政府介入は是か非か
大経済学者が大げんか

  (Illustration by Akira Nakayama)

 

J.M.ケインズ(1883~1946年)流の財政・金融政策で効果を出すには、「ハーヴェイロードの前提」と言う大きな条件が必要である。名付け親はケインズの弟子のロイ・ハロッドだ。

ハーヴェイロードはロンドンの上流知識人が多く住む街だ。つまり、裁量的な財政・金融政策は、民間の一般人より賢明で合理的な判断ができるエリートが行うことが前提条件だと言うのだ。

こうしたケインズ経済学に対して激しく論争を仕掛け、長年にわたって反論を続けたのがF.V.ハイエク(1899~1992年)である。

ハイエクは急進的な自由主義、つまり完全自由主義者(リバタリアン)である。三つの経済思想で言えば、右側の新古典  /   派・新自由主義からさらに右へ突き出た存在だった。

ウィーンの貴族出身で、第1次世界大戦の兵役後、母校ウィーン大学講師を経て1931年にロンドン・スクール・オブ・エコノミックス教授となり、約20年間勤務する。この間にケインズとの論争が続いた。三つの経済思想の真ん中に位置するリベラルのケインズと、右に振り切れたリバタリアンのハイエクでは激突するばかりで、殆んど大喧嘩である。

『これならわかるよ!経済思想史』
坪井賢一 著
(ダイヤモンド社 1600円)

 2人の論争はハイエクの著書『ケインズとケンブリッジに対抗して』にまとめられて居ます。

ハイエクのケインズに対する論点ははっきりして居た。ハイエクは基本的に、合理的では無い人間が合理的に経済を計画する事は出来ないと言う。経済は自生的に形成される秩序であると語り、公益のために中央政府が介入し、統制する集産主義を批判した。

ハイエクは長命で、ケインズ没後の1950年にシカゴ大学教授、62年以降はドイツ、オーストリアの大学に勤務し、74年にノーベル経済学賞を受賞。92年に92歳で天寿を全うして居る。