章を紹介する。
まずは日本。「懐かしい」という感覚、日本特有だと思います。もちろんドイツ語に訳そうと思うと、Nostalgie verspürend / wehmütig zurückblickend / lieb / teuerなどと辞書には書いてありますが・・・実際にこれらのドイツ語がドイツの日常生活で使われているかというと・・・使われていないのですね。日本人は日常生活の中のふとした時に「あ、懐かしい風景だな」と感じたり口にしますよね。私も年中口にします。常磐線に乗れば「懐かしい~。日本に来たばかりの17年前、よく常磐線に乗ってたの~」、都内のドイツフェストやオクトーバーフェストでソーセージを食べれば「懐かしい~。ドイツに住んでたころ、よくソーセージ食べてたの~」とまあこんな感じです。懐かしい食べ物、懐かしい場所、懐かしい人・・・。日本人は日常生活のいたるところで「懐かしい」と感じ、それを口にするのですね。ドイツ語で同じことを言おうとすると、「この食べ物を見たり食べたりすると、●年前に□□という国に住んでいた時のことを昨日のことのように思い出すわ」などと長い説明をしないといけないのですね。なので、この日本語の「懐かしい」は大好きな言葉です。もしも「日本語の言葉で何が一番好き?」と聞かれたら、私は即「『懐かしい』という言葉」と答えます。
「懐かしい」は日常茶飯事、あたりまえに使う言葉なので、マライさんの文章を読んであらためて昔の驚きをおもいだした。同時に「異文化」という言葉の面白さも感じた。ただ、「懐かしい」が日本特有の感覚かといえばそうでもない気がする。朝鮮語にもそれに相当する言葉があり、心情的にもその感覚があるとおもう。試しに、「故郷は懐かしい。」を機械翻訳すると、「コヒャンイ クリッ(プ)タ」という文章になった。断言する自信はないが、「懐かしい」=「クリッ(プ)タ」は十分成り立っているとおもう。
11月になれば韓国に行く。特に目的はない。しいて言えば、市塵にまみれてあくせく働く同胞のなかで過ごす時間が楽しい。かねがね自分の中身は95%日本人だと思い、公言している。日本に生まれ、日本の教育を受け、日本で社会生活を続けていれば、95%という数字はともかく、ほとんど日本人と同じにならざるを得ないだろう。ただ私にとっては、残された5%のほうが貴重である。残された時間を使ってその数字を少しでも上げられればいいのだが。
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