歯科コラム in BKK

タイでお住まいの方にとってお役に立てるような歯科情報を目指しています。

ドライマウス

2010年10月31日 | 過去のコラム
10月16日の日経新聞夕刊に東京港区で開業する志村クリニックさんのことが紹介されていました。「女性専用外来」を開いているとのことです。主に扱っておられる症状は”ドライマウス”だそうです。ドライマウスとは唾液が少なく口の中が乾燥して、そのため舌がひりひり痛んだり、食物を飲み込みにくくなったり、発音がしにくくなるといった症状があります。前にここで”唾液”のことをお話ししたので、そのことも思い出されてください。症状を訴える人の約9割が女性だと書かれているので、ドライマウスは圧倒的に女性に多い疾患なのかもしれません。ドライマウスの原因は様々で加齢、リューマチなどの膠原病、薬の副作用、夫婦不和や子供の引きこもりなど家庭問題のストレスだそうです。その原因を見極めるため、どのようなライフスタイルを送っているのかなどをプライバシーに配慮しながら”じっくりと”話を聴ける体制を整える必要があったそうです。他には女性ホルモンを好んで繁殖する菌があるので、こういった点からも歯周病の対策を考えるそうです。また女性特有の妊娠中の歯周病のリスクが高まること対策や妊娠期間中の歯周病は早産や低体重児の危険が7倍になるといったことの啓蒙もされています。妊娠中の歯周病と早産などの問題はかなり以前にこのコラムでも紹介しているので覚えておられる方もいらっしゃるのではないでしょうか。詳しくはそのときのコラムを参照されてください。また更年期後の顎の骨を弱める骨粗鬆症のことも啓蒙されているとのことです。この紙面を読んで2つのことを思い出しました。1つは学部に上がった、すなわち歯学部での最初の講義で教授が歯学部にどのような教室があるか紹介されました。歯を抜いたりする口腔外科、入れ歯などを扱う補綴科、レントゲンなどの放射線科、子供のための小児歯科などです。このとき冗談半分で医科のように婦人歯科があってもおかしくないんだけれど今はないとおっしゃられて学生が笑っていたのを思い出しました。実際、ドライマウスや歯周病での女性ホルモンの問題はあるのですが、治療にあたってわざわざ女性に限って別枠で診療しなければならないほどのことではないと思います。わざわざ別枠を作ってやるメリットとして問診時の家庭環境やストレスのことをプライバシーに配慮しながら行うことにあると思います。しかも女性の医師が担当されれば男では気が付きにくいような点も配慮されるのではないかと思います。おそらくこの医院では歯科治療というよりは”相談所”のような光景があたっているかもしれません。歯学部の教育プログラムには家庭問題やストレスの問題解決はありませんから、志村先生は独自にこの分野を試行錯誤しながら歩まれていると思います。何事も先人のいない分野を開拓することは大変なご苦労がおありのことだと思います。頑張っていただきたいものです。もう一つは私が歯医者になったころには既にささやかれていたことですが、患者さんが減ってきて医院の収入減の傾向にあるのでどう対策するか。よく言われていたのは保険外の治療、矯正や独特の入れ歯など高額補綴が言われていました。国が歯科の保険総額を決めていますし、毎年ほとんどアップしません。それでいて亡くなられる歯医者よりも新しく生まれる歯医者のほうがずっと多いので構造不況をおこしています。ほとんどの医院は前述の対策を口にしますが主体は保険治療においているのでじり貧です。そんな中、志村クリニックもそうですが前にご紹介した近畿大学の近くで開業されている口臭を専門にされている本田歯科医院も全国から患者さんが訪れ年内予約が取れませんという異常事態になっています。時間とともに国民の医療問題もどんどん変化してきます。社会保険や国民健康保険は30年前とほとんど変わりがありません。30年前にあまり問題にされなかった”口臭”などの問題も今は大問題なようです。保険制度に頼って下がり続ける医院収入の対策として安い材料を探したり、人手を減らしたりする対応のも限界があります。保険制度に頼らず、今世の中でどのような事が求められているかを考え新しい分野を作り出している人たちのことを見聞きすると自分まで元気をお裾分けしてもらったように世の中が明るく見えてきます。 どうも日本では保険治療という前提で医療が行われるせいか、前述の先生のように病気や疾患を自由にとらえるという発想にかけているきらいがあります。その問題も保険制度が破綻しそうになったおかげで、柔軟な頭の人から解決される傾向にあるようです。これからの日本の歯科は一昔前の虫歯の治療や歯を抜くといったイメージから離れたエレガントな歯科医院が様々な分野で生まれてくることでしょう。久しぶりに新聞を読んで元気になりました。

タイの歯科医院って不潔じやないの?

2010年10月18日 | 日本とタイの違い
タイの歯科医院って不潔じやないの?
 はじめてタイに来た人がタイに対して抱く印象で“清潔な国”なんてないんじやないで
しょうか。“臭い”とか“不潔”’というのはよく聞きましたが。でも道を歩いていて”臭
い”ということはないんですけどね。どんな臭いをかいだんでしょうね。かわいい女の子が人前で平気でハナクソほじったりするので悪い印象与えてしまうんでしょうね。まあ、どちらにしても タイ=清潔な国 なんてないでしょうね。「じやあそこの医療はどうか?」となります。不潔な医療をされたのではたまったものじやありません。おまけに92年頃はタイ=AIDSでしたし。日本の政府広報のTVコマーシャルで「歯科治療でエイズはうつりません。」というのがありました。歯科医師としてとてもショックでした。まともな医療知識があればそんなこと言えるはずありません。唾液でAIDSがうつらないというのが理由だとすれば、こう反論してやります。1日血を見ない日がないのが歯医者です。抜歯をすれば血がでるのはあたりまえ。歯の掃除といってスケーリングをして、口の中が血だらけになった方もいらっしやるでしょう。歯ブラシ指導しても血を出す方もいるぐらいです。それでも歯科でAIDSがうつらないなんて言えるのでしょうか?政治献金をたくさんしている(事実です。)歯科医師会が政府に頼んでTVで流してもらったのでしょう。ちゃんと感染予防の努力をしないとAIDSは歯科治療でもうつります。
 AIDSというと普通の人はビックリしてしまってあとは考えられなくなってしまうようですが、怖いのはAIDSだけじやありません。肝炎ウイルスだって注意しなければなりません。AIDSなんかよりよっぽど感染予防が難しいです。T細胞性白血病(ATLといいます。)なんてのもあります。これは逆に日本以外ではあまりなく沖縄を中心とした南日本でみられるとされている感染症です。でも大阪の老人病院の大部屋にだいたい一人から二人I、るといいますから率はかなりのものだと思います。こういった嫌な細菌やウイルスは歯科治療でうつります。ちゃんと・消毒や感染予防がされていないとうつります。ここで意外に思われるかもしれませんがタイのほうがこの点ではるかにしっかりされています。タイで手袋をしない歯医者を見たことがありません。日本で手袋をする歯医者は50%以下でしょう。お年寄りの歯医者ほど手袋をしません。手袋をする歯医者でも患者さんごとに手袋を交換している歯医者はめったにいません。1時間に5人もの患者さんをみるのが普通で、同時に二、三人の患者さんの治療をしているのではなかなか患者さん毎の手袋交換もたいへんです。手袋でこれだけの差があります。次に器具の消毒の話をすると、タイでは滅菌済みの器具を袋にいれて保管してあり、患者さんの目の前で開けているのを見て驚かれた方もいらっしやるのではないでしょうか。日本だとむき出しで保管ですから、“袋から出しで’なんて光景は見たことがない方がほとんどでしょう。そして決定的なことは歯を削るハンドピースです。タイでは患者さんごとにオートクレープという滅菌をするのですが、日本ではせいぜいアルコー/レ綿で拭く程度、ほとんどのところは何もせずに次の患者さんの口に入れてしまいます。学生のときに治療後、このアルコール処理をしたことがあります。決してオートクレーブ処理ではありませんでした。滅菌しやすいAIDSウイルスでさえアルコールで10分かかります二拭いただけでは消毒したとはとても言えません。時間に余裕があり赤字が出ても平気な国立大学の付属病院でこの程度です。よく「うどん屋さんで、前の人が使った割り箸をアルコールで拭いて、これ使えなんて言われたらどう思う?消毒滅菌の知識以前で常識からもはずれてるんじゃないか?」とよく歯医者仲間に問題提起したことがありました。でも、「じゃあ患者さんごとにオートクレーブ処理しよう。」なんて意見はでたことがありません。自分では清潔好きだと思っている日本人はこの程度なのかと落胆していました。どう日本のほうを眉目にみても、タイが日本以下ということはありえません。実のところ感染予防に一番うるさいのはアメリカでしょう。感染予防のガイドラインが作られ、監視され、問題が起これば厳しく裁判をおこされます。訴訟が多いせいかアメリカの歯医者さんは離婚の非常に多い職業だそうです。裁判で負ければ家庭崩壊なんでしょう。それだけにアメリカの感染予防のレベルは溜息が出るほどです。料金も溜息が出るほど高いようですが。 タイはアメリカほどとは決して言えませんが、臭い国の歯科治療とか後進国の歯科治療と言われるほど情けないものではありません。しかも歯科医師である私が見て本当に安いと思える料金設定がされています。誰にでも偏見はあるのでしょうが、あまりよく事実を知らないうちに感覚だけで判断してしまうと損をしてしまいます。日本よりも感染予防がきっちりしていて、丁寧に治療してくれ、しかも安いという利点があるのですから、うまい利用方法があるはずです。蛇足かもしれませんが、よくある質問にたいして、注射針は使い捨てです。前の患者さんに使った針を使うなんてことはありません。(日本では数10%の歯科医院で使い回しという告発文をインターネットでみたことがあります。) 実のところ、日本人はタイを臭い国だとか汚いとかいえるほど立派なものじやないと思います。日本はもっと反省すべきだと思っています。日本はタイからたくさんの留学生を受け入れていますが、来られた留学生の全員が日本の実情に驚かれています。ショックでしょうが、これが日本の歯科医療の実態です。日本では歯科治療でエイズはうつります。歯医者自身も感染しているようです。歯医者のB型肝炎羅息率が非常に高いのは、感染予防のレベルの低さを物語っています。「タイの歯科医院って不潔じやないの?」と思っておられた方がほとんどでしょうが、実は日本のはうが不潔だったんです。

歯周病と心臓病

2010年10月18日 | その他
友人でときどきタイに来られる矯正の専門医の先生のブログからです。
 CNNが配信するイギリスの研究で、すごいのを見つけましたヨ!!
 やっぱり、ちゃんと歯を磨かなきゃ!!
 口の中の衛生状態が悪い人は、1日2回歯を磨く人に比べ、心臓病のリスクが7割高くなるとの研究結果を、英ユニバーシティ・カレッジ・ロンドンのグループがこのほど発表した。(CNN)
 英医学誌「ブリティッシュ・メディカル・ジャーナル」の最新号に掲載された研究によると、グループはスコットランドで実施された健康調査の結果を分析。成人1万1000人について、喫煙や運動、歯磨きなどの生活習慣と、家族や本人の病歴、血圧、血液検査の結果を調べた。
 対象者のうち71%が1日2回歯を磨き、62%が1年に2回歯科医の診察を受けていると回答していた。
 これらに該当せず、口の中の衛生状態が悪いと判定されたグループは、心臓病リスクのほか、体内で炎症などが起きていることを示す「C反応性たんぱく」や「フィブリノーゲン」の数値が陽性となる確率も高かったという。
 さあ、今日からみんなで歯磨きだー!!
実はこのことは20年ぐらい前からささやかれていました。残念ながら歯医者からではなくて心臓を扱うお医者様からでしたが。あるときテレビで心筋梗塞をおこした心筋の血管の内壁にこびりついているものから歯周病菌が見つかったと報告していました。横にいたアナウンサーが「じゃ、歯周病が原因で心筋梗塞をおこすんですか?」と質問されました。お医者様が「いや、そうとも言えないんです。」と答えると、「なんだ、違うんですか。」と返されました。「証拠はないんですが、いるはずのない菌がいるはずのないところにいたんです。相当、怪しいです。」といったやりとりがありました。アナウンサーのかたは何かはっきりしないなと怪訝そう表情でしたが。これはこういうことです。歯周病菌がどういった機序で心筋梗塞を起こすかといったことはわかっていないので、歯周病菌が心筋梗塞の原因だとは言えない。しかし、そうとう怪しい!ということです。CNNの報告は疫学的に報告しているだけで、本当は歯周病が原因で心臓病になると言えるものではありません。しかし、そうとう怪しいとは言えます。近い将来にこのことを研究してはっきりとその関係がわかる日がくると思います。そんな学者さんのことよりも、今私たちの健康を守るためにはっきりわかっていようといまいと、そうとう怪しいと思われる原因は除去するよう勤めるべきです。歯磨きをただ虫歯予防や歯周病予防と簡単に考えずに心臓病予防と考え真剣に取り組むべきですね。もしかすると、もっと意外な病気の原因でもあるかもしれませんよ。
久米啓之
サハペーット歯科
02-255-5675

国民健康保険が海外で使える。

2010年10月17日 | 保険
国民健康保険が海外で使えるようになったということです。今回は、こちらの情報を優先させていただきます。
バンコクにくる前に健康保険の海外での適用について調べていたのですが、「社会保険は使えるが国民健康保険は使えない。」ということでした。それを聞いたとき、「どうして社会保険が使えて国民健康保険が駄目なんだ?筋が通っていないぞ。」と思ったものでした。教えてくださった役所の方に質問しても、彼が決めたのではないので、二人で「どうしてでしょうね?」というだけで、素晴らしい政治家でも待つしか解決策はありませんでした。しかし平成13年1月からこの理不尽な制度が改正されました。以下に市役所から頂いた内容をお伝えいたします。
海外療養費支給申請について
国民健康保険の改正により、仕事や観光で海外に滞在している間にケガや病気で治療を受けた場合でも、平成13年1月から国民健康保険の給付(国内での給付相当分)が受けられるようになりました。
海外で受診されたときには、
(1) 診療内容明細書
(2) 領収明細書
(3) 保険証、印鑑
をお持ちになり国民健康保険の窓口にて申請してください。
日本の医療機関にかかった場合の保険診療料金を標準とした金額(実際の金額が低いときには実費額)から、一部負担金を差し引いた額が、国民健康保険世帯主名義の口座へ払い戻されます。
* (1)、(2)については、それらが外国語で記載されている場合、その翻訳文(翻訳者の住所氏名も記載)を添付して頂く必要がありますので、窓口にて配布の用紙をなるべくご使用頂けますよう被保険者の皆様が海外に渡航されるときは、是非お持ちになってください

****市役所保険年金課保険係

上の内容に少し説明をさせていただきます。(1)(2)の用紙は市役所(区役所)の保険年金課保険係でもらえて、この用紙を海外でかかった医療機関に書いてもらい、必要なら翻訳を付けて保険証と印鑑を持って申請してくださいということです。そして、ここからは久米からの情報ですが、申請は月単位で行われます。5月に31回毎日通院しても1枚です。5月31日と6月1日の二回だと2枚必要になります。また、この用紙はコピーされたものでもOKです。Faxで送られたものをコピーしてもいいとのです。もう1点、この申請は2年以内にされないと無効になります。このことを知らなかったため、国民健康保険は使えませんとあきらめていただいた方が数多くいらっしゃいます。今からでも申請できますのでご連絡をいただければ書類をお作りいたします。ただし、去年の分は駄目ですよ。

入れ歯

2010年10月16日 | 日本とタイの違い
日本とタイの歯科事情の違いをよくテーマにしていますが、以前「タイで受けるとお得感の高い治療は何か?」を他紙でお書きしました。そのときの“お得”は単に費用が安いという意味ででした。今回は“質”のことも考慮してお話しようと思います。“質”のことを言い出すと日本の歯科治療にはいい印象はないのですが、患者さんはあまり悪い印象はないようです。それは“痛い”かどうか“外れやすい”かどうか程度の判断基準でしか考えないからです。レントゲンを撮って問題がわかるようなことを患者さんのほうで知りようもありませんから。そんな歯科医院に行かないと判定できないようなことは今回はやめて誰でも良し悪しの判断が簡単な処置として“入れ歯”があります。日本で特に保険の入れ歯というと誰しもいい印象の人は非常に少ないはずです。ですから入れ歯を何度もいろいろな歯科医院で作っておられる人は少なくありません。10個ぐらい持っている人もありました。実は歯医者にしても入れ歯は不採算部門の最右翼です。ですからどこの歯医者さんもコストダウンに苦労しています。保険医を標榜していると不採算を理由に治療を断れません。材料の安いもの、技工料の安い技工所を探すのは当たり前で、かける手間もできるだけ省く先生もいらっしゃいます。以前、技工所の人が「**歯科の先生が上顎と下顎の模型だけで総入れ歯を作れって言うんですよ。」と嘆いていました。どういうことかと言うと上の入れ歯と下の入れ歯がどういう位置関係であるか決まっていないと人工歯を並べられないからです。いかに日本の先生といえどこんなことを知らない歯医者さんがいるとは思えません。こんな技工所を嘆かすようなところまで“省略”されることがあるということです。入れ歯だけに限らず素材も重要ですが、かける手間も重要です。タイの先生はこの手間をかけるということでは非常に印象がいいです。いいかげんなことをしている歯医者を見たことがありません。むしろ、「よくそこまで手間をかけてくれる。」ということがよくありました。結果は当然、雲泥の差です。入れ歯が完成した後の患者さんのクレームも桁外れに少ないです。日本では、噛むと痛いとか安定が悪いと完成後、何度も歯医者さんに調整してもらってもやっぱり良くないと市販の入れ歯安定剤(ポリグリップなど)に頼っている人は少なくないはずです。おそらく入れ歯安定剤の販売実績は日本が群を抜いて一番じゃないかと思っています。そして入れ歯安定剤の売られている種類も世界一のはずです。よくタイで入れ歯安定剤が売られていないから日本からたくさん買ってきている患者さんがいましたが、タイでも売られています。しかし日本ほど需要ばないので売られているところが少ないというだけのことです。入れ歯は他の治療と違って患者さんがその違いを実感できる治療です。そして、おそらくタイは世界一コストパフォーマンスの高い国だと思います。