女木島の洞窟内で発見されたチュウジョウムシのメス(中浜さん提供)
「生きた化石」とも呼ばれる希少昆虫ガロアムシの一種で、絶滅が懸念される動植物を掲載した環境省のレッドリストにも登録されている「チュウジョウムシ」の成虫が55年ぶりに香川県高松市女木島の洞窟で見つかった。
チュウジョウムシは1957年に初めて同所で成虫1匹が発見されて以降、成虫の採集報告がなかったが、3月23日に京都大の大学院生らが独自調査でメスの成虫1匹を捕獲。研究者らは詳しい生態の解明に期待を寄せている。
大学院生らと合同調査を行っている瀬戸内むしの会の出嶋利明会長によると、チュウジョウムシはガロアムシ目ガロアムシ科の昆虫で、バッタやシロアリなどに近いという。体が明るい褐色で羽がないのが特徴とされ、目は退化し、触角と尾角が発達していることから地中で生息しているとみられている。
今回見つかった成虫は体長約2・5センチで、尾の先端から約4ミリの産卵管が伸びており、メスと確認された。
チュウジョウムシは57年4月、香川大の学生が女木島の洞窟内で初めてメスの成虫1匹を発見した。昆虫に精通していた同大の中条道夫教授(故人)が調べたものの詳細が分からず、米国の専門家に標本を送り鑑定を依頼。ガロアムシと比べると▽目がない▽体が5ミリ程度大きい▽尾角の節の数が少ない―などの違いがあり、専門誌に新種として記載された。
その後、ほかの地域で発見事例がないことから、研究者の間では女木島の固有種との見方を強めている。出嶋会長は「洞窟内は気温や湿度が一定に保たれている上、島という特殊な環境が大きく影響していると考えられる」としている。
チュウジョウムシの調査に乗り出した大学院生らと出嶋会長らのグループは2009年2月以降、女木島の洞窟で生態調査を4回実施。09年に3匹、今年3月に4匹の幼虫を捕獲したが、成虫の発見には至らなかった。
発見者の一人の京都大大学院農学研究科の中浜直之さん(22)は「成虫の捕獲を諦めかけていただけに、姿を見た時は正直驚いた。今回の発見が生態解明に役立つことを願っている」と声を弾ませた。 四国新聞より
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