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41 葛飾北斎 富嶽三十六景 神奈川沖浪裏

2019-08-12 | 富岳三十六景コレクション室

葛飾北斎 富嶽三十六景   コレクション  

神奈川沖浪裏   かながわおきなみうら

画狂・葛飾北斎による連作錦絵『富嶽三十六景』中でも特に知られる傑作中の傑作『神奈川沖浪裏(かながわおきなみうら)』。本作は1831年(天保2年)頃に刊行されたと推測される連作錦絵作品『富嶽三十六景』の中の1点で、神奈川沖の荒れ狂う海の様子を大胆に表現した作品である。画面左側には本作中で最も観る者を惹きつけているであろう荒々しくうねる大波が描かれており、その様子はあたかも画面右側に配される小舟へと襲いかかるようである。先端を激しく砕け散らせながら生き物のように巨大化する大波と、必死に船にしがみつきながら舟を進める船頭たちは、抗うことのできない自然の圧倒的な力と人間の無力さを表しているようであり、低視点(小舟)で捉えられた劇的な場面表現は観る者をも圧倒する。また画面中央に配される遠景の富嶽(富士山)は、画面前景で繰り広げられる動と静、近と遠、変化と不変という意味で見事な対比を示しており、そこには深く近代的な精神性を見出すことができる。さらに造形的観点から本作を考察しても、強弱を極端に強調した激しい曲線によって流々と表現される波の円運動とその連鎖は画面の中で一体となり、他では類を見ないほどのスケールの大きさを醸し出すことに成功している。また波の重なりや陰影によって浮き出る縞模様や、波濤(大波)が作り出した粒状の水飛沫の装飾性も特に優れた出来栄えを示している。なお後期印象派の画家フィンセント・ファン・ゴッホが称賛の言葉を残しているほか、印象主義音楽の大作曲家ドビュッシーが本作に着想を得て交響詩『海』を作曲している。

 


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